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雑誌目次

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公衆衛生5巻3号

1949年01月発行

雑誌目次

特集 第2囘日本公衆衞生學會研究發表抄録 〔第1日〕11月12日(金)午前の部

(11)公衆衞生と體力

著者: 浦本政三郎

ページ範囲:P.136 - P.136

(抄録未着)

(12)132km強歩者の身心に於ける諸變化

著者: 酒井敏夫

ページ範囲:P.137 - P.137

 昭和23年10月25日,山梨縣立甲府第一高等學校に於ける24時間強歩に於いて17-18歳の生徒27名について脈搏數,血壓,肺活量,握力,膝蓋腱反射閾値,空間定位,尿及び唾液のpH,尿の蛋白竝びにDodaggio-増山反應,及び其他2,3の事項を甲府,上諏記,小野,松本の4ケ所にて次々に測定し,強歩中間時の變動を見た。
 其の結果27名中,松本を突破したものが3名,小野,松本間で落伍したものが9名,上諏訪,小野間で落伍したものが10名,他の5名は上諏訪迄に到らなかつた。松本突組を第1群,小野組を第2群,上諏訪通過組を第3群とすれば,各群とも上諏訪にて疲勞は最大値近くに迄達し,小野にては危險閾に達している様に思えた。松本に達した第1群のものは,危險閾を脱し身心の調整が出來得た身體の所有者の如くであつた。測定値で顯著な傾向を示したものは,膝蓋腱反射閾値で,上諏訪にてすでに,1日の休養では恢復出來ぬ上昇の型を示し,落伍組の第2群,第3群の上昇過程は,第1群のものより急激な上り方を取つた。次に明らかな成績を示したのは,尿及び唾液のphで,上諏訪,小野,松本と遠方に行くに從い,酸性に傾き,途中落伍した第2群,第3群は甲府出發前すでに,松本通過者に比べ,酸性度が強く,第3群のものが一番酸性に傾いていた。

午後の部

(14)囘虫の少い農村の調査

著者: 水島治夫 ,   木藤壽正

ページ範囲:P.141 - P.142

 宮崎縣都城市一帶の小學校兒童の囘蟲寄生率は最低72%,最高100%に及んでいるが,宮崎市本郷南方國富小學校兒童のそれは平均21%に過ぎない。その感染率の極めて低い理由につき前述農村の實地視察をして次の如き面白い事實を認めた。この村の人には昔から「新しい生の糞便はきたないし,又肥料としても利かない。決して生肥は使うべきものではない」という觀念が徹底していて,糞便處理は一部は堆肥を混ぜ,一部は肥溜に貯溜腐熟せしめている。特に感嘆することは各戸にすばらしくりつぱな石造の堆肥小屋があることである。廣さはたいてい間口3間,奥行2間で石壁は高さ160cm位,厚さ20cm位,その上部1間位が板壁となつていて,屋根には瓦がふいてある。堆肥は厩肥,草,塵埃等を約20cm位に積み,その上に糞便をかけさらに之を繰返しておよそ石壁の高さにする。すでに醗酵の最盛期を過ぎた堆肥中の濕度を熱電計で測定したが低いもので攝氏44度,高いもので攝氏56度であつた。十分完成しぼろぼろになつた埋肥中には囘蟲卵を鏡檢し得なかつた。初期の醗酵熱が相當に高く腐熟するまでの時間が長いことから考えておそらく全部死滅するのであろうと推察せられる。
 もし全農家が生の糞便を全部堆肥にすれば最も上等な肥料を自給し得るのみならず,腸管寄生蟲卵をことごとく殺滅することができ,正に一石二鳥であると思われる。

(16)長野縣松本市外淺間温泉に於ける腸チフス流行の疫學的研究

著者: 福見秀雄 ,   小島三郞 ,   山本緊夫 ,   草間秀夫 ,   石丸隆治

ページ範囲:P.144 - P.144

(抄録未着)

(19)傳染性下痢症の傳播樣式に關する研究—新潟縣佐渡郡澤根町に於ける調査報告

著者: 山本繁夫 ,   石丸隆治 ,   横田強 ,   富澤純一 ,   福見秀雄 ,   小島三郎

ページ範囲:P.146 - P.146

(抄録未着)

(追加)

(14)のa 戰後熊本市學校生徒の寄生虫(特に囘虫)調査成績(第1報)

著者: 小栗一好 ,   小林和夫 ,   太田原幸人

ページ範囲:P.142 - P.143

 戰後,熊本醫大,衞生,細菌,藥理,病理の四教授連合して組織された熊本醫科大學寄生蟲病豫防對策研究會は熊本市衞生局保健課と協同して,約4萬の市内小學校兒童を對象として,寄生蟲撲滅の調査研究を開始したが,現在迄に得られた成績は次の如くである。即ち(1)檢便數 8407の中,囘蟲卵の檢出出來たもの5744で檢出率68.3%,(2)檢便成績を地域別,學校別に見れば市の中心地域は平均約62%,農村では90%に近く,郊外地域の學童ではその中間の率を示し,(3)市内小學校のみに就き調査票を以て學年別,性別に卵檢出率を檢討すると,學年別位の小範圍の年齢差では年齢的差異を示すに至らなかつたためか,有意の差異があるとは考えられない。又性別の差異も認められない。(4)市内に住居していて,自家菜園を作らないか,作つていても糞便肥料を使用せぬ家庭の子供に比べると,自家菜園を作つていて糞便肥料を使用する家庭の兒童では囘蟲卵檢出率が約10%近くも高率で,大體72-74%位を示している。

(20)のb 發疹チフス發疹熱の新診斷液に就て

著者: 山崎太郞 ,   鈴木敏雄

ページ範囲:P.149 - P.149

 Cox-Craigieに依りリケツチア・ワクチンを作製する際エーテル層とワクチン層との間に生ずる凝固蛋白を主體とする一見チーズ様の物質は從來用途なく廢棄せられたものであるが,此中には多數のリケツチア及び其抗原物質を吸着含有する事が想像せられる。余等はR. prowazecki竝にR. mooseriのワクチン作製時に生ずる該物質を超音波にて處理する事に依り微生均等浮游液に爲し,之を凝集原として發疹チフス患者血清及び發疹熱患者血清と凝集反應を試み次の如き知見を得た。
(1)發疹チフス發疹熱いづれの患者血清も其該當するリケツチアのワクチン作製時上記の如く處理した凝集原(診斷液)をより張く凝集した。

〔第2日〕11月13日(土)午前の部(9-12時)

(22)ヂフテリア豫防接種に因するアレルギー性疾患の集團的發生に就て

著者: 加藤光德 ,   富永慶順

ページ範囲:P.151 - P.152

 余等は衞生技術官としての任務に於て,昭和18年1月栃木縣那須郡那須村の池田小學校學童に對しジフテリア豫防接種を施行した際,總數195名中40名にアレルギー性疾患として,蕁麻疹の集團發生を認めた。患兒は一般に貧血に傾き,活動に乏しい貧しい學童で,年齡は,9歳から12歳,男子23名,女子17名で,蕁麻疹は接種後約1時間で發現,40分乃至60分持績,胸内苦悶,顔面浮腫,呼吸逼迫等を呈した。發熱は全く認められない。之を考按するに,地理的に該地は海抜400から600米の山間であること,季節的關係は冬季でああること,しかも氣象關係は吹雪の中を3粁から4粁のところを徒歩登校して後,直ちに接種を受けたこと等即ち本症例は注射直前の歩行距離寒冷竝びに疲勞等との關係あるものと認めるものである。

(23)BCG接種5ケ年の成績批判

著者: 加藤光德

ページ範囲:P.152 - P.152

 昭和18年より靑少年30萬人を對象としてBCG接種を行い,昭和22年を以て第一次5ケ年計畫が完了した。ツ反應延167萬人,BCG接種108萬人に及んでいる。其間にあつて各年次BCG接種上の重要,各年次のBCG陽轉率批判,ツ反應判定に對する態度,BCG連續4囘被接種者の非陽轉率,BCG瘢痕と陽轉との關係,結核死亡曲線に現われた最近3ケ年の傾向等を檢討したのである。特に問題となるものは毎年1囘4年連續接種に於て90%の非陽轉者の存在である。かゝる青少年の處置如何である。

(24)BCGワクチン亂切法接種成績(第1報)

著者: 岡田博 ,   不破博德

ページ範囲:P.153 - P.154

 吾々はBCGワクチン接種局所の膿瘍,潰瘍を主とする副作用發現率輕減の目的を以て亂切接種法を試みた。即ちBCG菌量1cc中20mg,60mg,80mg含有ワクチンを使用,對照としては前記ワクチンと同材料を以て同日製造の菌量1cc中0.4mg含有ワクチンの0.1ccを皮内法により接種,尚前記ワクチンは何れも製造後3日以内に使用せり。
 菌量20mg含有ワクチンは本年6月名古屋市村雲小學校ツベルクリン反應陰性學童732名に對し亂切法により接種,尚同日對照として112名に對し皮内法を施行,又60mg,80mg含有ワクチンは本年9月名古屋市吹上小學校ツ反應陰性學童189名及び188名に對し夫々亂切法により接種,尚同日對照として32名に對し皮内法を試みた。實施に當りてはワクチンを使用直前良く振盪し,之をツ反應用注射器に吸引,之より1滴を上膊外側皮膚上に滴下しその上より種痘刄を以て種痘の要領により1邊の長さ15mmの井型の亂切創1箇を作り種痘刄を以てワクチンを擦入せしむ。

(27)今夏流行の日本腦炎について

著者: 石橋卯吉

ページ範囲:P.155 - P.156

 本年度の日本腦炎の流行の發生經過を概説し,之を既往に於ける各年の流行を比較し,時期的,地域的の異同及び逐年的の變形を觀察した。又馬の流行性腦炎の流行について昭和22,23年の流行状況を比較し流行の地域差の著しい點を着眼し,人の腦炎流行との相關性について檢討した。
 本囘の發表は全國的資料の蒐集送中にあるので將來訂正補足する筈である。

(29)デング熱の研究 變性生病毒による豫防接種は何故有效であるか

著者: 堀田進

ページ範囲:P.158 - P.159

 デング熱病毒のマウス腦内接種を續けてゆくと,一定世代を經た後,病毒の人に對する起病性は消失するが,しかも免疫元性は尚殘存し,從つて之を用いて有效な豫防接種を期待することが出來る。この生病毒の有效なる所以を檢討する爲實驗を行つた。
 健康人に本生病毒(罹患マウス腦のタイロード液加乳劑)を皮内注射し,以後逐次的にヘパリン加血液および乳汁を無菌的に採り,之をマウス腦内に注射して發病の有無をみた。

(30)乳糜血清と梅毒沈降反應特にアミールアルコール前處置法に就て

著者: 小林唯次 ,   秋山昭一

ページ範囲:P.159 - P.160

 終戰後當研究所に於ては梅毒血清反應の檢査が漸増の傾向にある中に,第二次大戰前及大戰中に比し,乳糜血清の増加が注目された。元來乳糜血清は沈降反應重層法を以てする時は其成績の判定困難なる事は衆知の事實である。茲に於て余等は乳糜血清の處置に關し種々實驗した結果,些か得る所があつたので其の結果を抄録する。
 先づ各種有機溶媒を用いてその乳濁除去を試みた結果,アミールアルコール(以下AAと呼ぶ)による處置が最も優秀であつた。即ち乳糜血清の一定量を沈澱試驗管に採り之れにAAを1/3乃至1/4を注加し清拭せる拇子腹にて塞ぎ,強く上下に振盪すること十數囘後,3000廻轉15分乃至20分間遠心沈澱を行う事に依つて最下層に透明なる血清を分離することが出來る。この血清層より毛細管を以て吸取し型の如く沈降反應重層法(村田氏法)を行うのである。此の方法によつて陽性血清陰性血清のAA處置前處置後のものに就て實驗せるに,其の結果に於て殆んど一致の成績を得た。更に定量的測定沈降價の相關關係及AAによる非特異反應等を比較實驗したるに何れも其の影響を受けぬ事を認めた。

(追加)

(27)のb 昭和22年23年度に於ける日本腦炎流行發現に關する疫學的考察(前年度流行の影響)

著者: 北岡正見 ,   三浦悌二

ページ範囲:P.156 - P.156

 昭和22年には人腦炎が西日本の一部に發生したが,23年には主として東日本に發生した。22年に馬腦炎の流行のあつた高知香川鳥取岐阜千葉等では23年に流行が少く,昨年流行の少なかつた靑森,岩手に大流行し北海道にも流行が起つた。22年の罹患率を縦軸に,23年のそれを横軸にとつて縣單位に圖示すると人も馬もそれぞれ双曲線上に位置する。しかし山形,秋田,宮城縣下の馬腦炎は趣きを異にする。これはこの地方へ毎年多數の幼馬が購入されて來るためと思われる。人の罹患率が人口1萬につき0.5以下の場合はこの關係は明らかでない。それは撒布される病毒量が少い爲と思われる。
 馬の罹患率は人よりも100倍も高く遙かに發病し易いので,撒布病毒量が充分でない時には馬にのみ流行が認められ,人には起らない。病毒が張くなれば先づ馬に流行し,ついで人に流行する。もし馬が前年の流行で免疫になつていれば翌年は病毒が強くても人にだけ流行し,もし人も馬も免疫となつていれば新しく移入して來た馬にだけ流行することになる。

(30)のa 1.新潟縣下に於ける一般縣民のワ氏村田氏反應檢査成績

著者: 篠川至 ,   熊谷富義

ページ範囲:P.160 - P.160

總計 1065/34767……3.06% 男 529/17062……3.OO%女 535/16423……3.26%
地區別 上越地區125/3748……3.34% 中越地區289/11919…2.42%下越地區651/19100……3.41%

(30)のa 4.性病豫防展覽會の希望血液檢査

著者: 高澤邦輔 ,   熊谷富義

ページ範囲:P.162 - P.162

 昭和23年1月より7月まで縣下各保健所々在地性病展覽會を開催した時の成績次の如し。
 陽性者年齡別に見ると20-34歳迄の平均陽性率は5.8%,職業別に見ると工員の8%が最高で次いで無職,商業,事務員,官公吏,農業の順。

第2囘日本公衆衞生學會演題 午後の部

(32)葡萄状球菌性中毒に關する研究—第1報 蛋白練製品の細菌汚染度に就て

著者: 八田貞義 ,   宇都宮則久 ,   春日齊 ,   依田源次

ページ範囲:P.164 - P.165

 近次,細菌性食物中毒ははサルモネラ菌症と葡萄状球菌中毒症とに限定しようとする傾向がある。葡萄状球菌はもともと自然界到る所に存在するものであるから,このものが食品に附着増殖して中毒物質を産生する可能性は動物性の蛋白食品に於て大きいものと思われる。私達は魚類蛋白を主材とする所謂蛋白練製品が今日の主なる蛋白給源となっている現状に鑑み,これ等食品が如何程有害なる細菌例えば葡萄状球菌等によつて汚染されているかの状況を知るべく,衞生細菌學的な調査を行つた。なお人畜排泄物による汚染指標としての大腸菌群試驗をも併せ行つた。檢體としては家庭臺所と直結する市場乃至は個人店に於て販賣されている。半ペン,竹輪,サツマ揚,等を東京都廳食品衞生監視員諸氏の御協力を得て收去したものを用いた。
 實驗方法:—收去した檢體は食品別に先づ生理食鹽水を以て10倍稀釋の乳劑液となし,以下所定の如く稀釋して,普通寒天及び遠藤寒天に混釋,37℃に48時間培養した。遠藤培地は赤變菌の算定に,普通寒天培地は一般細菌數竝に葡萄状球菌の算定と葡萄状球菌株の分離に,0.5%乳糖ブイヨンは大陽菌群數の算定に供した。なお檢出大腸菌群の型別はIMVID-systemによつた。

(33)公衆浴場の浴水汚染に就て

著者: 豐川行平 ,   相澤憲 ,   有村義男 ,   西川滇八 ,   大場義夫 ,   菊池正一 ,   榊原士郞 ,   阿部溫男 ,   山本俊一 ,   野牛弘

ページ範囲:P.165 - P.165

 昭和23年10月東京都文京區の某浴場につき入浴人員と浴水汚染の状態をしらべた。檢水は開業直前から始まり,大體1時間毎に行ひ計11囘である。檢査項目は入浴人員,浴温,濁度,色度,亞硝酸性N,硝酸性N,アンモニア性N,蛋白アンモニア性N,鹽素イオン,過マンガン酸カリ消費量,蒸發殘渣,尿素,細菌數,大腸菌數,浴水の殺菌力の16項目である。浴人員 男532名,女653名で,最も入浴人員の多い時間は男18時及び20時,女は17時及び20時である。濁度,色度,鹽素イオン,亞硝酸性N,アンモニア性N,蛋白アンモニア性N,過マンガン酸カリ消費量,蒸發残査,尿素量等は人員の増すと共に増加する。唯,これらの中亞硝酸性N,過マンガン酸カリ消費量,蒸發殘査はある時刻が経過すると減少の傾向を示した。又,反應は酸性に傾く。浴水の殺菌力をみるため大腸菌をいれて浴温44-45℃に置くと,時間の経過と共に減少するが,最後に近い浴水では女浴は減少するが男浴の方は5時間頃まで減少を見せず,むしろ増加の傾向を示したのは不思議である。

(35)繁用醫藥品の細菌汚染度及び有害物質に關する研究 第2報 發熱物質について

著者: 八田貞義 ,   靑山好作 ,   丹治園枝 ,   田中萬千子

ページ範囲:P.167 - P.168

 注射藥を靜脈内に注射した際惡感,戰慄,發熱等の副作用の見られることは屡々經驗するところで,その原因として,主に使用藥品の不純,雜菌混入,アンプレの品質不良,アンプレの洗滌不充分等が擧げられて來たが,Billuroth,Bergmann,Seibert,Co tui小林及び浦口氏等はいづれもその原因の一つに微生物が大きく關係していることを指摘している。
 吾々は先づ葡萄糖よりの分離菌について,家兎に對する發熱試驗を行つてみた。好氣性,放線状及び絲状菌は20%葡萄糖液に7日間,嫌氣性菌は肝肝ブイヨンに10日間培養後,細菌の場合はChamberland濾過液で,絲状菌の場合は濾紙で濾過後體重約1.5kgの家兎に體重1kgに對して5cc(嫌氣性菌は3cc)の割合に耳翼靜脈より注射した。體温は注射直前及び注射後1時間おきに4囘測定した。發熱性の判定は體温上昇,降下共に0.5℃迄は發熱陰性,0.6℃-0.9℃迄は發熱疑陽性,1℃以上は發熱陽性とした。

(36)硫酸及び過燐酸石灰製造工場に於ける豫防醫學的研究

著者: 岡田博 ,   榎本敏雄 ,   舘野眞 ,   須永寬 ,   不破博德

ページ範囲:P.168 - P.170

(1)環境醫學的に先づ問題となるのは過燐酸工場の全工程と硫酸工場の半部に於ける發塵であつて,塵埃濃度は概ね1cc中800の危險度以上で粒子の大きさは5μ以下が90%を占める。次に硫酸工場の後半部に於ける亞硫酸瓦斯の漏出も問題である。又同工場の焙燒爐側路の上中段の副射熱も問題となるが其處えは稀れにしか工員は登らない。原料である硫化鑛の中にはSiO2は6%弱含まれているが燐鑛石の中にはない。
(2)障碍として目立つのは,過燐酸工場に於ける所謂塵肺と硫酸工場の慢性氣管支炎樣症状である。塵肺は過燐酸工場では61%で硫酸工場の前半部にも11%に見られるが,共に強度のは甚だ少ない。慢性氣管支炎は硫酸工場では22%ある。塵肺と結核症との合併は過燐酸工場に1名のみ。又結核症も特に多くはない。唯過燐酸工場に心臓異常が4.8%にある。塵肺度と肺活量及赤沈値には著るしい相關關係を見ない。自覺症状としては兩工場共疲れが特に目立ち硫酸工場ではせき,たんを始め呼吸器粘膜の刺戟症状が著るしい。輕度の塵肺の出現や慢性氣管支炎症状は概ね2年程で著るしくなり,此頃に可成りの工員が辭め所謂陶汰現象を示す樣である。血液所見としてい兩工場共病的顆粒(Momsen染色)が20-30%を示し,且輕度の貧血と血清比重(硫酸銅法)の平均0.0021の低下がある。尿のUrobilinogenは約60%に陽性を示す。

(37)京都西陳機織工の住業生活の衞生學的調査(第1報)

著者: 津田長治

ページ範囲:P.170 - P.170

 京都市に於ける家内工業の重要な位置を占める,"西陳織"の機織工を對象として,その生活状況及び仕事場の環境を調査研究し,その勞働條件の改善に資せんとするもので,今囘の報告は昭和22,23年,7月,8月の晴天日の午後2-4時に行つた測定結果である。調査總戸數104の内,室内濕球温度32.0℃以上のもの32.7%,濕球温度28.0℃以上のもの5.7%,濕度60%以上のもの53.8%,室内乳カタ率5.0以下のもの%,濕カタ率12以下のもの47.0%,室内不感氣流0.5m/sec以下のもの85.5%,仕事面の明るさ50Lux以下のもの40.5%,睡眠時間8時間以下のもの51.0%,仕事時間8時間以上のもの88.2%,10時間以上のもの49.0%,寝室1人に對するタタミ數3帖以下のもの72.2%,2帖以下のもの40.1%となつている。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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