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調査報告
妊婦の喫煙と飲酒行動についての調査研究
著者: 岸玲子1 五十嵐利充1 池田健1 大友透1 荻原尚志1 児玉広幸1 小林宣道1 斎藤学1 沢井仁朗1 高木陽一1 曳田信一1 松田孝之1 松田延身1 宮沢一裕1 吉田和浩1 三宅浩次1
所属機関: 1札幌医科大学公衆衛生学教室
ページ範囲:P.334 - P.339
文献購入ページに移動近年.タバコの健康に対する害について関心が高まっており,成人男子の場合,喫煙率は全年齢層にわたって漸減傾向にある.これに対し,女性の場合はあまり減少傾向がみられず,ほぼ横ばい状態であるといわれる1).最近の特徴としては,喫煙率が低下しているのは50代,60代の高年齢層であって,逆に若年層や20代,30代の妊娠可能年齢ではむしろ,上昇傾向をみせている.妊婦の喫煙は母体のみならず,ニコチンやCOが胎児の発育を障害するため,新生児生下時体重を減少させ,低体重児出生率を増加させるといわれている2)ので,若年女子の喫煙率上昇は保健衛生上注目すべき現象である.
同様に妊娠中のアルコール摂取が胎児に与える影響については,先天奇形を伴う胎児性アルコール症候群(FAS)がよく知られている3).しかし,それほど大量でないアルコール飲用で果たして胎児への影響が出るのかどうかについては,研究者の間で意見が一致していない.最近Wrightらは社会階層,喫煙習慣,妊娠期間などの要因を統制した疫学調査の結果,比較的大量とはいえない程度(ウイスキーなら週に1/3ボトル位)の飲酒で低出生体重児が増加すると報告している4).昭和54年度の保健衛生基礎調査によれば,日本の婦人の飲酒率は42.6%に達しているという5).このことは,生殖年齢にある女性のかなりの数が飲酒していると考えられ,妊娠分娩に対する飲酒の影響も無視できなくなってきていると思われる.
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