文献詳細
特集 歯科保健
文献概要
歯科医学は,基本的には医学から分化し独立専門科したものの一つである.しかし,歯科医学教育の歴史を振り返ると,徒弟教育で自己流の技術を教え,整備された学校教育もなく,医療の自覚や倫理感も持たない状況が,他の学問でも同じであろうが,明治時代まで続いた.歯科医師は現在では口腔内全体を対象と誰もが考えているが,長い間,単に歯の修復のみを対象とするにとどまっていた.歯科医学独自の経験に基づく知識や技術を科学的に系統化し,学問として確立させたのは1840〜50年代である.当時の歯科医学は歯科治療学Operative Dentistry,歯科技工学MechanicalDentistry,口腔外科学Oral Surgeryの三科に分かれていた.その後,多くの先人たちの努力によって基礎的研究の範囲や臨床領域が拡大し,これら三科が各専門領域に細分化されていった1).現在,歯科医学は自然科学の飛躍的な進歩に伴い長足の進歩を遂げている.今後,歯科医学は医学を基礎としてその上にさらに発展し,疾患の予防や治療を通じて社会に貢献し,社会に役立つ分野を一層切り開いていかなければならない.現代社会は加速度的に変化,複雑化し,また変質しつつある.その中で歯科医学は,社会の変化に対応したものとなっていくことも必要である.今後の歯科医学の動向を,以下の項目について考えてみたい.
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