icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生52巻7号

1988年07月発行

文献概要

公衆衛生人国記

福井県—福井県における公衆衛生の先駆者,笠原白翁

著者: 大井田隆12

所属機関: 1元福井県厚生部保健予防課 2現厚生省健康政策局計画課

ページ範囲:P.501 - P.503

文献購入ページに移動
 福井県に赴任(昭和60年4月)した直後に大野城(福井県大野市)へ出かけるチャンスを得た.その城内に並べられた資料は,幕末の大野藩の偉大さを想像させるものであった.わずか4万石の小藩が蘭学の学校を開き,大坂より適塾の塾長伊藤慎蔵を,大野のような雪深い山中に招いたのであった.当時の有名なインテリ,伊藤慎蔵を招くことができた大野藩も偉大であるが,伊藤自身の決心にも驚くものがある.これにより全国各地から大野に俊才たちが集まり,蘭学が大いに栄え,それは幕末の奇跡であったと考えられる.
 このように幕末の福井は,大野藩だけでなく福井藩も含めて,日本の医学史上大きな刺激を与えたのである.その中で特に公衆衛生上の先駆者を考えるなら,越前福井の医師笠原白翁を挙げることができると思う.白翁は幕末,種痘を広めるのに貢献した代表的な人である.白翁は種痘を広めるに当たり,藩主松平春獄に嘆願書を提出したりして多くの努力を重ねた後,佐賀藩で成功した種痘の同苗を福井にもたらすことができた.これによって福井ばかりでなく,多くの地域の多くの人命が救われたのである.今でこそ天然痘は地球上から無くなってしまったが,当時は最大の伝染病であった.致死率が高く,治ゆしてもみにくい「あばた」を残したのである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら