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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生54巻12号

1990年12月発行

文献概要

特集 臨床疫学

臨床における疫学の意義

著者: 福井次矢1

所属機関: 1佐賀医科大学総合診療部

ページ範囲:P.809 - P.812

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 従来より,多くの医師,とりわけ臨床医にとって,疫学と臨床医学の間には学問的にも実務の上でも越え難いほどの大きな断絶があるような印象が強い.この傾向は決してわが国だけに特有のものではなく,先進国に共通のものといってよい.Dubosのいう医療の発展段階に従うなら1),土木や交通手段の整備,環境衛生の整備から始まり,予防接種などの非継続的医療,継続的な個別医療を経て,高度な医療機器を備えた大規模な施設での医療の段階に進んだ国では,前段階で最も威力を発揮した疫学はもはや個々の患者を扱う高度な医療には無用のごとき印象を与えてきたのであろう.そして,疫学はヒトにおける疾病頻度の分布と決定要因について調べ2),原因を究明しその予防策を探るものとされ,臨床医学はすでに何らかの症状を有する“患者”について診断,治療に焦点を合わせているものとされてきた.
 しかしながら,1970年前後より米国で新たな医療の流れとなったプライマリケアのプログラム,とくにgeneral internal medicineが研究分野での独自性を獲得する過程で,疫学の原理は臨床疫学という名のもとに臨床に大きく取り入れられることとなった.その背景には,感染症から慢性疾患への疾病構造の変化,あらゆる医療行為の効果と効率をより厳密に評価せざるを得ない社会的要請(人権,倫理,経済などの側面)などがあったことは事実である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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