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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生50巻6号

1986年06月発行

文献概要

衛生公衆衛生学史こぼれ話

27.群集中毒と人毒

著者: 北博正12

所属機関: 1東京都環境科学研究所 2東京医科歯科大学

ページ範囲:P.372 - P.372

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 産業革命以降,人間が室内に長時間滞在する機会が多くなった.事務所,学校,劇場,交通機関等々.寒い季節には窓や扉が閉ざされ,密閉環境に長時間滞在する機会はさらに多くなった.
 このような場合,気分が悪くなり,頭痛,吐き気などの症状があらわれ,当時は群集中毒(crowd poisoning)と称し,この空間中の空気に毒物が存在するのではないかと考えた.ひどい口臭や腋臭などは,思わず呼吸が止まってしまうほどであるから,このように考えるのも無理はない.フランスの有名な生理学者ブラウン・セカール(Brown Séquard 1817〜1894)はこれに着眼し,大量の呼気を集め,化学操作を加え,ついに微量の物質を抽出し,これを動物に注射したところ死んでしまったというので,この物質を人毒(Anthropotoxin)と命名し,人々は大いに恐れたが,追試の結果だれも人毒を取り出すことができなかった.筆者の高校時代(大正末から昭和のひとけた時代),結核の大家として有名だった某大先輩の著書にはまだ人毒が登場し,その対策として換気をよくするよう教えていたのを思い出す.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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