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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生49巻8号

1985年08月発行

文献概要

特集 死と公衆衛生

ターミナル・ケアの概念

著者: 池見酉次郎12

所属機関: 1九州大学 2北九州市立小倉病院

ページ範囲:P.513 - P.517

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■ターミナル・ケアとは
 ターミナル・ケアといわれる期間は,研究者によってさまざまである.アメリカでは,治療の見込みがなく,余命6ヵ月以内と考えられる場合を「ターミナル」とよぶのが通常である.日本の国民感情,社会事情,医療状況を考慮すると,日本におけるターミナル・ケアの期間は,2〜6カ月と考えられ,この時期における包括的なケアをターミナル・ケアという.末期癌とは,余命が3ヵ月以内で治療不能であり,転移をもつ進行癌で肉体的ならびに精神的な苦痛を伴うものである.この時点では,もはや治癒(キュア)は望めず,ケアが必要になってくる.かといって,医療者である以上,キュアをあきらめてよいはずがなく,最後までキュアの望みを捨てずに,あらゆる手段を尽くしてキュアをはかることはいうまでもない.近頃,末期患者という言葉が,「医療に見すてられた患者」と誤り解されやすい風潮は,是正されねばならない.末期においても,そうでない場合と同様に,キュアとケアは,最後まで併行してなされねばならない.実際には,ターミナル・ケアでは,キュアよりもケアの比重が高くなるのは止むをえないことである.このような視点から考えると,末期患者に対するケアも,本質的には,何ら異なるものではない.
 ここで,ケアの意味について考えてみよう.ケアの目的は,身体の病変のみに限定せずに患者を全人的にとらえ,患者の個別性を尊重しながら,個々の患者にふさわしい生を全うできるように援助し,患者が人生の総決算をするのに協力することである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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