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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生55巻10号

1991年10月発行

雑誌目次

特集 行動科学—その健康問題に果たす役割

行動医学—なぜ必要か

著者: 池見酉次郎

ページ範囲:P.672 - P.674

■行動医学とは
 行動医学は,臨床的に有用な行動療法の進出が引き金となって,過去10数年の間に,米国を中心に展開したものである.米国の行動医学協会の定義によれば,「行動医学とは,行動科学と身体医学の統合をはかる学際的分野である.その中には,人間の健康と疾病に関係のあるすべての事実が包括されており,そこから得られた知識と技術を,疾病の予防・診断・治療・リハビリに応用するもの」とされている.ここで注意すべきことは,わが国で用いられる行動医学という表現は,身体医学と「人間の行動に関する諸科学を包括した行動科学の理論と技法の中で,医学と関係のあるもの」とを統合した広義の行動医学(behavioral medicine)と,身体医学に行動療法だけを統合した狭義の行動医学(behavior medicine)とが含まれているという事実である.
 米国内でも,行動医学に対する解釈は分かれており,エール大学にYale Behavioral Medicine Clinicを主宰したH. Leigh教授は,上記の広義の行動医学に即した診療を行っていた.

保健・医療と行動科学—医学教育を中心に

著者: 中川米造

ページ範囲:P.675 - P.678

■はじめに
 昭和62年9月にまとめられた,「医学教育の改善に関する調査研究協力者会議最終まとめ」は,わが国の医学教育の将来を考えるためには,座右の指針としなければならない重要な文書である.これまでの医学教育の問題点を分析し,課題を明らかにして目標を設定している.とくに知識領域のみならず技術や態度,習慣についても忘れていない点は,従来軽視されることが多かった領域であるだけに高く評価しなければならない.学習されるべき基本的知識の中には,人間関係あるいは人間行動の理解という項目があげられている.基本的態度,習慣としては,
 ①総合的,科学的な思考力と適切な判断力
 ②豊かで温かい人間性と誠実さ,「患者こそ最高の師である」という認識
 ③様々な医療従事者の中で中心的役割を果たすための指導性および協調性
 ④知的好奇心,関心の広さ,自主学習の意欲
 ⑤高い倫理感に基づいた,意思としての社会的使命感,目的意識,責任感などがあげられている.
 ただ,それらに対しての教育方法についても多少触れられてはいるが,多くの大学教員にとってはまったく未経験の領域であるために,示されたからといって簡単に実施できるものではない.

行動と免疫調節

著者: 横山三男

ページ範囲:P.679 - P.684

■はじめに
 これまで,生体を構成する細胞群のつながりを形態または機能から分類するという作業が展開されてきた.その結果として,それぞれに独立した系が形作られ,その系の中での機能が明らかにされた.今日では,それぞれの系の機構のなかで,1個の細胞ならびに連結した細胞群の動態を探る作業が展開され,細胞の生命現象ならびに細胞間の均整のとれた調和のメカニズムが解明されるようになった.ことに,細胞膜の多様化した分子構造と機能によって,細胞周辺での環境の変化が膜表面の分子の動きとしてシグナル化され,細胞質内へ情報として伝達される仕組みが明らかにされている.さらに,情報が細胞から細胞へと伝達されることによって,効果細胞による標的細胞への作用が完了する.その結果として,生体の恒常性が維持されている.これらの現象について,細胞ならびに分子レベルでの解析,さらには,遺伝子を操作することによって,それぞれ独立した系の細胞の生命現象から,生体全体の組織化された巧妙な機能が追求されている.

エイズへの行動科学的アプローチ

著者: 宗像恒次

ページ範囲:P.685 - P.690

■エイズ行動科学研究の世界の動向
 エイズに関する行動科学的研究のグローバルイニシアチーブをとるWHOエイズ世界対策社会・行動研究委員会では,1990年度研究計画のレビューを行った際,これまでの行動科学研究の目標を4つに分けた1).すなわち,(1)リスク行動とその特性を明らかにすること,(2)リスク行動グループにおけるリスクアウェアネスを高めること,(3)行動変容の促進と制約要因を明らかにすること,(4)HIV/AIDSへの社会的対応,である.
(1)から(3)については,WHO事業として自ら開発した世界共通の調査票によって,日本を含め51カ国で一般住民を対象にエイズに関する知識,態度,信念と行動についての調査(KABP)が進められてきている.また他に,性パートナー関係(36カ国),ホモセクシュアルのエイズへの対処行動(115カ国),薬物使用者と感染リスク(22カ国),若年者に関するKABP(11カ国)についても調査が実施され,それらの研究成果がエイズに対する国内的,国際的対策づくりに活用してきているところで,これらを含め(1)から(3)における世界各国の研究は次のような結果を見いだしている.

禁煙への行動科学的アプローチ

著者: 島尾忠男

ページ範囲:P.691 - P.694

■はじめに
 喫煙が肺癌や慢性閉塞性肺疾患などの呼吸器疾患,虚血性心疾患,胃潰瘍など種々の疾患の発生要因となり,現在世界中で毎年ほぼ300万人の過剰死亡の原因となっていること,また喫煙は喫煙者の周囲にいる非喫煙者にも障害を与え,妊娠中の喫煙が生まれてくる子供の健康に影響するなど,受動喫煙が無視できない問題であることが,世界中で認識されてきている.しかし一方では,喫煙は現代社会に広く蔓延している習慣であり,わが国では成人男子の61%,女子の14%,合わせて成人の37%が喫煙者であることも無視できない現実である.
 喫煙の健康への影響を考えれば,現在タバコを吸っていない人はそのまま吸わない状態を続け,現在吸っている人は喫煙を止めることができれば,最も望ましいことである.しかし喫煙を止めることの難しさを考えると,社会の中に当分はかなりの喫煙者がいることを前提に,非喫煙者を受動喫煙から守るために喫煙者と非喫煙者を分離し,分離が困難な公共の場所や輸送機関内では喫煙を禁止することも重要な対策となってくる.

アルコール依存症への行動科学的アプローチ

著者: 妹尾栄一 ,   斎藤学

ページ範囲:P.695 - P.698

■嗜癖的行動の諸相
 アルコール依存症に関する行動科学的研究は,近年急速に進展しつつある領域の1つである.
 人生に飢えと渇きを感じる人が,それを埋め合わせるために,例えば過剰な飲酒に走ったものの,そのうち自己の統御を超えてしまうとする.その場合,より良く生きようとして始めた行為がその主体者に背き,結果としてこれを損傷するというパラドキシカルな状況が出現する.斎藤7)は,自己のコントロール下にあったはずの習慣行動から派生し,自己のコントロールを外れる状態にいたったものを「嗜癖」の概念でとらえることを提唱し,具体的にはアルコール依存症,肥満,喫煙,薬物乱用,強迫的賭博などを包摂している.

糖尿病への行動科学的アプローチ

著者: 山内祐一

ページ範囲:P.699 - P.704

■はじめに
 糖尿病は単なる身体疾患ではない.糖尿病がストレスによって顕在化しやすい病態とする考え方1)は興味深い.逆に,糖尿病罹患による二次的な心理反応も,糖尿病臨床家にしばしば経験される問題点である.糖尿病者によくみられる精神構造には,不満,不安,心気,強迫,うつ,失体感症などがある.言い換えれば,神経症傾向,または身心症傾向を示しやすいのである2).したがって,糖尿病に特有な病前性格を指摘するわけにはいかない3).個体によっては不適応にも過剰適応にもなる.これらに共通した背景要因として,生涯にわたる食事制限を強いられる慢性疾患であることを挙げねばならない.インスリン治療を要し,しかも合併症を有する場合や若年者ではとりわけ,心理社会経済的問題が生じやすくなるのは当然である4).日本人に多い肥満NIDDMに対応するには,どうしても減量に対するセルフコントロールが必要となる5).以上のような糖尿病者の行動変容を推進させるには,行動科学的アプローチが優れている6,7).筆者の自験例を示し,実践的な方法を述べることにする.

「行動医学」研究の国際的動向

著者: 荒記俊一 ,   谷川武

ページ範囲:P.705 - P.707

■はじめに
 「行動医学」は,国際行動医学会憲章(1990)によると,健康と疾病に関する心理・社会学的,行動科学的および医学生物学的知見と技術を集積統合し,これを病因の解明と疾病の予防,診断,治療およびリハビリテーションに適用することを目的とする学際的学術と定義される(表1)1).行動医学の研究領域は,脳―臓器間の機能相関の解明から,臨床診断と治療,さらに公衆衛生活動としての疾病予防と健康増進にまで及んでいる.
 本稿では,「国際行動医学会」(International Society of Behavioral Medicine)の成立過程と活動を中心に,「行動医学」をめぐる最近の動向を紹介する.

地域リハビリテーションと機能訓練事業 パネルディスカッション:地域リハビリテーションとネットワークづくり・1

—基調講演—ネットワークづくりの基本的考え方—ネットワークのネオ・コーポラティズム的考察

著者: 牛津信忠

ページ範囲:P.708 - P.714

 まず,社会経済体制などという少々おおげさな内容に触れることから始めたい.昨年の夏,英国で国際的なボランティア学会が開かれた1).今日の議論とも大いに関係の深い内容が発表されていたが,そのなかで,特に社会経済体制上の議論が目を引いた.ボランティア活動と体制論など日本では余り論じられることもないが,この学会では,体制のなかでの自主的・自発的活動について,考え方の整理が相当に厳密になされていた.自主的・自発的活動ないし活動体を,われわれの社会のなかでどのように位置付ければいいのか.これがわれわれの「人間福祉ネットワーク」を考えていく場合に,その性格を左右する要点のひとつとなる.

現代の環境問題・19

悪臭—苦情とその対策

著者: 小野寺卓司

ページ範囲:P.715 - P.719

●はじめに
 近年,悪臭の原因となる施設,原材料,工程等が多様化してきており,その結果,すべての業種に悪臭発生源が存在するといっても良いほどである.また,都市化の進展に伴い,工業地域や農畜産地域に住宅地域が接近するようになり,都市の中にも新たな臭気問題が発生している.
 環境庁では,このような悪臭公害の状況を把握するため,毎年度,悪臭苦情の状況,法に基づく規制地域の指定状況等について報告を取りまとめている.以下,平成元年度の悪臭公害状況調査の概要を報告するとともに,今後の対策についても,若干触れることとする.

特別寄稿

わが国における感染症の情報システムの沿革・2—感染症情報システム構築をめぐる曲折

著者: 大橋誠 ,   宮村紀久子 ,   倉科周介

ページ範囲:P.720 - P.722

 行政施策の転換は,それに対する社会需要の質量いずれかにおける変化が直接の契機となる.1968年5月の厚生大臣諮問も,まさしくそうした変化を背景とするものであった.伝染病の危険性の低下に伴って,その予防対策に従来許されていた社会的緊急性が減少したことがそれである.だがこうした状況は,合理的な疾病対策の立案に必ずしも有利に働くとは限らない.伝染病あるいは感染症の対策についても,そのような機微が伏在したかに思われる.
 なお以下の本文で地研,予研とは,それぞれ地方衛生研究所および国立予防衛生研究所の略.また,職名はいずれも当時のものである.

調査報告

千葉市ニュータウン住民の受療行動に関する研究

著者: 島正之 ,   仁田善雄 ,   岩崎明子 ,   安達元明

ページ範囲:P.734 - P.739

●はじめに
 医療法に基づいて都道府県レベルでの医療計画が作成されている.医療計画の主な目的は「地域に主体をおいた計画的な医療提供」1)であると考えられ,今後はこうした計画の推進を図るために,各地域における保健医療体制の整備が重要な課題となっている.
 地域の保健医療体制について検討する上では,まず医療需給の現状を把握することが必要であり2,3),そのために患者調査,医療施設調査,国民生活基礎調査などの既存資料が利用されることが多い4).しかし,地域住民の受療行動,すなわちどこの医療機関を利用しているかを示す報告はほとんどなく,既存資料だけでは十分な検討ができない.特に,首都圏においては,社会の発展に伴って通勤・通学圏が拡大するなど,東京を生活圏とする人が増加し,東京都内での受療も無視できないものとなっており5〜7),その現状を把握することが重要である.
 千葉市は東京都心から40kmの地点にあり,東京の影響を強く受けながら発展してきた.

新住宅地区の医療保健の実態—鹿児島県姶良ニュータウンの場合

著者: 柳橋次雄 ,   泊惇 ,   尾上佳代子 ,   渋谷真由美

ページ範囲:P.740 - P.744

●はじめに
 近年,都市周辺では地域開発計画の一環としてニュータウン計画が策定実施されており,鹿児島県でも一部の地域で同様の現象が起きている.通常,ニュータウンは人口増加に基づく住宅不足の解消を目的としているので,保健医療施設の整備は不可欠条件の一つであるが,入居者が少ない間は一時的に無医地区の状態に置かれることがある.
 本調査は,医療機関が未設置で,現在なお整備途上にある鹿児島県姶良ニュータウンの住民に対し,健康意識,罹病ならびに医療行動の現状に関して質問紙法による調査を行い,ニュータウン計画の医療需要について考察を加えたものである.

保健所機能の新たな展開—飛躍する保健所

水質保全対策「高津川・益田川流域水辺のフォーラム」を開催して

著者: 植田茂美

ページ範囲:P.723 - P.725

 昨今,将来の保健所のあるべき姿が模索されている中,今回,水質保全対策を取り組む中で,保健所内の業務連携と,地域活動について整理したので報告する.

進展する地域医師会の公衆衛生活動 壱岐島健康会議と地域リハビリテーション研究会—壱岐郡医師会・3

リハビリ研究会とのネットワーク

著者: 益川隆興 ,   光武新人

ページ範囲:P.726 - P.727

 老人保健法による機能訓練事業が各地で手掛けられはじめた.島内でも昭和61年8月の勝本町鯨伏地区の「健やか教室」をはじめとして,各町で実施されてきている.この機能訓練事業を効果的に進めようと,「壱岐郡リハビリテーション研究会」が組織されている.
 この会は島内の各町が老人保健法による機能訓練事業を始めるに当たり,保健・医療・福祉の連携が不可欠ということで,それには各専門家がお互いの職場の仕事や問題点を理解し合うことから連携を強めようと,月1回の勉強会を行うために結成された.勉強会は月例検討会として昭和61年9月から63年1月まで15回開催,延べ635名が参加した.この話し合いの中から組織体制確立の動きが起こり,63年2月に「壱岐島リハビリテーション研究会」の設立総会が開催され,正式に発足した(小金丸敬仁会長:国立療養所壱岐病院理学療法士,当時の会員は88名,うち医療関係者30名,保健関係21名,福祉関係35名,その他2名).

目でみる保健衛生データ

結核

著者: 森亨

ページ範囲:P.728 - P.729

1.低蔓延の中のかげり(図1)
 図1は1970年以降の日本の結核の罹患率の推移をみている.1979年頃までは年々約11%(対前年比)ほどずつ低下し続けてきたが,その頃から急に低下速度が鈍くなり,その後10年間以上にわたり約3.5%という減少率に留まっている.これが日本の高齢化だけで単純に説明できないことは年齢階級別の傾向線をみれば明らかで,若年者に「膝折れ」がむしろ著しい.これは全結核(肺結核と肺外結核を含んだすべての新登録例)についての傾向であるが,感染性肺結核(排菌陽性例と空洞例)はこの10年間ほとんど横ばいであり,なかでも感染源として最も重要な「塗抹陽性肺結核)の罹患率の傾向は,この図に見るように,当初微減,1985年頃からは明らかに増加に転じている.また年齢別にみると,高齢者ではこの間一路増加傾向をたどっていることが知られているし,若年者でも横ばいである.
 かつての高蔓延時代に感染を受けた世代が高齢化し,これに(おそらく年齢以外の)なんらかのリスク要因が作用して発病が促され,周囲にいる無防備の若年者にもろに影響を与える,また種々のハイリスク集団への患者の集中化による患者の重症化が促される,といったことが起こっているのであろうが,これに医療の側のぬかり(診断の遅れ,対応の手抜きなど)が事態を複雑にしているようなことがないか気になる.

エスキュレピウスの杖

(19)特別プログラム

著者: 麦谷眞里

ページ範囲:P.730 - P.731

1.特別プログラム
 WHOの中に,特別プログラムと呼ばれている事業がいくつかある.執行理事会,総会の議決を経て設立されたもので,それぞれ独自の管理運営機構を有している.具体的には,EPI(予防接種拡大計画),TDR(熱帯病研究),CDR(下痢性疾患・急性呼吸器疾患対策),HRP(人間生殖事業)GPA(エイズ世界対策)などがそれであるが,どう特別なのか,ということをHRPを例にとって説明してみる.

保健婦活動—こころに残るこの1例

大社町の「健康と環境を守る会」発足

著者: 勝部かつこ

ページ範囲:P.732 - P.732

 担当している大社町の健康づくり地区組織「日御碕成人病予防実行委員会」が,平成2年4月,名称を「日御碕健康と環境を守る会」と変更した.それは単なる名称変更ではなく,健康づくりの10年の成果であった.
 日御碕地区は世帯数約300戸,人口1,300人の漁業と観光を中心とする地区である.昭和53年に脳卒中予防対策に取り組むために活動を始めた頃には,「忙しいのに健康のことなんて」という声が大半だったと聞く.ここでの特徴は,地区のみんなの声を聞きながら活動を進めるために,健康常会と呼ぶ隣保単位の集まりで,膝を交えた話し合いを重視するところにある.健康常会は,普段着を着て出かけることができる,上手に言いつくろわなくても話ができる.そこで自分たちの問題は何か,問題解決のためにどう取り組むのかを話し合って10年が経過した.この間,住民の要望を受けて胃がん・子宮がん・乳がん検診が地元で実施されるようになり,地元役員の熱心な働きかけに支えられて,高い受診率となって現れた.そして子供たちの健康,歯の健康,心の健康と,地区で取り上げる問題はどんどん広がっていった.

発言あり

まつり

著者: 黒沢丈夫 ,   山田兼三 ,   若泉征三

ページ範囲:P.669 - P.671

「上野村乙父神社のまつり」
 まつり,それを厳密に探求すると,いろいろな祭という字の意味するところが想起されるが,ここでは,筆者が幼少から体験してきたわが鎮守の森の,わが集落の産土神のまつりを記すこととする.
 筆者は群馬県西南端の,交通不便だが川と山の美しい上野村の乙父(オツチ)という集落に生まれたが,そこは徳川時代には山中領と呼ばれて,幕府に直轄され,農林業による自給自足を主とし,和紙の原料である楮や木炭等を生産して,秩父,佐久,甘楽方面と交易して生計を営む人達の里であった.この乙父集落の産土神「貫前神社」のまつりは,近郷では特ににぎやかなまつりで,人々の生活に深く根を下ろしてきた.もっとも,このにぎやかさは,月遅れの雛祭りと合わせて4月3日から始めて,主たる祭典を5日に行っているがゆえでもあろうが,村人はこの3日間を,春の楽しいまつりと心得て厳しかった冬から暖かい春に変わる節目として心待ちにしている.

保健行政スコープ

介護力強化病院の運用状況について

著者: 新木一弘

ページ範囲:P.745 - P.747

●介護力強化病院制度の新設
 老人の心身の特性にふさわしい診療報酬体系を確立し,いわゆる「検査づけ」や「薬づけ」の医療を改善する必要があること,特に,従来の出来高払い方式の診療報酬体系を改め,定額制の支払方式を導入する必要があると指摘されてから久しい.このような問題を解決するため,主として病状の安定している老人慢性疾患の患者を入院治療する病院である特例許可老人病院に対して,平成2年4月の診療報酬改定において介護職員を手厚く配置した場合を積極的に評価し,投薬,注射,検査を包括した点数を新たに設定した.これにより過剰診療や付添看護に依存せず,病院職員による「寝たきりにさせない」ケアに重点をおいた医療が行えるようにした.この制度により診療報酬を支払われることを希望する病院は,申請により都道府県知事の承認を得た後,診療報酬が定額で支払われる.制度の概要は以下のとおりである.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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