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特集 公衆衛生の課題と展望
母子保健
著者: 長岡常雄1
所属機関: 1東京都衛生局母子衛生課
ページ範囲:P.150 - P.152
文献購入ページに移動昭和60年は母子保健に携わる者にとって感慨深い年であった.それは,日本における乳児死亡率が出生数1,000に対し5.5となり,世界最低となったと考えられたからである.昭和25年当時の乳児死亡率は60.1であり,欧米諸国の2倍以上であった.それがこの35年間に10分の1以下と急速に改善して来たのである.この間,母子保健に関しては種々の対策がとられて来た.昭和12年に保健所法が制定され,母子保健が結核予防とともに保健所の重要な事業とされたのをはじめとして,昭和22年には,児童一般の健全な育成と福祉の積極的増進を基本精神とする児童福祉法が制定され,この中で妊産婦・乳幼児の保健指導や未熟児対策,あるいは三歳児健康診査など母子保健の施策が順次整備されて来た.
昭和40年には母子保健法が制定され,母子の一貫した総合的な対策がよりきめ細かく行われるようになり,ここ数年では新たに神経芽細胞腫の検診やB型肝炎母子感染防止事業が開始されている.また従来の未熟児や結核児などに加え,悪性新生物や心疾患などの慢性疾患児に対しても医療費助成制度が拡大されるなど,医療給付の面でも制度の充実が図られて来た.
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