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保健行政スコープ
在宅医療の環境づくり
著者: 中島正治1
所属機関: 1厚生省健康政策局総務課
ページ範囲:P.360 - P.361
文献購入ページに移動近年,在宅医療や在宅ケアというテーマが,非常に多く取り上げられるようになってきた.医療,看護,介護,福祉,老人問題等,様々な角度からこれらの話題が議論されている.こうした議論の中身はわが国においてこの分野にどのような問題があり,これからどうしていくべきかということであるが,その主たるテーマはどちらかというと在宅ケア,つまり家庭において病人または寝たきり老人をどうケアしていくか,そのマンパワーや技術,あるいは社会システムの問題のほうにあり,在宅医療としていわゆる医学的治療を自宅で展開していくというところまでは必ずしも議論が進んでいないように思われる.しかし,例えば,慢性疾患で定期的な診療と投薬や指導を必要とするようなケースや,寝たきり老人に対してじょく瘡やリハビリに関する看護や指導を行うような場合は,通常,在宅ケアという概念の中で医療も含めて考えられているように思われる.
つまり,現在のところ,在宅医療と在宅ケアということばは未分化な状態で使われており,実際上も各々の行為が,医療なのかケアなのか分かち難い場合も存在する。更に,こうしたサービスを提供する形態の上からも,わが国では欧米ほど,職種の分担が進んでおらず,例えば,訪問した保健婦や看護婦が,介護や身のまわりの世話を実際に行う状況も存在する.医師が直接往診し,医療を行う場合を除けば,在宅医療と在宅ケアの概念は非常に漠然と使われているように思われる.
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