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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生5巻1号

1948年11月発行

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論説

本誌創刊以後第三の新春を迎へて

著者: 野邊地慶三

ページ範囲:P.1 - P.2

 終戰後第四の新春が茲に迎い來つた。過去3年有餘の歳月の間に占領軍當局の支援の下,祖國日本の復興工作は好調に進展しつゝある。此の間我が醫事衞生の領域に於ては新憲法—第25條—の公布,中央及び地方衞生行政機構の改組充實,諸醫事衞生法制の改正整備,醫學教育制度の刷新振興等劃時代的の躍進が記録せられたことは獨り醫事衞生關係者のみならず,國民の等しく喜びとするところである。
 太平洋の硝煙漸く治まつて國家再建の業その緒につき始めた昭和21年10月,本誌は新日本建設の原動力たるべき國民保健の増進に資することを目途として其の創刊を企てられたものであつた。爾來今日迄2ケ年の間衞生技術官を想定讀者層として堅實な歩みを續けて來たものである。然しながら國民保健の向上増進は數の限られた衞生技術者の活動だけによつては效果に限度がある。毎日數十の患者に接し患者及びその家族が眞劍に醫師の進言に耳を傾ける機會に惠まれて居る臨牀醫家が,この好機會を活用して衞生教育に意を用ふるに至れば國民保健の進運著しいものがあることが期待されるのである。30年の昔,米國の朝野は茲に思を致し醫學教育制度を刷新し臨牀醫家たらんとする者の公衆衞生の教育に力をいたすことになつたのであつた。我國の先般の醫學教育制度刷新はこれに倣つたものである。この新事態に應じて本誌は今後讀者層を臨牀醫家に擴大し,その公衆衞生教育を企圖し,以て國民保健向上の機運を促進し,新日本建設に資するところあらうとして居る。

What is Health Education?,他

著者: 早川清

ページ範囲:P.18 - P.23

 以下は米國公衆衞生學雜誌社(A.J.P.H.)編集部(Editorial Board)で各大家の意見を徴し取り纏めた論説集(Symposium)で同雜誌1947年6月號に掲載されたものである。

原著

傳染性下痢症の傳播樣式に關する研究—新潟縣佐渡郡澤根町に於ける調査報告

著者: 小島三郎 ,   福見秀雄 ,   山本繁夫 ,   横田強 ,   富澤純一 ,   木下佐 ,   石丸隆治 ,   菅井健治 ,   福見辨造 ,   平山章 ,   湯原安彦 ,   大野岑也 ,   田邊忠郎 ,   伊藤正太郎 ,   所澤剛 ,   大塚昭二 ,   椿茂和

ページ範囲:P.3 - P.12

 本年の初頭から新潟,山形,和歌山と我が國の各地に發生し(實は昨年の暮に既に一定に發生していたといふ情報もある),3月,4月には全國的に猖獗を極め,猛威を振つた一種の傳染性の下痢性の疾患は,我々によつて傳染性下痢症と命名され,動物實驗,培養實驗,人體實驗によつて詳細に研究され,その病原體はヴイールスと確定した。これらの研究の成果については別稿で發表される豫定である。またそのヴイールス病原については兒玉1),橋本2),山本等3),操4),寺田5)が早速追試確認され,既に成文として山本等はこれを發表している。
 一方,本病の傅搬状況も亦甚だ特徴的であつて,新潟,埼玉に於ける我々の部分的調査記録はこれまで随時發表されている6)7)。それらによつて本病の疫學的,流行病學的性状は大略明かになつたと思う。

座談會

衞生教育に就いて—日時 昭和23年10月8日

著者: 井上善十郞 ,   石垣純二 ,   荷見秋次郞 ,   吉岡博人 ,   近藤正二 ,   滋賀秀俊 ,   三浦運一 ,   早川清 ,   野邊地慶三 ,   五味松樹 ,   齋藤潔 ,   久松榮一郞 ,   森島侃一郞

ページ範囲:P.13 - P.18

 五味 本日は,御多忙中のところ,御集りを頂き誠に有り難う存じます。扨て本日の話題は御案内の通り衞生教育の諸問題についてゞございます。近來,衞生教育至上主義という聲がもり上つて居る現況でございますので各位の御意見を拜聽しあわして本誌を通じ廣く御傳へ致したいと存じます。
 では齋藤先生に司會を御願ひすることに致しまして先生どうぞ,

研究と資料

繁用醫藥品の細菌汚染度及び有害物質に關する研究—第1報 粉末藥劑中の細菌について

著者: 八田貞義 ,   靑山好作 ,   丹治園枝 ,   田中万千子

ページ範囲:P.24 - P.30

(本報告は昭和23年10月,連合衞生學會總會・厚生科學研究會總會の 席上に於て發表された)
 飲食品の衞生管理という問題は,公衆衞生上より重要視せられ,各國ともその程度や様式の差こそあれそれぞれ嚴重な規定をたてゝおり,我が國も同様であるが,こと醫藥品となると藥局法によりその化學的成分についての品質,純度等には留意せられあつても,細菌汚染という見地からする衞生試驗は,單に注射藥に對する細菌有無試驗が課せられあるばかりで,内服藥その他の醫藥品を對象とする取締は殆んどなされていない。
 罐詰,魚肉等の變敗の原因の多くは,細菌學的に解決せられているが,エビオス,酵母其の他の製劑の變質,變敗に對しては單に吸濕よりする化學的,物理學的現象として輕視せられたる傾きがある。醫藥品は主に病弱者がその使用對象となることから見ても,これえの衞生管理規約の制定は公衆衞生上重要且つ緊要な問題と思はれるので以下,繁用醫藥品として一般人が容易に入手し,服用しあるものえの衞生細菌學的な檢討を試みた。

何が死亡率を減少させたか

著者: 大久保正一

ページ範囲:P.30 - P.35

緒言
 福島縣の中央に神秘的な美しい猪苗代湖がある,この北方に會津磐梯山がそびえる。この山麓は西南にのびて肥活な會津盆地をつくり,この中心に會津若松という小さな都會がある。こゝは昔の城下町でもあつて封建的色彩が強く未だに病氣は神佛の崇りなりと信じているものが多い。ところが此處の市役所を中心に公衆衞生調査委員會というものが昭和23年4月に誕生した。これは時代の波と云えば云えるが不思議な感に打たれるくらい進歩的な行動であつた。そこで何かに公衆衞生學的な對策をたて市民の長壽をはかることになつた。對策をたてるには先ず衞生状況を出來るだけ詳細に知ることが必要となつた。然し今迄の日本でこのように小さい都市・衞生状況を科學的に調査することは非常に少かつたと思はれる。若松市も御多聞に洩れず一つもなかつた。
 また飜つて考えたことは,我國には國民保健のために厚生省も出來公衆衞生院が完成し幾多のすぐれた衞生學者も輩出した。こういう氣運にあれば必ずや色々の良結果の現はれたものと期待出來る。現に一般國民死亡率,乳兒死亡率の著明なる減少が指摘されている。そしてこの事は日本の各都市各農村に一種の恩澤を與えたものと思はれるが,若松市には如何なる良影響があつたのか。

現下の都市勞働者住宅問題

著者: 相澤龍

ページ範囲:P.36 - P.41

戰後の住宅問題の特質
 戰後の國民生活にとつて最大の脅威は食糧と住宅問題であるが,終戰以來食糧問題のみが國民の最大關心事となつて,住宅問題は未だ一般の關心が極めて低いのが現状である。併し住宅は生活の基盤であると言う點で,戰後の國民の居住状況が公衆衞生上は勿論,経濟,文化再建上大きな障碍をなして居る點は否み難い。戰後の國民の居住状況の實態把握は極めて重要な問題である。それには先づ戰後の住宅問題の特質を述べる必要があらう。
(イ)住宅の絶對的不足--空襲に依る燒壊住宅210萬戸,疎開60萬戸,外地引揚者用64萬戸,その他戰時中からの住宅供給上の不足,人口増加による所要住宅,火災水害地震等による損耗住宅,要補修改築住宅等を合すれば約410萬戸の住宅不足を來した。1)2)3)

産業衞生の要綱(第6囘)

著者: 重松逸造

ページ範囲:P.41 - P.42

勞働者の保健及び安全教育
 1.工場内の全勞働者が自らを護り,保健厚生に關する仕事に理解をもつて協力するのに必要な知識と訓練とを與えるようなあらゆる計畫を立案せよ。
 2.この計畫中には次にのべる事項に關する指示が含まれていなければならない。

海外文獻

萬國保健事業の趨勢,他

著者: 早川淸

ページ範囲:P.43 - P.53

 過去10年間各國保健制度の躍進は目覺ましいものがある。特に歐州各國竝びに英國に於ける進歩は注目に値する。
 茲にRockefeller財團國際保健部主催の下に下記12ケ國保健制度の調i査が行はれた。Australia,Canada,Denmark,England,Finland,France,The Netherlands,New Zealand,Norway,Sweden及び米國。

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ニユース

ページ範囲:P.53 - P.53

京都市及島根縣におけるヂフテリヤ豫防接種事件に關する措置新聞發表(昭和23.12.21)
 1.先般京都市及島根縣に發生したヂフテリヤ中毒事件については,さきに公表した通りその原因は製造所である大阪日赤病院附屬大阪醫藥學研究所において4つの製造過程で作られたものを1つの製造過程で作られた如く一製造番號を附して國家檢定を受けた點にあり,厚生省としては直ちに同所で製造された豫防注射液を全部囘收すると共に去る11月26日全國のヂフテリヤトキソイド製造所の主任技術者に作業記録携行の上,各個に出頭せしめて作業経過の嚴密な再檢査を行い誤りなきを期した。
 2.然し乍ら今後豫防接種法の實施に伴い,萬一にも再び今囘の如き不祥事が起る事があつては洵に申譯ない次第であるので,この際ヂフテリヤ豫防接種のみならず全部の豫防接種の實施について次の措置をとることに決定し本日各都道府縣知事宛通牒を發した。

公衆衞生學雑誌・第三巻 索引

ページ範囲:P.54 - P.60

(本索引の前の數字は號,後の數字は頁を表わす)
公衆衞生學雑誌・第三巻
原  著
本邦客種死因の季節的變化に就いて 大森博子,安場登喜子 1・3
國民榮養の現歌(抄)有本邦太郎 2・8

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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