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保健行政スコープ
末期医療のケア
著者: 中島正治1
所属機関: 1厚生省健康政策局総務課
ページ範囲:P.358 - P.359
文献購入ページに移動現在の医療水準では明らかな治療効果が期待できず,死期が近い,いわゆる末期状態の患者に対するケアに関しては,病名の告知の問題,治癒のみを目指した侵襲の大きな医療に対する反省,疼痛等の身体症状や不安等の精神症状に対するケアの不足などの問題が指摘されるようになった.病名の告知については,「がんの告知」の問題としてとらえられることが多いが,各種の世論調査によれば,がんであることを告げてもらいたいとの意見が多くなってきている.また,がんであることを知り,末期状態であることを認識することにより,残された人生をむしろ有意義に生きることができた事例なども紹介されるようになってきた.その根底には,自分自身の病名や病状,予後の見通しなどをよく理解し,医療の専門家の援助を受けながら,残された人生を自ら選択してゆくことを是とする倫理観があるように思われる.また,医師・患者関係という観点から見ると,病気のことは医師に任せ,患者は専門家の言うことに従っていればよいという父権主義的な関係よりも,患者も病気のことをよく理解し,共同して治療に当たるという関係のほうが望ましいという考え方が広まりつつある.
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