icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生54巻9号

1990年09月発行

文献概要

保健婦活動—こころに残るこの1例

母の死にこだわりを持ち続けて

著者: 由良里和1

所属機関: 1茅ケ崎市健康課

ページ範囲:P.647 - P.647

文献購入ページに移動
 その方はとても緊張した面持ちで健康相談会場に入ってにられた.70代かなと思える容貌だが,薄化粧し,身仕度もこぎれいにすっきりとし,小柄ながらきりりとしているところがあり,職業婦人的雰囲気をもっていた.待つ間も恐縮した様子で,背を曲げ小さくなって座っていた.その方の順番が来て,私の前に座られたが,なかなか話しが始まらない.どう話したらよいか考えている様子であった、しばらくの間をおいて,「今日はどうされましたか?」の問いかけに,「昨年から血圧が高くて……」と口ごもる感じで話し始めた.健康相談という場に来たことも受けたこともないのか,とても緊張している.血圧測定をしながらのアナムネーゼ聴取にも,始終手のハンカチをにぎったり,もちかえたり,目も伏し目がち,声も小さくとぎれとぎれ,時には涙ぐみ,涙声になりながら,といった様子であった.こちらの受けた印象はとても理知的な感じであり,思いを頭の中で整理しながら,一言一言確認しながら話しているのがわかった.それによると,「自分は69歳であり未婚である.第11〜13胸椎圧迫骨折をしたため仰臥できない.弟夫婦の近くに実母と住んでいた,退職までカウンセリング関係の仕事をしていた.退職後,実母がガンに冒され,亡くなるまで看病してきた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら