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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生54巻7号

1990年07月発行

文献概要

保健婦活動—こころに残るこの1例

さんちゃんありがとう

著者: 高井和恵1

所属機関: 1千葉県市川保健所

ページ範囲:P.494 - P.494

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 ある日,福祉事務所から1本の電話が保健所に入った.駅近くの高架下でアルコールの臭いをプンプンさせた結核患者が倒れているという.どうも排菌のまま病院を抜け出してしまったらしい.住所不定で保健所で何とかしてほしいとのこと.救急車で病院へ運ばれたが結核病棟がないため,一晩だけという条件つきで近くの結核病院へ回された.だが,今後の収容先をどうしたものか,アルコールの問題,排菌,糖尿病と三拍子そろっていては入院先の病院探しは難しい.とにかく,本人が実際にどういう状況なのか把握する必要があった.
 課長は,サザエさん(私のニックネーム)1人ではと同僚をつけてくれた.急いで結核病棟を訪問したところ,ベッドより処置室まで歩けないほど衰弱していた.車椅子姿で現れた本人は,こじんまりした体格でおびえた感じさえした.苦しそうに「もう二度と逃げ出したりしません」と涙していた.この時の彼の苦痛は他ならぬアルコールによる離脱症状で,指先にチラチラものが見える,絶壁に立たされたような恐怖であったという.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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