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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生5巻8号

1949年06月発行

雑誌目次

論説

消化器傳染病とくにセキリの減少について

著者: 川畑

ページ範囲:P.435 - P.437

 わが國におけるあらゆる傳染病が,戰後しだいに減少しつつあるのは周知の事實である。
 これが原因については各様の推測が行われているようであるが,その主なものは究極において生活の安定と社會秩序の回復に歸せられるであろう。

綜説

生活物資と人口との均衡方策

著者: 戸田正三

ページ範囲:P.438 - P.447

はしがき
 日本人が此環境に,平和で,健康で,そして文化的な最低限度の生活を營み得る基準を,一は主要な生活物資と,他は最近に於ける人口動態の趨勢とから概測して,平和人口の恕限度を假定した。即はち,先づ現住人口に對する主要食品及び嗜好品の需要量と不足量を概計し,加うるに米食の將來性と食生活様式の改善の必要を述べ,また衣料や住居の不備不足と合せて,生活物資の不足に對する補給力の可能の限度を概測した。次で最近に於ける人口増加の趨勢に鑑みて,之れを放任するの結果は,昔Malthusの豫言が近き將來に於て我國に發中することを憂ひ,人口の調節の必要性と産兒制限の應急方策につき所感の概要を記した。

原著

伊豆三宅島三宅村に於ける百日咳流行に關する觀察

著者: 水野俊夫 ,   室橋豐穗

ページ範囲:P.463 - P.472

緒言
 離島に於ける百日咳の爆發的流行に關する報告は極めて少く,手近の文献を見るに,Stkilda島に於ける流行(Stallybrass1))及びFaroe島に於ける流行(de Rudder 2))の記載がある以外には,近年我國に於て伊豆御藏島の流行に關する報告3)が爲されたにすぎない。然るに昭和22年4月,測らずも伊豆三宅島に百日咳の大流行があるとの報知を受けて直ちに渡島し,疫學的調査を行うと共に,全島一齊に豫防接種を施行する機會を得たので,その成績を報告する。

最近における寄生蟲の諸問題・2 學術研究會議傳染性疾患研究特別委員會寄生蟲科會報告

蛔蟲劑の效力批判と蛔蟲劑の改良

著者: 江口季雄

ページ範囲:P.448 - P.450

 本研究は次の諸項目に就て實施した。
1.蛔蟲劑效力批判基準の考案
2.既成蛔蟲劑の效力批判
3.アルキールレゾルシンの刺戟性除去
4.蛔蟲劑の新藥としての蛋白酵素の検討
 研究成績概要

驅蟲劑の研究

著者: 森下薫

ページ範囲:P.453 - P.454

サントニンの用量と驅蟲效力との關係
 サントニンは極めて少量を以つて驅蟲效果をあげ得る點は,到底他の藥劑の追從を許さない所であるが,往々その效果が不定であることがあり,時に全然排蟲を見ないことがある。これには(イ)驅蟲對象に於ける感染度が關係する他,(ロ)その用量について檢討を要するものと思われる。
・サントニンの用量として指示されるものは一般に少なきに過ぎるのではないか。このことは既に云われて居る所であるが,余らは階段的に種々な量を使用して,その翼の驅蟲效力を制定した。本實験に於ては排蟲状況を正確に知るため,投藥後2週間(1部は10日間),排便を悉く採取し,排蟲數を算し,その雌雄別・體長・體重・變性の有無を記録し,且つ毎便について檢卵し,更らに3週後に檢卵を行つて完全排蟲を判定した。その成績を一表とすると次の如くである。

肺吸蟲の研究

著者: 宮崎一郞

ページ範囲:P.455 - P.455

1.大平肺吸蟲と小型大平肺吸蟲の分布調査
 これまでの調査で,前者は熊本縣の球磨川と緑川,鹿兒島縣の川門川,宮崎縣の大淀川,三重縣の長良川,後者は上記川門川と大阪市の新淀川の諸河口に分布することをたしかめている。本年度は福岡縣の矢部川,筑後川,遠賀川,今川,山國川,大分縣の驛館川の河口をしらべたが,全部陰性であつた(方法は河口にすむベンケイガニとクロベンケイの肝臟から,被嚢幼蟲をさがしたのである)。

フイラリアの研究

著者: 長花操

ページ範囲:P.456 - P.458

 昭和23年7月中に鹿兒島縣下の2ケ所(肝屬郡新城村及び川邊郡笠砂町)に出張し兩地に於ける住民に就いてミクロフイラリアの調査をした。調査方法は上記住民に就て夜間(午後9時以後)耳朶より採血,各人より厚層標本2個(拇指頭大のもの)を作り染色,檢鏡した。其の結果は次記の通りである。

Spelotrema屬吸蟲とSchistosoma屬吸蟲との病原學的比較研究

著者: 尾形藤治

ページ範囲:P.459 - P.462

 Spelotrema屬吸蟲は本來海鳥寄生のものと思惟されるが,本屬の1種S. brevecaecaが比島に於て人畜に寄生し,注目すべき病害を示している1例がTubangui及びAfricaの兩氏によつて報告されている。それによると患者患畜は心臟の異常肥大及び擴張,花冠状血管の硬化,肺臟の膨張及び充血,肝臟,脾臟,腎臟の充血,腦膜の出血等を來し,心筋,腦及び脊隨に蟲卵の介在を認めている。
 以上の症状はSchistosomiasisのそれと酷似するものがある。而して本群吸蟲は本邦産海鳥類にも見られ,その中間宿主は半鹹水産甲殼類(えび,かに)及び貝類等であつて,之が人畜への感染の惧れも充分考えられるので,本研究者は此の種吸蟲の正體を明かにし,人工感染によりその症状を日本住血吸蟲症と比較研究を試みんとして表題の内容による研究を續行し來た次第である。

研究と資料

片山地方に於ける淡水産魚類を中間宿主とする吸蟲類被嚢幼蟲の研究

著者: 三好浩

ページ範囲:P.473 - P.476

緒論
 近時我が國に於ける寄生蟲學に關する知見は目覺しき進歩發達をみ,就中吸蟲類に就ては明治の後期1904年桂田博士に依り日本住血吸蟲の發見以來肝臟ヂストマ,横川吸蟲等重要なる吸蟲類の發育史陸續として發表せられ,幾多學徒の精進愈々顯著なるものがあつた。
 斯くて吸蟲類の人體感染に關する豫防對策は,自ら釋然たるものがあつたが,這般の長期戰禍に因る我が國食糧情勢は,吸蟲類を中間宿主とする淡水産魚類をも汎く好んで食用に供せらるる状況になり,若し夫れ是等魚類を不完全なる調理に依り食膳に供せば容易に感染し,因て以て有害吸蟲類の蔓延することは亦當然首肯し得る所である。

月島地區小兒に於ける麻疹罹患に關する觀察

著者: 室橋豊穗

ページ範囲:P.477 - P.482

 昭和22年は全國的に麻疹の大流行が見られた。本調査の對象となつた月島地區は,戰時中一部に建物疎開のあつた以外には戰災を被つて居らないので,戰後著しく人口が増加し,從つて小兒の人口密度も著しく高く,麻疹の流行も甚だ激烈であつた。
 1.觀察方法。觀察の對象としては全地區に居住する,昭和16年1月以降出生の全小兒(年齡滿6年6月未滿)を選び,調査方法は,可及的正確を期する爲に,凡て保健婦及び余等の全世帶に對する家庭訪問に依つた。之は相當の苦勞を伴うが,罹患状況,合併症の状態を詳細に聞き得るのみならず,また育兒榮養,療養等の諸指導を併せ行ひ得る利益があるためである。調査期日は昭和22年6月末現在。調査對象は総數2453名で,その年齡構成は次の如くである。

勞働衞生行政のあゆみ

3.珪肺の對策

ページ範囲:P.484 - P.484

 あれだけ世界的な問題となつた珪肺が,日本では本腰で取上げられていなかつたのは,今から考えれば全く恥かしい話で,ひとりよがりの文化國家,世界の田舍者といわれても仕方がない。勞働衞生の主題目の一つとして珪肺が取上げられたのは,むしろ當然。で,第1着手として昨年から本年3月まで金屬鑛山の珪肺に焦點を合せて次の様な對策を實施し,4月以降はこの線に沿つて一層強力に方策を進める手筈になつている。

文部省ニユース

—指定統計第15號學校衞生統計—昭和23年度學校身體檢査の結果について(昭和24年4月)

著者: 文部省

ページ範囲:P.485 - P.487

 戰前戰後を通じてわが國の學徒の體位はいかに變ぼうしたであらうか。そして現在どんなにあるだろうか。終戰後は徴兵檢査も國民體力法による體力検査もなくなつたので,國民の體位を知る大數の統計としては學校身體檢査の結果が唯一の資料となつた。そこで文部省では昭和23年度から學校身體檢査結果の統計法による指定統計とし,學校衞生統計調査を實施したのである。今回各學校,都道府縣,市町村の關係者の協力により,全學徒1,762萬人のうち1,598萬人の多數に上る學徒の計測檢査の結果がまとまつたので,とりあえずその要點を參考に供する次第である。
 第1表は幼稚園から大學に至る學生,生徒,兒童及び幼兒の年齡を通じて身長,胸圍,體重の平均及び標準偏差を掲げ,第2,3,4表はそれぞれ小學校兒童,新制中學校生徒,新制高等學校生徒の平均及び標準偏差を掲げた。最後に參考として明治35年以降3年ごとの全國統計を掲げたがそのうち昭和15年度以降22年度に至る間は全國統計の資料を缺くので掲げていない。第1表ないし第4表の數値によつて身長,胸圍,體重の年齡別,男女別に發育の過程を知ることができるが,この數値を正しく判斷するためには明治以來の各年度別の數値からその位置を知る必要がある。前述のように昭和14年度以降戰時中から戰後にに至る間は全國統計を缺くが幸いに標本調査による資料があるので,全國統計とこの標本調査の結果とをあわせて觀察すると概略次のとおりである。

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海外ニユース

ページ範囲:P.488 - P.488

1.ロツキー山紅斑熱に對するクロロミセチン(Chloromycetin)
 バルチモーア市メリアンド醫科大學Maurice C. Pincoff氏はWashington陸軍軍醫學校に於て昨年11月Chloromycetinがロツキー山紅斑熱に有効であると發表した。氏は同病15例の治療結果を報告した。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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