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講座 臨床から公衆衛生へ—感染症シリーズ・8
アニサキス症
著者: 吉田幸雄1
所属機関: 1京都府立医科大学
ページ範囲:P.326 - P.328
文献購入ページに移動それは私がニューオルリーンズのチューレン大学に留学していた1962年のことであった.主任のビーバー教授は,世界各地から寄生虫の鑑定依頼標本が送られてくると,まず研究室のスタッフや留学生に見せて意見を聞く.その時も,これは日本から送られてきたもので,59歳の漁師が胃潰瘍の診断の下に胃の切除手術を受けたが,その組織中に線虫の断面が見いだされた.これは何という虫かという質問である.誰も答えられなかったところ,教授は,これはアニサキスの幼虫であると言われた.アニサキスなどという寄生虫は日本のどの教科書にも出ていなかった.その論文が1965年1)に発表されてから本症の研究が日本で大いに進み,現在,患者は毎年1,000例をくだらないだろうといわれている.それは日本人が魚やイカを生でたべることと深く関係している.昔からサバなど青魚は食あたりを起こしやすいといわれてきたが,その原因の多くはこのアニサキスであったと考えられる.
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