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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生54巻12号

1990年12月発行

文献概要

目でみる保健衛生データ

コレラと旅行者下痢症

著者: 工藤泰雄1

所属機関: 1東京都立衛生研究所微生物部

ページ範囲:P.854 - P.855

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1.コレラ
 わが国におけるコレラの発生は,終戦直後の引揚者による流行以降しばらくの間皆無に近かったが,1960年代初頭から始まったエルトールコレラ菌による第7次のコレラパンデミーとともに,その影響を強く受けるようになった.そして,1975年を境としてそれ以降,年々海外からの輸入例が増加する一方,感染経路不明の国内発生例も知られるようになり,1977年には和歌山県有田市,1978年には東京池之端,また昨年は名古屋市と,かなり大規模な集団発生もいくつか記録されるようになった.
 こうしたコレラの増加傾向は,もちろん第7次のコレラパンデミーが依然終息をみせず,現在もアジアを中心に世界各地で恒常的な患者発生を見ていることがその最大の要因である.しかし,これは単にそれだけに帰されるものではなく,同時に近年のわが国における海外旅行者や輸入生鮮魚介類等の,著しい増加とも無縁でないといえる,図は,法務省統計による海外旅行者数(日本人出国者)とコレラ罹患者数の関係を年次的に見たものであるが,本図からもわが国のコレラ発生に海外旅行者が強く影響している様子がよくうかがえる.すなわち,1970年にはわずか60万人余に過ぎなかった旅行者数は,近年の著しい経済成長や航空機など輸送手段の大型・頻繁化を背景に年々増加,昨年にはその約15倍に当たる960万人余を数えるようになり,それと平行してコレラの輸入例も年々増加をみている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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