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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生49巻7号

1985年07月発行

文献概要

衛生公衆衛生学史こぼれ話

10.不潔なヨーロッパ

著者: 北博正12

所属機関: 1東京都環境科学研究所 2東京医科歯科大学

ページ範囲:P.446 - P.446

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 ヨーロッパを訪ねると,王宮,寺院,劇場等,立派な建物が多くて圧倒されるが,別天師の時代の庶民はどうだったか? 結論を先にいえば,彼等はひどく不潔な生活を強いられていた.神聖ローマ帝国がおとろえはじめると,領主間の戦争や悪疫流行,飢饉,その他の災害に加え,外部からの侵攻があり,住民は疲憊し,「ヨーロッパ人は千年沐(ゆあみ)せず」と暗黒時代を記した史家がいたくらいである.英国のエリザベス一世女王の竈臣でタバコの紹介者ローリー卿(Sir Walter Raleigh 1552-1618)が女王のお伴をして,ロンドンの街角でぬかるみがひどく,女王が通れないのを見て,さっそく自分のマントをぬかるみの上にひろげて女王を渡らせ,女王の信任をいよいよ厚くしたという話があるが,当時は男女ともハイヒールをはいていた.わが国の高下駄(足駄)はぬかるみ用の履物であるが,屋内に入るときは,これを脱いで足を洗うのとは大分ちがう.
 ベルサイユ宮殿は17〜18世紀の最高に立派な建物といわれるが,当時は便所がなく,王侯貴族は別室のおまる(御虎子)で用を足していた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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