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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生54巻9号

1990年09月発行

文献概要

現代の環境問題・6

農薬の環境中での代謝物とその安全性—ニトロビフェニルエーテル系除草剤を中心として

著者: 植松孝悦1

所属機関: 1北海道薬科大学衛生化学

ページ範囲:P.630 - P.633

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 医薬品,農薬はほとんど人工有機物で占められている.従来,医薬品の場合は,農薬に見られるようなブーメラン現象について考慮されていなかった.それはヒトという閉鎖系(孤立系ではない)で,かつヒト1人の使用量の少なさからして,代謝物を含めて一定短期間内に体外排泄されれば問題なしとして無関心であったからである.しかし,後で表1について述べるように,その使用人数も増加すれば,開放系使用の農薬同様に環境中での動態も問題となろう.有機物は高化学エネルギー体であり,熱力学の第二法則通り,環境中でエネルギーの放出と各種の中間物質を経て低エネルギー状態の無機物となる.しかし,無機化の速度と中間物質の数は,有機物個々の特性と置かれている環境により異なる.この無機化は,空気,日光,生物の連繋プレーによって行われている.前二者による無機化は非酵素的反応で一般的に効率は悪いが,生物による処理は酵素的で効率は高い.しかし,一生物が一有機物を無機化するのに必要な酵素一式を持っている場合は,栄養素の構成成分の一部を除いてはその例がなく,従って一つの有機物を生物のみで無機化する場合は数えられないほどの生物種が必要である.生物にとって人工有機物が栄養素となる場合,それを分解,無機化する方向に反応を進める.栄養素とならない場合は生体より排除する方向,あるいは細胞内の正常機構が乱されない方向,すなわち分解とは逆の合成方向に反応を進める.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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