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発言あり
まつり
著者: 黒沢丈夫 山田兼三 若泉征三
所属機関:
ページ範囲:P.669 - P.671
文献購入ページに移動まつり,それを厳密に探求すると,いろいろな祭という字の意味するところが想起されるが,ここでは,筆者が幼少から体験してきたわが鎮守の森の,わが集落の産土神のまつりを記すこととする.
筆者は群馬県西南端の,交通不便だが川と山の美しい上野村の乙父(オツチ)という集落に生まれたが,そこは徳川時代には山中領と呼ばれて,幕府に直轄され,農林業による自給自足を主とし,和紙の原料である楮や木炭等を生産して,秩父,佐久,甘楽方面と交易して生計を営む人達の里であった.この乙父集落の産土神「貫前神社」のまつりは,近郷では特ににぎやかなまつりで,人々の生活に深く根を下ろしてきた.もっとも,このにぎやかさは,月遅れの雛祭りと合わせて4月3日から始めて,主たる祭典を5日に行っているがゆえでもあろうが,村人はこの3日間を,春の楽しいまつりと心得て厳しかった冬から暖かい春に変わる節目として心待ちにしている.
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