原著
喫煙習慣と社会心理的要因
著者:
泊惇1
柳橋次雄1
脇阪一郎1
山元郁子2
竹迫佳代子2
岩崎修子2
河野祐子2
福永多恵子2
八尾聡美2
所属機関:
1鹿児島大学医学部公衆衛生学教室
2鹿児島大学医学部付属保健婦学校
ページ範囲:P.133 - P.139
文献購入ページに移動
喫煙が健康に及ぼす影響に関しては疫学的研究や臨床生理学的な立場から多くの研究報告がなされ,呼吸器系疾患や循環器系疾患の発症のリスク要因として寄与していることが明らかにされてきている1〜3,5〜7).その結果,WHO等を中心とする喫煙による健康障害を軽減させるための喫煙コントロール対策が推進され16,17),その対策が反映された一部としてわが国においては,喫煙人口割合の減少傾向が認められてきている.すなわち,昭和41年においては男性83.7%,女性18.0%であったものが,以来漸減傾向を示し,昭和61年における喫煙人口の割合は男性で62.5%,女性で12.6%にみられるごとく,特に男性の喫煙人口の減少が顕著にみられる11).しかしながら,わが国の死因別死亡率をみたとき,悪性新生物のなかでは近年胃癌の減少に対し肺癌および心疾患の死亡率の増加がみられることは,喫煙の周囲の人々への影響としての受動喫煙2,3,7,18)の健康影響と相まって,喫煙が肺循環系疾患発生のリスク因子として重要な役割を担っていることを示している.
また,従来からの喫煙の健康影響を直接的に生体影響として言及することに加え,肺循環器疾患発生の予防の一環として喫煙及び禁煙を保健行動の視点8,10,15)からとらえることは,喫煙コントロール対策を検討するうえで有効な手段の一つと思われる.