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特集 現代の食生活
世界の食糧問題と日本
著者: 三浦洋子1
所属機関: 1千葉経済大学
ページ範囲:P.470 - P.474
文献購入ページに移動アメリカはわが国に対して1982年から始まった日米農産物交渉の場で,オレンジ,牛肉の自由化を要求した.1984年,両品目の輸入枠を段階的に拡大していくことで交渉は妥結した.1986年,RMA(全米精米業者協会)が自国の過剰米処理のため,経済摩擦がらみでコメの市場開放を要求してきた.また1987年,アメリカはわが国の残存輸入制限22品目のうち,12品目の自由化を訴えてGATTに提訴した.このうち落花生と雑豆を除く10品目が,GATT規約違反であるとしてクロと裁定された.現在,わが国はアメリカからオレンジ,牛肉の自由化を迫られ,GATT裁定にまで持ち込まれ,自由化を余儀なくされている.
わが国の農産物輸入は年々拡大の一途をたどり,現在211億ドル,総輸入額の14%を占め西ドイツ,アメリカと並んで世界最大の農産物輸入国となっている.今後円高メリットによって輸入が更に増え,この数字は更新されるであろう.他方,水産物に関しては乱獲と汚染による枯渇を防ぐため,沿岸200カイリ(海里)までの海域を海洋資源の利用につき,沿岸国に主権的権利を認めようとする動きが世界の主流となっている.これが200カイリ問題である.わが国はこれによって捕獲領域を縮小せざるをえない立場に追い込まれ,養殖と輸入の拡大に方向を転換してきている.
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