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特集 公衆衛生50年の回顧と展望
衣服・住居をめぐる環境衛生の回顧と展望
著者: 庄司光1
所属機関: 1京都大学
ページ範囲:P.33 - P.34
文献購入ページに移動衣服は気候風土,生活習慣に合わせて長い間に創られ,それぞれの国,地域に独得なものである.衣服の目的には衛生的な役割と装飾などの社会的役割がある.衣服の衛生的な役割を果たすためには被服材料として気候調節,身体の保護,作業能率増進などの面から種々の性質が要求される.また衣服の健康発育に及ぼす影響としては衣服重量,衣服圧,被服加工処理剤が問題になる1).従来の衣服には種々の欠陥があったが,敗戦後には新しい繊維材料の出現と生活環境の改善によって,軽くて保温性があり,動作が楽にできる被服材料が得やすくなり,また冷暖房の発達により衣服による気候調節も楽になった.しかし,他面,被服加工処理剤による皮膚障害が起こった.
昭和時代,日本の満州国,南方への進出により陸軍被服廠が軍服に関する研究,京都大学の戸田正三教授などにより満蒙の防寒服,南方の防暑服の研究が行われた2,3).被服を着ることによって,その下に形成される局所気候を衣服気候という.昭和7年頃,京都大学の緒方洪平氏(後の京都府立医大教授)によって衣服気候の研究がされ,人体が快適と感じる衣服気候の条件が明らかにされた.
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