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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生5巻2号

1948年12月発行

雑誌目次

論説

ヂフテリヤ豫防接種による不祥事件

ページ範囲:P.63 - P.65

 吾等はDudley1)や本誌所載の栃内工藤2)などの觀察の如く吾等の四周に出没する無數のヂフテリヤ保菌者に圍繞されて生活して居るものである。從つてFriedemann3)や本誌に平山4)が報告して居る如く本病患者の大部分は保菌者から傅染を受けて居る者であつて本病は所謂保菌者傅播性傅染病Carrier-borne Diseaseなのである。夫れ故未患兒を豫防種によつて四圍の保菌者群からの攻撃に堪えしめるようにすることが本病に對する合理的で且つ實行可能な唯一の豫防法であることは論者年來の主張である。この意味に於て豫防接種法の發布は本病の防遏上特に賀すべきことであつた。然るに本法公布後最初の定期接種の實施に當り京都市及島根縣に於て不慮の災禍を惹起し,本法の施行に大なる障碍を招來したことは誠に遺憾の極みである。12月21日現在前地に於ては死者實に62名,重症入院者128名,他に輕症者800名内外を生じ,又後地に於ては死者5名,入院者83名,他に中毒者241名を出して居ると報ぜられて居る。死者の多くは0-1歳の乳幼兒で,接種局所は腫張し,深い潰瘍を生じて中には上膊骨の露出して居るものがあつたとのことである。又重症者の多くは後痲痺を起して居る爲嚥下性肺炎を起して相次いで死んで行くので犠牲者の數は尚引績き増加しつつあると云う誠に悲惨な地獄繪を現出して居るのである。

公衆衞生又は公衆衞生學について

著者: 戸田正三

ページ範囲:P.65 - P.67

 日本憲法は第25條に『すべて國民は健康で文化的な最低限度の生活を營む權利を有する。國はすべての生活部面について社會福祉,社會保障及び公衆衞生の向上及び増進に努めなければならない』と定めたことは皆御承知のはずであるが,私は,これはペルリ提督來朝以來最も上等の舶來品であると思つている。日本憲法もやがて政變の時期が來るだろうが,此精神は現在及び將來の國民の爲め是非保存して欲しい。ところが國民も官公吏も,それがあまり上等な舶來品であるがために,頭にピンとこない。丁度,毎日3度白米飯をとつて頑固な榮養不良に陷つて居る者に上等な西洋料理を與えたようなもので満腹できない點である。又國民經濟の現状から見て直ちに出現することの出來ない點も多々ある。先づ幼少よりの教育と百年の大計をたてて,此權利と義務の遂行とに民公一途,最善の努力を拂うべきである。
 中にも,公衆衞生のことに關しては,今尚お國民は一樣に五里霧中である。何か新しい物でも生れたように,變な質問をする人が多い。醫學を修めた者にも斯樣な點がまゝあるので,一筆啓上,公衆衞生の定義と意義とについて些か拙見を記す。幸ひ讀者諸君より御批評賜らば幸甚である。

結核の素質問題

ページ範囲:P.67 - P.68

 Verschner及びDiehl1)が1卵性双生兒の結核發病の研究によつて結核に對する先天性抵抗力の高低は強く遺傳することを議論の餘地なく明らかにしたので結核病自身は傳染病で遺傳病ではないけれども結核に對する素質は遺傳することが知られたのである。最近Puffer女史2)が結核の同異父母兄弟間の同胞集積性の廣汎な觀察に基いて結核の素質問題を高調した事實もあつて米國に於ては近時結核施策に素質問題が考慮されるに至つた。たとへば患家中心の重點的結核豫防施策の根據は患家では傅染源が居る爲めに家族感染の危險が大であり,又既感染者及び感染發病者の集積して居る丈けでなく結核患家の構成人員は結核に對する抵抗の弱い素質の者であるので結核豫防上特に指導管理が必要であると解されるに至つて居る。
 我國に於ても近時荒谷其他によつて結核の家族集積性の觀察がなされて居るが結核が患家に集積すると云う事實であつてそれは患家には傅染源との接觸による感染の危險が大であると云ふ理由にもよる事象なので結核素質の遺傅の確證にはならないのである。本號所載報告の如く平山3)等も結核の家族集積性の研究を行つたが結核患者の居らない家庭を選んでその中のツ反應陽性者の頻度を見又結核既感染者だけについてその發病者の頻度を觀察しても有意義な家族集積性が見られることを發見した。

原著

ヂフテリアの家庭内二次感染例比率—總症例に對する家庭内二次感染例の研究

著者: 平山雄

ページ範囲:P.69 - P.71

Ⅰ.緒言
 ジフテリアの感染源として重要なのは,患者ではなく保菌者である事は,既に幾多の報告から明らかであり,我國に於ても野邊地はつとにこの點を強調している。かつて,Friedemann1)はDoull & Lara2)の計出した患者對ジ保菌者危險度比率1/10を彼自身の見解に基いて1/11と訂正し,それを用いて1926年舊伯林市に發生したジ者の97.6%は保菌者から感染し,僅かに2.4%が患者から感染を受けたものであるべきことを推論した。一方Moldovan3)は家庭内感染がジフテリアの主要感染機序であろうとの推定の下にジフテリアに於ける家庭内二次感染例の總症例に對する割合8を報告から集計して見たところ,諾威を除く7地方の平均は僅かに2.9%に過ぎないのを認め,その少いのに驚いて居る。野邊地4))のべて居る様に,Moldovanの得た家庭内二次感染例の總症例に對する割合が上述のFriedemannが患者から直接感染を受けるものの割合として計出した2.4%と云う數字と近似して居る點は,きわめて興味深いものがある。私は,我國の實際例について,この通りであるか否かを檢討することは意義ありと考え,昭和22年東京都に於けるジフテリア患者届出カードから,この點に關し推計を行つて見た。

ソバの驅蟲效果について(第1報)—各種駆蟲剤との比較

著者: 八田貞義 ,   乘木秀夫 ,   宮本晴夫 ,   高橋信將

ページ範囲:P.72 - P.76

まえがき
 寄生蟲の全國的なひろがりと驅蟲剤の不足とは,戰後日本の大きな社會問題であつて,これが豫防對策とその有效なる駆除藥の發見は,目下の急務であることは申すまでもない。しかし,この國の現状よりして,豫防對策としての糞便の完杢なる腐熟,生野菜食(漬物をも含む)の廢止等の充分なる徹底は目下のところ望めそうにもないので,寄生蟲の驅除法が一番重要な課題となって來よう。
 驅蟲剤としては效果のあることは勿論であるが,更に廉價である事,副作用のない事,原料の豊富に得られる事等も缺くことのできないものであつて,現今,多くの驅蟲剤が製品化され,またそれらの效果についても,色々と比較檢討されているが1)-6),以上の如き條件を満足させるに足るものは未だ見當らないようである。かゝる現況にあるとき,今囘私達の實驗に供した當試驗所調査部の松尾,市川,小幡技官等の新たに調製せるソバの煎剤竝びにそのエキスは,比較的有望な成績を示し,囘蟲驅除の上に大いなる期待がもたれたのでその大要を報告する。

我が國に於ける結核年齢別死亡の最近の動向に就て

著者: 平山雄

ページ範囲:P.76 - P.82

Ⅰ.緒言
 戰時中所謂結核國難として結核の逐年増加が警告され,特に靑少年層の結核對策に樣々の努力が傾注された事は未だ記憶に新たなものがある。その效果が如何様な形で表われて來るかと云う事は當局は勿論一般醫家の關心事であつたが,終戰後いざ蓋を開けて見ると,結核死亡率はまさしく靑少年層のみに激減し,乳幼兒及び壮年層以上は不變乃至は増加していたのである。いちはやく渡邊1)はこの事實を報じこの靑少年層死亡減少はBCGを主軸とする一連の結核對策に依るものなし,次で柳澤2)も同樣の見解を述べている。靑少年層死亡の減少は誠に慶賀すべきであるが,そに減少が何に由來するかと云う事,特にBCGの效果が如何なる程度に影響を及ぼしているかと云う點に就いては,將來の對策の磁針にもなる事であるから,極めて愼重に檢討さるべき事と考える。私は此の樣な年齢別死亡率の年次推移を考察する場合には,柳澤も強調している事であるが,Frost3)に倣つて同年代生れ別に追及して見る必要があると考えたのでその立場からも檢討を試み,更に年齢別總死亡數の年齢推移との關係とか結核の病類別年齢別關係等の立場からも考察を加えて見た。未だ決定的な結論に到達しないが今囘は現在迄に得た成績は若干の考察を加え論述して見る。

結核の素質に關する研究—Ⅰ 結核の家族集積性について

著者: 平山雄 ,   川村達 ,   重松逸造 ,   島尾忠男

ページ範囲:P.82 - P.86

Ⅰ.緒論
 結核が家族的に集積して發生する傾向は,日常の臨床の素朴な經驗からも一應事實である。荒谷氏1)は醫學生の家系調査の資料を基にして,家族中の結核患者數が2項分布から計算した理論値と比較して有意の食い違いがある事を見出し,北川氏2)は更にこの資料がポリア分布に從う事を證明した。
 この方法は確かに從來の方注を一歩出たもので結核の家族集積性を統計學的に取りあげた最初のものと見られる。我々は實際の集團檢診成積を資料としてこの問題を檢討して見たので報告する。

結核の素質に關する研究—Ⅱ 家系的に見たるBCG接種後のツ反應に就て

著者: 平山雄 ,   川村達 ,   重松逸造 ,   島尾忠男

ページ範囲:P.87 - P.89

Ⅰ.緒論
 ツ反應陰性者にBCG接種を行つた際,張く陽轉してそれが比較的長く續く例と,陽轉せぬかと或いは陽轉してもそれが弱く,間もなく陰性にもどつてしまう例とがある事は,日常の集團檢診で屡々經驗する所である。BCG發見者の1人Guérinも既にこの事實を指摘しているが,その原因は不明と見る他はないとして居る。ツ反應の出方が内因的なのも如何で變化することに就いては室橋,岩佐,武田,春木氏等の研究があるが特にBCGのこの問題について詳細に檢討している文献は見當らない。私達は體質がこれに關係するのではないかと云う事を考え,以下實際の集團檢診成績を資料として檢討を行い,新知見を得たので報告する。

資料

乳兒期食餌中のビタミンB2

著者: 大栗サダ

ページ範囲:P.90 - P.91

 乳兒期食品の榮養學的研究に就ては既に幾多の成績を報告してゐるが,ここには曾て發表した著者の定量法(醫學と生物學6:54,昭和19年)により乳兒期及離乳期に於ける食品既に述べた如く調理方法は此の時期に於ては成人或いは年長兒の場合と異り,而も榮養素殊に調理によつて最も影響され易い無機質。ビタミン等の微量成分に對する所要量も他の何れの時期に比較しても多少從來行はれたるような生の材料そのまゝの成分分析では價値を多いに減ずるから,著者等は先ず調理を行い,乳兒が實際に口にする状態のものとした後に分析したビタミンB2含量を測つた。
 分析に用いた材料に於て入手せるもので,或る種食品は名稱は同一でも在來のものと原料を異にする虞れなしとしないものがある。例えば,醤油,味噌の如きも必ずしも豆から製造したものゝみではないものもある。併し之等材料の詮索に就ては行わなかつた。

輸入食糧のビタミンB1含有量と調理によるその變化

著者: 川崎近太郞 ,   可兒利朗

ページ範囲:P.91 - P.94

Ⅰ.まえがき
 今日の日本では食糧の不足を連合軍の好意による輸入食糧によつて補つてゐるのであるから,都會人農村人共に輪入食糧に依存している。殊に都市では時期によつて配給食糧の50%以上が輸入食糧であることもあり,全體として約20%は輸入食糧である。從つて吾々は輸入食糧の榮養價や調理方法竝に調理による成分の變化は大なる關心を持つのである。輸入食糧の種類は多くは米國に於て使用される場合には適當に加工製品化されているが,現在の輸入食糧は大部分原料食品の儘,或は簡單な加工のみで配給されるから各家庭に於ける調理加工方法によつて榮養價にも變化を生ずる。從つて輸入食糧の調理方法や指導が重要視される所以であつて,これに對する委員會が組織されている。日本在來の主食である米麥の調理は炊飯が主であつて比較的簡單であるに反し,輸入食糧は蒸す,焙く,煮るだげでなく重曹等の藥品處理をも伴うことがあるので調理による變化も複雑である。ビタミンB1に就て考えても米麥では搗精による損失は搗精度の制限で最少限に出來るから,淘洗炊飯によるB1の損失はかなり一定している。輸入食糧の場合には配給されたもののB1含量に於いて米麥に劣らぬものであるが,調理方法の如何によつては著しいB1の損失を起すこともある。

氣候馴應に關する基礎的研究

著者: 菊野正隆

ページ範囲:P.95 - P.101

 我々が高温環境に永く曝された場合,我々の體質に變化を受けるか否か,もし變化を受けるものとすればいかなるものであるか,とゆうことに疑問をいだき,熱帶地方の居住民について體質を調査した成績と,温帶地方住民の成績とを數多く集めて比較檢討した處1),2),熱地に永く居住してゐる者は副交感神經緊張亢進状態に傾くと考へられる結果が得られた。また原島教授も南方に於て植物神經機能檢査,血液成分の測定等を行つて同樣の結論を得た3)。また著者自身も臺灣に於て極く一部の熱地居住民についてではあるが,循環機能,血液像,エネルギー代謝等を觀察して,徐脈4),5)血圧下降6),7),エオジン嗜好性白血球の増加,比較的淋巴増多,基礎代謝値の低下,8)勞作時瓦斯代謝量の比較的低値,9),10)等上記の諸家の成績と同じ傾向を示す結果が得られた。
 そこでこの熱地居住者が副交感神經緊張亢進状態に傾き易い傾向にあるとゆう事の本態を追及しようと考へて,先づ副交感神經の興奮の際に出現するアセチールコリンの量が該住民の體内に於て如何なる値を示すかといふことを測定しようと試みた。アセチールコリンの定量法は種々あるが,そのうち生物學的方法は化學的定量法よりも鋭敏であることは既にHunt及びTaaeau11)によつて實驗され,その他多くの研究者によつて摘出腸管をはじめ各種の標本が用ひられた。

論述

新しい醫師と衞生教育

著者: 荷見秋次郎

ページ範囲:P.102 - P.104

 新しい醫師というのは,舊い醫師に對していうのである。現在は,舊い醫師は,1人も居ない筈である。即ち,現在は,新しい醫師のみが,わが國に居る筈である。こゝでは舊い馨師が居ない筈だというのは,理論的に考えた場合のことである。しかし,これだけ書いただけでは,まだ襌問答のようで何が何だか分らないであろう。それは,その通りである。
 新しい醫師というのは,本年7月30日法律第201號「醫師法」による醫師のことをいうのである。即ち,同法第1條に,『醫師は,醫療及び保健指導を掌ることによつて公衆衛生の向上及び増進に寄與し,もつて國民の健康な生活を確保するもとになる』,と規定されている。

新らしき都市計晝

著者: 石川榮耀

ページ範囲:P.104 - P.109

1.新らしき都市計晝は農村にある
 新しき都市計晝は,都市の中にはない。
 新しき都市計晝は,農村の中にある。

衞生行政のうごき

ページ範囲:P.110 - P.112

1.ヂフテリヤ事件
 終戰後驚異的躍進振りを示した豫防衞生行政をして更に一層の發展を約束するものとして,その文化的意義を高く買はれ,日日關係者の非常な期待裡に分布施行をみた豫防接種法が,そのスタートに於て,貴い幼い人命を67名も奪ひ936名の毒素に苦しむ患者を出したことは,正に一大悲劇であつた。
 厚生省では事件以來原因の追求と被害者に對する治療慰問に努めると共に,今後期る不祥事の絶滅を期し次のような措置をとることに決定去月2日その旨發表した。即ち,

文獻

食物と腫瘍の發生

著者: 宮入

ページ範囲:P.113 - P.114

(Medical Newsletter)
 Baumannは小實驗動物による廣汎な實驗動物の結果腫瘍の發生は食物の性質により或る程度の影響を受け,更に食物は既に生じた腫瘍の生育よりも腫瘍を生ずる樣な諸反應により大きな效果のある事を明らかにした。使用した動物はねずみ,廿日ねずみ,モルモット,兎である。廿日ねずみの腫瘍はMethyl cholanthrene,Benzpyrene, Dibenzanthra cene様な癌性炭水化物や,紫外線に曝す事により,アゾ色素を含む食物,又腫瘍を發生し易すい特徴のある廿日ねずみの純血族を用いる事によつて生ずる。研究により大部分の腫瘍は熱量攝取が30%に制限された動物よりも餌を十分に輿えられている動物の方が早く發育し或る種の腫瘍は熱量攝取を制限された動物では全く發生し得ない事が判つた。榮養充分な食物の少量を與えた群と蛋白質,鹽,ヴイミンと同量の種々の脂肪食を與えた群では腫瘍發生に就いて同じ效果が現れている。熱量制限の效果は十分に説明さていない。
 著者は人間の癌と高熟量攝取との關係は,癌死亡率が保檢證券を出した時體重が重過ぎた人々に最も多く,平均體重の人は中位で平均以下の人に最も少いと云う保瞼統計に依つても指摘されると述べている。

下水の鹽素處理について

著者: 澤田敬一

ページ範囲:P.114 - P.114

 現在ペンシルバニア州の297箇所の下水處理場のうち139箇所,即ち46.5%が鹽素を使用している。
 下水に鹽素を適用する效果は次の4項に分けて考えられる。

水道水に弗化ソーダを投入する場合の實際

著者: 伊丹一夫

ページ範囲:P.115 - P.115

 水道水に弗素の一定量を含有せしめて齲齒の豫防を計ろうとする試みは,1945年以來,米國の十數都市で實施され豫期以上の成績を納めつつあり,齲齒の發生を1/2乃至1/3に抑制し得る事が期待されて居る。
 吾が國でも或る都市に於て實施を計畫中であるが,米國のScheboygon市(Wis)に於て1946年2月に,はじめて弗化ソーダを投入した當時の状況報告が同市水道局監督官Jerome C, Zufelt氏によつて發表されて居るのでここに紹介する。

American Journal of Poblic Health(米國公衆衞生雜誌)1948年11月號内容目次の概要

著者: 早川

ページ範囲:P.116 - P.117

1.明日の世界の爲めに保健知識の昂ようを計れ(Cultivating Om Human Resources for Health in Tomorrow's World,Martha E. Eliot
 米國公衆衞生協會會長兼ワシントン小兒局長の女兒が昨年11月開催せられた第79囘米國公衆衞生學會に於て講演した講演要旨で公衆衞生諸問題中特に將來の母子衞生問題をとりあげ本問題の重要性を力説している。

海外情報

世界的問題としての醫學—Morris Fishbein, C. I. E 提供

著者: K. H. 生

ページ範囲:P.118 - P.119

 世界衞生機關(W. H. O.)憲章を承認した國際連合國家は澤山ある。米國も之れに參加した。最初のW. H. O. 會議は6月Genevaで開催された。本會議では同會議基礎的決定事項のいくつかを實施に移つす能力ある委員を選定した。本日までの所本會議ではマラリア,結核,花柳病,母子に重點をおき,アルコール中毒,慣習性藥物管理,インフルエンザ,看護,榮養,農村衞生,住血吸蟲病等も考慮される豫定である。又既往各種の衛生機關よりW. H. O. は生物製剤の檢定,萬國藥局法,流行病學,衞生統計,學名等の規定に關する事項を受けついだ。
 W. H. O. の指導者は醫學,保健に關する圖書の發行,醫學知識の普遍の重要性を認むるに至つた。本目的の爲めにW. H. O及び國際連合に於ても醫學分野に於ける國際組織の可能性を檢討している。一般科學の場合には純粋科學の國際組織たる科學連合國際委員會がある。醫學分野には從來恒久的會議もなく相互の連絡もなかつた。そこでW. H. Oでは醫學國際委員會の設立を計劃した。これは1948年1月開催された會議で國際連合竝にW. H. Oで決定され,1947年9月巴里で世界醫學協會が設立されその實行委員曾がNew Yorkで實施された。

米國公衆衞生局の祝賀

ページ範囲:P.119 - P.120

 米國公衆衞生局は世界的大科學研究團體であるが最近ワシントン郊外メリーランドベセスダ國立豫防衞生研究所で所内開放を行い,150囘記念の祝賀を行つた。
 本局は1798年7月16日米代大統領John Adams時代に議會の協贊を經て病人不具海員の治療を目的に創設れた。經費は最初海員のきよ金毎月20centによつてまかなはれた。

極東の子供等

ページ範囲:P.120 - P.121

 前米國公衆衞生局長Thomas Parran氏の計劃により極東の醫學調査が初めて國際的に達成された。Parran博土は29月に亙る視察旅行の結果を次の如く語つた。支那を除く極東諸國の爲めに割當てられた3,300,000弗の最上利用法が國連際合の機關たる國際小兒非常資金(ICEF)によつて決定せられた。
 支那は別の計劃によつて,援助せられることになつてゐるので本計畫から除外されてあるParran博士は強調して曰く,日本の侵略と政治的無秩序の餘波として健康状態の失調は甚しきものがあつた。印度,ペルキスタン,シヤム,インドネシア,佛領印度支那,馬來,ヂヤバ等に於ては榮養不足,幼兒死亡,結核,マラリア等は食糧,衣服,醫藥等の缺乏と共に倍増の傾向が見られた。資金を最も有效的に使用する爲め本資金は主として他人を教育する教師の養成に使用することに決定された。即ち300,000弗はマラリア撲滅法受講の爲めの醫療班の派遣に使用される。地域が廣範に亙り,人口も多大である爲め歐州12ケ國に實施している樣な子供の大衆給食等と言うことは不可能である。唯既に入院中の小兒患者,榮養不良の爲め罹病している小人のみに特別の援助を與えることゝした。印度,ペルキスタン地區避難民キヤンプの小兒の爲めには1,00,000弗を割り當てた。

精神病科の中心

ページ範囲:P.121 - P.122

 世界的大精神病科の中心たるMenninger醫院は米國中西部,人口約75,000のTopeka(カンサス州)にある。本醫院は有名な兄弟醫師Karl William Menninger氏によつて創設せられたものである。本醫院は綜合醫院の主旨によつて經營せられ精神病の研究,教育竝に治療を專門的に取り扱い學生,患者は世界到る處から異って來る。
 Dr. Karl Menninger「人の心」,「敵を愛せよ」,「己に抗せよ」等の著者でもある。Dr. Williamは米國精神病學協會の會長である。そして又本次世界大戰間準將として米軍神經,精神病諸計晝の指導者であった。彼は「困難なる現世の精神病」,「精神病學の發達と現状」の著者であり,兩兄弟共に曾つて米國精神分析學協會會頭であつた。

普通感冒(Common Cold)の病原體分離

ページ範囲:P.122 - P.122

 所謂感冒(Colds)なるもののの本體如何は本日判然としていない。
 或る種の感冨(俗に言ふ風)は恐らく物理的原因に起因するものと思惟されるが,又到然と或る種疾病の徴候を現わす群の風が考えられる。普通感冒(Common Cold)なるものも恐らく疾患ではなく病原的には異つたものがあるに違いないが本日之れを何人も確と言うことが出來ぬ現状である。この或る種のものが濾過性病原體によることは既に30年來言はれて來たことであるが,最近National Institute of HealthのTopping及びAtlas両氏が始めて頭の風(Cold in the Head)より定型的濾過性病原體を分離證明した。

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散亂線

著者: 五味

ページ範囲:P.123 - P.123

 例年にない暖かい冬であったが,心配されていた痘そう,發疹チフス,西歐でその流行を傳えられているインフルエンザなどの跳梁もなく,ことなくこの冬を過ごしえたことを喜びたい。
 本號の"我が國に於ける結核年齡別死亡の最近の動向に就いて"(平山氏論文)は,最近わが國の青少年結核死亡が減少してきたと言われるその眞因を正しく解析しえたものとして貴重な研究業績と思う。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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