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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生54巻10号

1990年10月発行

文献概要

現代の環境問題・7

土壌汚染—重金属等による土壌汚染

著者: 森下豊昭1

所属機関: 1筑波大学応用生物化学系

ページ範囲:P.693 - P.696

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 重金属等による土壌汚染の問題を,人間を含む動物の健康障害の側面からとらえると,次の三つの類型に分けて考えることが出来る.すなわち,第一には主として自然的要因によって生じる土壌—植物—家畜系における微量元素の過剰あるいは欠乏の問題であり,第二には,鉱毒被害に代表されるような局地的な土壌—作物—人間系における高濃度汚染の事例であり,第三には,地球規模の広域汚染につながる例ともいえる,人間活動の集中した地域でのバックグランドレベルの汚染の進行である.具体的な事例の紹介を含めてその現状と問題点を探ってみよう.
 1935年E. J. Underwoodによって,ウシやヒツジの喰わず症の原因が,コバルト欠乏による生理障害であることが明らかにされた.その地域に生育している草類には何の影響も見られないのにコバルト濃度が低く,それを食した家畜の反すう胃の微生物がコバルト欠乏によってビタミンB12の合成を阻害され,家畜が食欲不振になり痩せ衰えてしまう.その後,アルカリ土壌地帯でのモリブデン過剰による被毛退色〜不妊症の事例が明らかになり,また,セレニウム集積植物の摂食によるウシの障害の事例などが良く知られている.このように,土壌の母材の特異性,土壌条件,特異な集積植物などによって,微量元素の過剰あるいは欠乏による家畜の健康障害が生じる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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