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エスキュレピウスの杖
(10)医者と官僚機構
著者: 麦谷眞里1
所属機関: 1WHO本部
ページ範囲:P.50 - P.51
文献購入ページに移動小さいころ,私の家(正確には,母方の祖父母の家)は商家だった,すなわち,店先に物を並べて売って生計を立てていたのである.隣近所も,魚屋とか酒屋で,いずれも商売をしていた,小学校で仲の良かった友達の家も,美容院とか塗料店あるいは材木屋,いわゆるサラリーマンの家庭の子はいなかった.今,必死になって思い出してみるが,辛うじてお寺の子と鉄工所の子がいたぐらいで,やはりサラリーマンの子は思い出せない.不思議なことである.私自身,今はサラリーマンだし,厚生省でもWHOでも,私の周りは全員サラリーマンである.医者も,最近はサラリーマン化していて,若い医者が新しく自分の医院を開業することが少なくなってきている.昔は,医者の絶対数が足りなかったため,医師免許の価値も,かなりのものがあった.キャベツが沢山採れた年はキャベツの値段が下がるらしいから,最近のように1年で8,000人も9,000人も医師免許をもらう人間がいるとなると,1個の値段は安くなって当然である.
ところが,喜ばしいことに,ひと昔前は見向きもされなかった分野が,供給量が増えたことにより見直され始めている.
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