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特集 たばこと健康
喫煙と健康障害
著者: 富永祐民1
所属機関: 1愛知県がんセンター研究所兼疫学部
ページ範囲:P.224 - P.229
文献購入ページに移動喫煙は近年,重要な公衆衛生上の課題になりつつある.喫煙は飲酒などと共に嗜好の一つであり,長い歴史を有し,公衆衛生従事者の多くも喫煙を嗜好とし,社会的にも"正常なこと"(socialnorm)とみなされていたために,公衆衛生上の課題として取り上げられていなかった.しかし,多くの疫学的研究,実験的研究により喫煙は種々の健康障害をもたらすことが明らかにされてきたこと,喫煙は喫煙者自身の健康を障害するのみでなく,受動喫煙により周囲の非喫煙者の健康にも悪影響を与えることが明らかにされてきたことなどにより,喫煙は公衆衛生上の重要な課題の一つとなってきた1〜7).これは世界的な傾向であり,WHOも1980年の世界保健デーのテーマに喫煙対策の推進を取り上げ,「喫煙か,健康か,選ぶのはあなた」("Smoking or Health, the Choice is Yours")のスローガンを掲げ,世界各国の政府に喫煙対策の推進を呼びかけた.わが国でも厚生省,地方自治体などの公共団体や関係団体,あるいは市民グループが喫煙対策を推進するために,講演会,シンポジウム,ポスター・パンフレットの作成,作文コンクール,弁論大会などの種々の行事を展開し,喫煙対策に関する世論が盛り上がった.日本公衆衛生学会でもWHOの呼びかけに応じて,1980年の千葉における第39回日本公衆衛生学会総会では「喫煙と健康」が公衆衛生学会史上初めてシンポジウムの主題として取り上げられた8).
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