icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生50巻5号

1986年05月発行

文献概要

発言あり

いじめ

著者:

所属機関:

ページ範囲:P.289 - P.291

文献購入ページに移動
競争社会から共存の社会へ
 「いじめ」の構造はまだ明確にされてはいないが,かなり複雑であることは容易に想像できる.青少年に関連した社会病理現象としては,かつては非行が中心であったが,時代が進むにつれて非行に家庭内暴力が加わり,それが家庭内から学校内における集団的暴力に拡大してきた.さらに,その性質もきわめて陰湿なものに変化してきていることが報告されている.
 「いじめ」は病める社会の一現象であるが,その表出の仕方は習慣病といわれる成人病と酷似している.慢性疾患の病理過程が人の日常生活の中で徐々に進行していくのに似て,子供達が成長していく過程で,親たちの価値観に舵をとられながら人生が方向づけられていく.教師も子供達の能力を発見し,それを伸ばしていくという教育本来の目的を忘れて,一流高校,一流大学への進学を最大の目標にした知識偏重の教育に全力投球する.一流大学から一流企業や上級官庁への就職,あるいは高い社会的地位が約束され,その結果幸福な人生が送れるという期待がある.その期待が確かに実現できる可能性が現実にあるから,全国の青少年達が受験競争に挑戦するのであり,また親も教師もしった激励するのである.こうした教育の中でついていけない子供に,本来あってはならない「落ちこぼれ」というラベリングがなされ,学業成績によって序列化されていく.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら