公衆衛生50巻4号

1986年04月発行

調査報告

台湾観光旅行コレラ罹患2事例の疫学的検討

著者： 松本泰和¹ 大野良之² 山田豊範¹ 佐伯榮壽¹

所属機関： ¹厚生省名古屋検疫所 ²名古屋市立大学医学部公衆衛生学教室

ページ範囲：P.281 - P.287

●はじめに
　昭和59年1年間のわが国のコレラ発生（表1）は，17件92名である^1）．国内発生例（輸入例による二次感染を含む）は4件4名，輸入例は15件88名である．このうち台湾からの輸入例が，6件77名（国内二次感染2件2名を除く）で最も多い．特に，10月31日発生例と11月16日発生例が目立つ．前者は，10月27日，台湾から成田空港へ帰国した旅行団での発生である（以後成田空港事例という）．後者は，11月15日，台湾から大阪空港へ帰国した旅行団での発生である（以後大阪空港事例という）．この両事例を疫学的に検討し，コレラ常在地域からのコレラ侵入防止策に資するのが本稿の目的である．