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原著
脳血管疾患患者の自宅復帰に及ぼす社会生活因子の影響
著者: 中村桂子1 荒記俊一1 二木立2 林泰史3 新美まや3 戸倉直実4
所属機関: 1東京大学医学部公衆衛生学教室 2日本福祉大学社会福祉学部 3東京都老人医療センターリハビリテーション診療科 4代々木病院理学診療科
ページ範囲:P.427 - P.432
文献購入ページに移動わが国の65歳以上の在宅または入院の"ねたきり老人"は1984年に49.5万人であり,このうち約30%は脳血管疾患が原因とされている13),特別養護老人ホームに入所中の者を含めた"ねたきり老人"総数は1985年に約60万人と推定され,今後増加して2020年には160万人から190万人になると予測されている12).これに伴い脳血管疾患に罹患した"ねたきり老人"数も増加するので,"ねたきり老人"に対するサービスシステムの整備を考えるためには,特に疾患を限って脳血管疾患患者を対象として,必要な医療・保健・福祉サービスシステムを検討することが重要である.
高齢の脳血管疾患患者では,「安全で円満な家庭復帰」がリハビリテーション医学上の重要な目標とされており7),家庭復帰の有無は患者の社会的予後の適切な指標のひとつと考えられる.家庭復帰に関するこれまでの諸研究は,患者の退院先に注目して分析を行っている.Lehmannら14)の先駆的な研究に始まり,二木21),杉浦ら29)およびSillimanら27)により,移動能力レベル別に自宅への退院率が異なり,レベルの低い患者は自宅への退院率が低いことが示されている.二木21)および筆者ら17)は,自宅への退院率が最も低い「全介助」を要する患者が自宅へ退院するためには,日中介護者1人の他に補助的介護者が必要であることを示した.
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