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特集 労災医療と公衆衛生
職業病の認定と補償
著者: 内田勝久1
所属機関: 1労働省労働基準局補償課職業病認定対策室
ページ範囲:P.108 - P.112
文献購入ページに移動わが国における労働者災害補償に関する法制は,沿革的には,民事法上の整備をまたず,民事上の損害賠償法の発展という経過をたどらず,取締法規ないし慈恵的政策的立法として始まったといってよい.災害補償法制として形を整えたのは,明治30年代の産業革命期を過ぎる頃からであり,現行制度の前身として体系をもつに至ったのは,昭和に入って労働問題が深刻な様相を呈し,本格的な労働政策が要請される時期に当たっている.その後,現行の労働者災害補償制度が創設されたのは,太平洋戦争後の昭和22年4月,労働基準法と同時に労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という)が公布され,同年9月から施行されるに至ってからである.
業務上疾病について,法律においての位置づけからみると,一般の業務上の災害と異なり,業務に内在する有害因子を徐々に受けて発症するなど,労使双方に有害因子の認識,または,その有害因子に起因する疾病であることの認識がないため,ともすれば災害補償に関する権利義務の存否が不明確になったり,労災保険給付の請求権の存否に疑問を抱くような事態が生ずるおそれが予測されたりしたため,これらを避けるために労働基準法第75条第2項において業務上疾病の範囲を命令で定める旨を規定し,これをうけて労働基準法施行規則第35条に定めた.
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