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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生49巻6号

1985年06月発行

雑誌目次

特集 セルフケア

座談会 セルフケアをめぐって

著者: 秋山房雄 ,   前田ケイ ,   宮坂忠夫 ,   長岡常雄

ページ範囲:P.356 - P.365

 長岡 今回,「セルフケア」をテーマとして特集を企画しましたが,セルフケアの定義や概念がまだ明確になっていないと思います.本日は,専門の先生方にお集まりいただき,セルフケアをめぐる問題点を整理していただき,セルフケアの方向づけをお願いしたいと思います.
 まず,セルフケアとは何なのか,どのようにとらえたらいいのか,先生方のお考えを最初にお聞かせいただきたいと思います.

学校におけるセルフケア

著者: 船川幡夫

ページ範囲:P.366 - P.370

■学校保健の歴史
 今日みられるわが国の教育制度は,明治5年の学制公布から出発しているといわれている.学校教育の中で,当時,どのような形で健康問題がとりあげられていたであろうか.
 明治6年の学区巡視事務章程に,学校の「卑湿狭隘空気ノ流暢ヲ妨ゲル」など立地条件の不適当な場合には,他に転移させるとあり,明治5年の学制の第27章には,下等小学教科として,10,養生法講義がみられ,小学教則の中に,養生口授を下等5〜3級(7歳半〜8歳半)に1週各2時間あてている.その後,明治6年の改正にあたり,下等5級の時間を1時間に短縮している.

職場におけるセルフケア

著者: 桐生武夫

ページ範囲:P.371 - P.375

■はじめに
 わが国の疾病構造がかつての伝染病等の急性疾患から,がん,心臓病等の慢性疾患へ移行した現状においては,健康管理事業を健康組合の中心的事業として位置づける必要があると思われる.特に成人病等の慢性疾患の対策については,疾病にり患してからの治療よりも日常生活において,その予防や健康管理に努めることが重要であるが,なによりも大事なのは「自らの健康は自らで守る」という自覚をもって,自分の精神,身体状態に注意を払い,栄養,休養,運動のバランスのとれた生活をするセルフ・ケアと,それに続くプライマリ・ケアである.

腎障害者のセルフケア

著者: 蔵方伸枝 ,   石川到覚

ページ範囲:P.376 - P.381

■はじめに
 腎臓機能障害者,いわゆる腎障害者は,障害を持っていることが外見上現れにくいため,障害者である,と知られることが少ない.
 しかし,かかえている問題は他の障害者と変わるところはなく,問題が表面に出ていないことが一般の人々の理解を妨げているとも言えよう.

患者のセルフケア—難病患者対策を通して

著者: 藤岡正信

ページ範囲:P.382 - P.386

■はじめに
 わが国の難病対策は昭和47年に開始され,①調査研究の推進,②医療費自己負担の解消,および③医療施設の整備を3本の柱に対策が推進されてきた.現在までに原因も徐々に解明され,有効な治療法が確立してきた疾患もあるが,大部分の難病では,依然として経過は慢性であり,後遺症を残すなど予後は全般に不良である.このため,ひとたび難病に罹患すると,患者自身が長期の闘病生活を強いられるばかりでなく,介護などのため家族にも大きな負担がかかる.
 一方,地域における対策は,難病が稀少な疾患で,病態が十分に解明されていないということもあり,医療の場で対応されることが多かった.しかしながら,家庭訪問等の機会に在宅難病患者に遭遇するようになったこと,また,従来培ってきた地域看護技術で対応が可能であることが明らかになり,難病患者の地域ケアが行われるようになった1,2)

欧米におけるセルフ・ヘルプ・グループ—そのケアをめぐる考察

著者: 岡知史

ページ範囲:P.387 - P.391

■はじめに
 まずセルフ・ヘルプ・グループ(以下SHGと略記)とは何かということを取り上げなくてはならない.日本でも「断酒会」をはじめとして,障害児の親の会や各種の患者会などさまざまなSHGが活動しているが,SHGという概念そのものについては,まだほとんど知られていないというのが実情であろう.
 SHGの定義については,多くの研究者がさまざまなことを言っているが1),ここではBehrendt等の定義を参照したい.彼らはまず「自助連合(Selbsthilfe zusammemschlüsse)」を次のような五つの条件によって定義する.すなわち①メンバーが共通の問題を持ってかかわっていること,②組織に対する専門職の関与が皆無か,あっても僅かなものであること,③いわゆる「利益団体」ではないこと,④自己変革ないし社会変革という共通の目標が設定されていること,⑤メンバー各自が対等な立場で協力しあい助けあっていくことが強調されていることである.

資料

アルマ・アタ宣言

著者: 斎藤勲

ページ範囲:P.358 - P.359

 プライマリヘルスケア国際会議は,1978年9月12日にアルマ・アタに会し,世界中のすべての人々の健康を保護し増進するための,政府,保健・開発従事者および全世界の地域住民による迅速な行動が必要であることを指摘し,ここに次のように宣言する.

講座 臨床から公衆衛生へ—感染症シリーズ・9

恙虫病

著者: 坪井義昌

ページ範囲:P.393 - P.396

■はじめに
 最近,日本における恙虫病は増加の一途をたどっている.1980年代になっての急増は過去にも例がなく,異常といってよい.
 1983年には約700名,そして昨年1984年には900名を越えた.患者数の増加ということに加えて注目しなければならないのは,発生の確認された県の増加,また県内における発生地域の増加(広域化)ということである.

精神障害者福祉へのアプローチ・7

生活能力の育成への視点と援助実践

著者: 岩田泰夫

ページ範囲:P.397 - P.407

■はじめに
 現在の医療・福祉の最大の課題は,「老」「死に至る病」「障害」「難病」「慢性疾患」を如何に克服するかにある.これらの「病気」は,医療によって完結しないばかりか,生活に広くて深い影響を与える.したがって,これらの「病気」に対しては,医療は絶対的な優位を持っていない.
 それでは,これらの「病気」の克服には,どのような課題があるのだろうか.社会福祉の立場からは,以下のように言える.

発言あり

自由課題

ページ範囲:P.353 - P.355

老人福祉実践の方向
 在宅障害,痴呆老人のケアーはこれから地域のなかでどうしても取り組まなければならない福祉的,保健的課題です.日本は伝統的にイエの制度のなかでこのような問題を受けとめてきました.また現在の流れはある意味では一時の福祉国家論から伝統的な家族責任論へ反転の方向のようにも感じられます.しかし自己責任の確認は近代的市民像の中核をなすことも確かです.はたしてそれと現代の家族意識がどのように融合できるかは私達にとっての大きな問いかけのようにも思われます.
 そのような前提の上でも,これから起こってくる老人ケアーの問題は,家族の介護力の客観的な低下を背景としながら考えられなければなりません.

調査報告

3世代家庭における学童の食塩摂取に関する意識と行動

著者: 成瀬優知 ,   松並順子 ,   永宮民恵 ,   林佳子 ,   菊地すずゑ ,   吉村やす子 ,   太田和子 ,   藤田孝子 ,   鏡森定信 ,   渡辺正男

ページ範囲:P.408 - P.412

はじめに
 地域における循環器疾患対策として,脳卒中の家族歴や高血圧等の危険因子を持った人々の把握,およびその人々に対する保健指導や,主婦を対象とした栄養教室等の活動が行われている.私達も福井県南条町において昭和43年より医師会,大学等の協力のもとに,成人を対象に循環器疾患管理を行ってきている.この管理活動では,住民ごとの管理票が作成され,そこには夏の一斉検診の諸成績のみならず,治療状況,生活環境および保健指導の内容なども記載されており,個人の現在の状況を,過去からの経過をふまえて連続的に把握できるよう留意されている.更にこれらの管理票や一斉検診結果をもとに,個人的ならびに集団的に様々な保健指導を行うとともに,一方ではより専門的な知識と減塩食などの実習をうけた生活改善推進員を増員するなど,循環器疾患対策を多方面から行ってきた.その結果,昭和51年前後の食事調査で食塩摂取量は隣接する武生市内で15gであるのに対し1),本研究の対象である南条町のような周辺農村では19〜20gだったのが,昭和55年の同調査では農村部でも14gと,非常に減少してきた2)
 このように高血圧者をはじめとする循環器疾患罹患者の把握,ならびにその指導管理も一応恒常化されたことから,私達は次に高血圧者を有する家庭ぐるみの保健予防活動に取り組むこととなった.

健診受診者の生活と循環器疾患のRisk Factor—第1報

著者: 青山政史 ,   大森正英 ,   牧野茂徳 ,   宮田昭吾

ページ範囲:P.413 - P.418

■はじめに
 既に欧米では,循環器疾患,特に虚血性心疾患に対する疫学的研究が古くから行われている.わが国では,循環器疾患のうち,脳血管疾患がその多くを占めているため,小町や大和田らをはじめとした多くの脳卒中に関する疫学的研究がなされている.しかし,最近では,国民の生活水準の上昇に伴い,虚血性心疾患の漸増現象も見られるので,心血管疾患を含めた,広い意味での循環器疾患の予防が叫ばれるようになってきている.
 これまでの研究では,循環器疾患のRisk Factorとして,第二次的なRisk Parameterを考えるものが主体であって,一次的な予防因子(生活背景因子)の解析を行った研究は少なかった.今回我々の研究は,すでに循環器疾患のRisk Factorであることが確実となっているいくつかのパラメーターについて,生活背景因子から受ける影響を調べることにより,循環器疾患に対する第一次予防因子の意義を評価することを目的としたものである.

資料

米国の公衆衛生学校—その動向と課題

著者: 遠藤弘良

ページ範囲:P.419 - P.423

●はじめに
 公衆衛生従事者の教育・訓練及び公衆衛生学の研究を専門とする教育施設は,一般的に公衆衛生学校または学部(Schools of Public Health)と呼ばれている.WHOの定義によれば,「公衆衛生の一般的資格を求める医師及びその他の者に,少なくとも1年以上の専従(full-time)教育課程を提供する施設」1)とある.
 古いデータであるが,WHOがこの定義に従って刊行したWorld Directory of Schools of Public Health(1972年)には,世界44ヵ国,121施設が公衆衛生学校として掲載されている.121施設のうち半数以上は,医学校(医学部)のpost graduate課程の形で,公衆衛生教育訓練課程が付設されているものである.しかし,こうした付設されたものは,「学校・学部」の定義に含まれず,公衆衛生学のために独立した施設・設備や教職員を備えた教育機関のみを公衆衛生学校・学部と考えられる場合がある.この考え方によると,現在世界中に50余校存在するといわれている2)

衛生公衆衛生学史こぼれ話

8.不運な周期(率)表/9.化学から医化学へ

著者: 北博正

ページ範囲:P.392 - P.392

 化学を学べば必ず登場して来る周期(率)表と別天師の因縁話を紹介しよう.
 1846年,若冠28歳でバイエルン王国科学アカデミー準会員に推薦されたことは,別天師の化学領域における非凡な能力を証明するものであり立派な業績を挙げているが,その彼ががっかりした事件がある.それはいわゆる周期(率)表をめぐっての論争で,彼は元素を原子番号順に並べると,8の周期で化学的性質がよく似た元素が登場して来るということを発見した.これが後に周期(率)表とよばれるものである.

日本列島

仙台市デイケアセンター

著者: 土屋真

ページ範囲:P.370 - P.370

仙台市
 病院から独立した施設としては全国で2番目という「仙台市デイケアセンター」が,広瀬川の畔に完成し,精神衛生業務を開始して間もなく満3年を迎える.
 この施設は,かつての仙台市精神衛生相談所の相談業務に加えてデイケア指導も行うもので,名称もデイケアセンターと改称された,今では事業も軌道に乗り,多くの方々の御視察もいただいている.

第2回長野県健康・体力づくり研究協議会開催

著者: 藤島弘道

ページ範囲:P.396 - P.396

長野
 県民の健康・体力づくり推進のために,県衛生部・教育委員会の連携・協力による「長野県健康・体力づくり研究協議会(会長藤森聞一)」が結成されているが,その第2回研究会が昭和60年1月19日,長野市において開催された.
 第1の主題は,スポーツマンの健康管理,特にその筋力についてであり,筋力サイベックスを用いた測定結果が発表された.まず,実業団バレー選手と長野県高校バレー選手の足・膝・股・肘・肩関節の筋力を比較し,非常に大きな差がある事が示され,次いでプロ野球・社会人野球・高校野球の選手につき同様の測定をし,社会人と高校生とでも差はあるが,プロとアマの差は更に大きいと報告された.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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