公衆衛生52巻12号

1988年12月発行

調査報告

喫煙婦人の自覚症状と禁煙対策

著者： 渡辺登¹²

所属機関： ¹国立精神・神経センター精神保健研究所 ²厚生省保健医療局精神保健課

ページ範囲：P.851 - P.854

文献概要

●はじめに
　喫煙，ことに紙巻たばこ喫煙は肺がんのみならず，口腔がん，食道がんなど，多くのがんや慢性気管支炎，肺気腫，虚血性心疾患，胃・十二指腸潰瘍，肝硬変，不妊，分娩異常など諸疾患の危険因子であることが次々と明らかにされた^9）．これらの知見をもとに，1988年4月7日には世界保健機構（WHO）の提唱で初の「国際禁煙デー」が開かれ，各国は足並みをそろえ反喫煙キャンペーンや禁煙運動，たばこ販売・宣伝の自粛をするよう図った．
　わが国の成人喫煙率は男性では著しく低下しているものの，一方，女性では下げとどまり，しかも20歳代では逆に増加傾向さえ認められる^12）．女性は妊娠出産や育児にかかわるため，喫煙女性の吸い込むあるいは吐き出す煙が，次代を担う胎児や子どもの健康に多大な悪影響を及ぼす可能性がある．