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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生55巻2号

1991年02月発行

雑誌目次

特集 産業看護

〈エディトリアル〉産業看護の特集にあたって

著者: 深澤くにへ

ページ範囲:P.76 - P.77

 終戦後45年,廃虚の中から立ち上がったわが国の産業は急速に成長し,いまでは欧米諸国に脅威を与える経済大国となり,また一方,諸外国から,働き過ぎと指摘されながらも世界一の長寿国となった.
 これには臨床医学,医療技術・施設の発達や普及,地域における妊産婦・乳幼児保健,学校保健,産業保健,老人保健など,一連の公衆衛生活動の著しい向上が大きく貢献してきた.

産業保健における産業看護職への期待

著者: 飯田英男

ページ範囲:P.78 - P.81

■はじめに
 与えられたテーマ「産業保健における産業看護の役割」ということは,筆者には荷が重すぎる.また,すでに日本産業衛生学会産業看護研究会の精力的な活動の中から,いささか抽象的・理念的ではあるが,立派な報告書が生まれている1).さらにその要点が,第24回産業看護研究会全国集会(1990年7月6日,名古屋)の午後のシンポジウム「21世紀に向けての産業看護職の役割」で,司会者(荻田佳子・河野啓子)によって話されている2).多分,本特集の中で他の執筆者が,それらの内容にふれられると思うので,筆者は専属産業医として三十数年の経験の中から,「産業医の立場からの産業看護職への期待」といったことのいくつかを述べてみたい.

産業看護の歴史・目的・方法論

著者: 前田和子

ページ範囲:P.82 - P.88

■はじめに
 産業看護の歴史について筆をとる時,無意識に1963年公衆衛生看護双書の一部として,医学書院より発行された『産業看護』と重ね合わせていることに気付いた.故勝沼晴雄東大名誉教授が,産業衛生の場に筆者らを送り出し,共著として出版されたものである.当時としては,新しい公衆衛生分野の教書でもあった.病院における臨床,地域保健,学校保健等で展開される看護と同じように,産業の場においても固有の看護がなければならない,との視点から書かれたものである.それから30年近い年月の中で,わが国の法律は変わり,看護職のめざましい活躍を知る時,歴史を通じて何を求めるべきか考えてみたい.

産業看護に求められる健康教育

著者: 河野啓子

ページ範囲:P.89 - P.92

■はじめに
 「労使を含む学際的な労働衛生チームの一員として,働く人々の労働と健康の調和をはかり,心身ともに健康で充実した職業生活がおくれるように,看護の理念に基づいて支援する」ことを行う「産業看護」に求められる健康教育は,業務に起因する疾病を予防することはもちろんのこと,健康の保持増進,快適な職場環境づくりや作業条件づくりに関わるもの,すなわち,労働衛生管理の基本である「作業環境管理」,「作業管理」,「健康管理」の三管理すべてにわたるものでなければならない.
 例えば,作業環境管理の観点からいえば,次のようなことが挙げられる.発散した有害物質が作業者の呼吸圏にまで拡散する前に,局所排気をするための局所排気装置が設置されていても,冬などそれを稼動させると寒く感ずるので,わざとスイッチを切ってしまったり,局所排気装置のダンパーを必要な箇所で閉め,不必要な箇所で開放しているために制御風速が維持できなくなり,環境を悪くしている例がしばしば見受けられる.

産業の場における保健相談・健康管理

著者: 鎌田登志子

ページ範囲:P.93 - P.95

 産業看護からみた産業の場における健康管理の目的は,働く人が,労働および生活の全般を通じて,自主的に健康を保持・増進することへの支援をするとともに,労働と健康が調和することにより健康障害を未然に防ぎ,快適で,いきいきとした職業生活が営めるように支援することである.
 産業看護職がかかわる健康管理の展開は,保健計画をたてることに始まり,業務内容は,各種健康診断(事後措置を含む),健康相談・保健指導,健康づくり,メンタルヘルス,職場巡視,疾病管理,救急処置,さらには,中高年齢者対策,年少者・妊産婦対策,身体障害者対策等があげられるが,ここでは産業看護職としての業務の中核であり,健康管理全般に関連する保健相談(保健指導・健康相談)に視点を当てて考えてみたい.

労働と健康の調和のための産業看護の特色

著者: 飯島美世子

ページ範囲:P.96 - P.99

■はじめに
 産業看護は,職業生活に伴う有害要因や顕在する健康障害のみでなく,個人や集団の職業生活の各面にわたる諸条件を考慮し,労働生活の質の向上QWL(quality of working life)を目指して行う支援活動といえよう.それはまた,仕事の人間への適合と人間の仕事への適応を図ることに関与するものであり,個人への働きかけと共に組織や集団への働きかけが重視される活動である.そして働きかけるときの姿勢の中に,働く人びとの人間性を尊重し,全人的な把握のもとで支援するという看護の理念が生きているものと思われる.
 かつて結核対策が健康管理の大きな課題であった時代の産業看護業務は,疾病の早期発見・早期治療を進める一方で,就業に当たっての注意や生活面での指導,また要注意者などフォローを必要とするものに対して定期的な検査と指導を行う,いわゆる,疾病管理が大きなウエイトを占めていた.そこでは,労働と生活に密着した指導が行われ,その業績は高く評価されている.
 近年,健康管理のなかで対策が急務とされている疾病は,高血圧や糖尿病,肝疾患,がんなどのいわゆる成人病である.

日立健康管理センターにおける疾病管理活動

著者: 庄司幸子

ページ範囲:P.100 - P.103

■はじめに
 労働力人口の高齢化,技術革新に伴う職場環境の変化等,働く人たちを取り巻く環境が大きく変化している.これらの変化に対応した健康管理ができるように,労働安全衛生法(以下安衛法と略す)が平成元年10月に改正された.改正の主目的は,疾病の早期発見をより確実なものとすることと,成人病などの疾病を予防することである.具体的には労働者の健康状態の正確な把握と,適切な健康指導である.
 日立健康管理センターでは,この改正安衛法が目指している保健活動を,昭和51年頃から実施し,多くの成果を上げている.ここでは,その中から疾病管理の実際と,その効果について報告する.

産業看護—欧米の現状

著者: 奥井幸子

ページ範囲:P.104 - P.107

■はじめに
 産業看護に関心が向けられ,本誌にも取り上げられる時世になり感無量の思いである.現在,私たちにとって初めての公式な組織である日本産業衛生学会(以下産衛)産業看護部会の設立のために,最終的な努力と調整が続けられている.
 部会設立の気運は,国際化とも深いかかわりがある.わが国の産業看護職の国際交流は,1969年に東京で開催された第16回国際労働衛生学会(以下ICOH)から始まった.主として疾病管理にかかわっていた私たちの活動と,労働と健康との関連に主眼を置いた欧米の看護の違いが目についた.このためには,看護基礎教育と公衆衛生看護の教育のみでは不十分で,労働衛生看護に関する系統的な教育が実施されていることもこの時知った.産業の場で,これらの活動に従事する看護職は,industrial nurseとして専門分化されており,この呼称が1970年代にはoccupational healthnurseと変更され,今日に至っている.
 1973年にスウェーデンのシェーブデで開催されたICOH産業看護セミナーのテーマは労働環境であった.初めての海外セミナーへの参加と,英語の分からなさに加えて内容が理解できなくて泣いた経験がある.

現代の環境問題・11

食品汚染—残留農薬

著者: 伊藤誉志男

ページ範囲:P.108 - P.111

■はじめに
 おいしい農作物がたくさん収穫されるようにと,品種の改良,栽培技術の向上への努力がなされている.また,農作物の貿易の自由化も漸次進められており,品質競争に打ち勝つためには食味,栄養成分とともに外観も重要な要素となる.しかし,おいしい米や上質のリンゴやモモ等は病害虫に弱く,これを防止する目的で殺菌剤や殺虫剤の農薬が使用されることになる.一方,わが国の農業従事者数は年々減少し,兼業農家が増加していることから,効率化も考慮しなければならず,労働力を少なくする目的で,除草剤が使われることになる.このような状況から使用された農薬が食品中に残留するならば,それは食品汚染物であり,汚染防止のための努力をしなければならない.

研究ノート

肺機能障害者の生活実態調査

著者: 石井英子 ,   笹野英子

ページ範囲:P.112 - P.115

◆はじめに
 近年,わが国では結核およびその他の感染症で死亡する人々は,医学の進歩と栄養状態の改善等により激減してきた.一方,結核は治ったが,結核の後遺症として肺機能障害を残しながら,現在日常生活活動を著しく制限される状況にある人が増えてきた.昭和20年,30年代に発病し,慢性化した結核患者は,硬化性病変・胸郭手術による変形等からくる息切れ,咳などの呼吸器症状で苦しみながら療養につとめている.これら肺機能障害を持つ人々は,風邪,疲れをきっかけとして,呼吸不全を起こし,急性増悪期には入院治療を必要とし,短期間に入院の繰り返しを余儀なくされている.
 千種保健所では,昭和52年に結核既往のある人が呼吸不全を起こし,緊急入院をして一命をとりとめた事例や,急性増悪に陥り手遅れになり死亡した事例1)を把握したことを契機に,肺結核後遺症による慢性呼吸不全者(以下「肺機能障害者」という)の実態把握2)に努めた.その結果,昭和55年から結核の後遺症を持つと思われる人々を対象に,呼吸不全予防を目的に呼吸器教室を開催し,現在も継続して実施している3)

活動レポート

食品衛生の向上をめざして—長崎県食品衛生協会の活動

著者: 宮田佐七

ページ範囲:P.116 - P.118

●はじめに
 長崎県食品衛生協会は自主衛生管理体制を確立するとともに,住民に対する食品衛生知識の普及を図り,食品衛生の向上に貢献したという理由で,平成元年9月21日に第一生命保険相互会社が主催される第41回保健文化賞を受賞した.今後ますます食品衛生の向上に資するため,食品衛生協会活動を推進すべく決意を新たにしたところである.
(社)長崎県食品衛生協会は,食品関係営業者がその大きな社会的責務を自覚し,食品衛生の確保と向上を図るため,自主的な組織活動を実施する任意団体として,昭和36年8月に会員226名で発足した.その後,事業活動の充実強化を図るため昭和45年に社団法人に改組し,現在に至っているが,発足時の会員数を大幅に上回る36,000人が加入する,食品営業関係40団体を網羅した組織に進展した.
 以下,現在の事業の概要と,今後の課題等を述べ,各位のご指導をあおぎたい.

調査報告

島根県におけるインフルエンザの流行(1989/90)

著者: 持田恭 ,   飯塚節子 ,   板垣朝夫 ,   五明田斈 ,   保科健 ,   糸川浩司 ,   新田則之 ,   岡田尚久

ページ範囲:P.132 - P.134

◆はじめに
 昨年のインフルエンザ(1988/89)終息後の国内におけるインフルエンザウイルスの分離状況をみると,1989年8月神奈川県でB型,9月,11月横浜市でAH3N2型(以下A香港型と略す)およびB型,10月神戸市でAH1N1型(以下Aソ連型と略す)が散発例から,さらに,集団発生からウイルスが11月横浜市(B型)および東京都(A香港型)から分離されている1〜2).それゆえ,今シーズン(1989/90)のインフルエンザはA香港型だけでなく,B型の流行もあることが推察された.
 われわれは,島根県における今シーズン(1989/90)のインフルエンザの流行状況を調査したところ,A香港型で始まった流行が,シーズン途中にB型の流行に置きかわったので,その結果を報告する.

報告

保健所に対する色彩イメージと一考察

著者: 土屋眞 ,   村山光夫 ,   小野木恭子 ,   梶真由美 ,   三浦光男

ページ範囲:P.135 - P.138

 さる昭和63年3月に発足した仙台市北保健所泉支所が,平成元年4月,泉保健所に昇格した.これを機会に,保健所設置についての区民の認識および保健所のイメージを調べ,今後の行政の参考にするためと,後年の調査時に比較出来るように,開所の年に調査を行った.ことに色彩イメージによる回答を求めたので報告したい.種々の分野で活用出来る方法の一つと考える.

資料

慢性分裂病者の体力—テスト評価と訓練治療効果の検討

著者: 境美津枝 ,   島津靖子 ,   三角順美 ,   大井和子 ,   五十嵐善雄

ページ範囲:P.139 - P.142

●はじめに
 精神障害者が地域社会において生活を維持し,社会に受け入れられていくには,社会に対して彼らの病気や,障害を理解されやすくする必要がある.例えば,精神障害者が「きつい,力が出ない,根気が続かない」としばしば口にする姿が,一般には“怠け”と理解されやすい.そのため,熱心な援助者ほど叱咤激励といった頑張りを求めることにもなりかねない,彼らの怠惰としか見えない反応に,心理的側面からのみアプローチするのではなく,その背景にある体力のなさや精神的脆弱性を明確に知っておくことが必要と考える.
 そこで,彼らの障害の見え難さを視覚化するための指標として,また,障害の受容に視点をおき,障害を本人のみならず,家族とも共有しやすくする評価の方法として,体力テストを取りあげた.
 精神障害者の体力については「体力診断テストの評価」1)として,昭和63年7月,第21回福岡県デイ・ケア研究協議会で報告した.今回は症例を増し,上記の視点にたって客観的評価に加え,対象である通所者自身の主観的評価もあわせて検討した.

保健所機能の新たな展開—飛躍する保健所

兵庫県和田山保健所の活動

著者: 小亀正昭

ページ範囲:P.119 - P.122

■はじめに
 和田山保健所は,兵庫県の北部,但馬地方の南に位置し,養父郡4町,朝来郡4町を管轄するL5型の保健所である.管内の面積は,山地を中心に823.94km2に及び,人口は年々減少して平成2年2月1日現在,68,952人で,県人口5,390,878人の1.3%である.年齢65歳以上の人口は13,813人,老年人口割合は20.0%で,県平均の11.5%を大きく上回り,最も高齢化の進む大屋町では,25.9%に達している.
 このように当管内は,高齢化と過疎化が著しく進展する一方で,豊かな自然環境を利用した地域の活性化が図られようとしている地域である.

進展する地域医師会の公衆衛生活動 胃集団検診に取り組む津山市医師会・2

胃集団検診のシステム

著者: 河原大輔 ,   大桑修 ,   額田克海 ,   綾部長徳

ページ範囲:P.124 - P.125

 津山市医師会の胃集団検診の具体的な流れは,表のとおりである.
 検診の実働部隊は前述(1号46頁)のように,医師会胃集団検診部の職員である,その陣容は放射線技師2名,運転士1名,事務職員1名および補助者1名である.

エスキュレピウスの杖

(11)日本からの手紙と訪問者

著者: 麦谷眞里

ページ範囲:P.126 - P.127

1.はじめに
 先日,久し振りで1週間ほど日本に出張したら,思いがけない人々から,毎月,このエスキュレピウスの杖を読んでいます,と言われて恐縮した.また,そのうちの何人かの方からは,お世辞かも知れないが,毎月楽しみにしています,とも言っていただいた.これはすでに,別の雑誌で書いたことであるが,医学部の学生時代に,衛生学の講義で,初めてWHOのことを習った.確か,「国民衛生の動向」だったと思うが,WHOの組織図が載っていて,なんとなく自分とは遠い存在のような印象を抱いた覚えがある.その当時は,行政官になろうなどとは思ってもいなかったし,いわんや,WHOで働くことなど露ほども考えていなかった.さらに,楽屋落ちのような話になってしまうが,私はなんと,英語が不得意だったのである.その辺の顛末については,また別の機会に譲ることにして,私がこの連載で心掛けていることは,WHO及びその周辺の国際保健医療の状況について,できるだけ生の情報を提供しよう,ということである.誤解を恐れずもっと有り体に言えば,私が昔おぼろげに抱いていた国際機関とかWHOに対する幻想を,皆さんには,より現実に近い姿で紹介しようというものである.実際の姿を知って,さらに魅力が倍加する場合とがっかりする場合とがあるが,それは,読者自身の問題であるから,そこまでは私も関知しない.

保健婦活動—こころに残るこの1例

2年目に出会ったS氏一家から学んだこと

著者: 中村妙子

ページ範囲:P.130 - P.130

 昭和60年7月,台風一過の青空の朝,「裏山が崩れそうで恐いんです…」と疲れたような声でS氏の妻から電話が入った.
 S氏は当時62歳,会社を停年退職後,自営を試みては失敗するという連続で,妻が気づいた時借金は1千万円を越し,家も抵当に人っていた.妻は生活費の相談に福祉事務所を訪ねて来ていた.「話しを聞いているとどうも様子がおかしいので,一度本人を見てきて欲しい」と福祉のケースワーカーからの相談を受け訪問してみたのは,5月の末のことである.

笑顔にふれて

著者: 吉原智子

ページ範囲:P.131 - P.131

 広々とした田園風景の中に,ポツポツと建っている昔ながらの農家を見ると,ふと思い浮かべる家族がいる.Aさん一家である.
 Aさん(38歳)は,アルコール依存症である.18歳で初飲し23歳で習慣飲酒,30歳過ぎて酒量が増え,1回精神病院に入院している.家族は腎臓が悪い父(68歳)と高血圧症の母(62歳),妻(36歳),娘3人(7,6,3歳)である.妻は娘3人と共に軽度の知能障害があり,理解力に乏しい.わずかな田畑を耕し,父母の年金と妻が時々アルバイトで稼いだ金で,細々と暮らしている.家もかなり古く,冬になれば隙間風が吹く.

発言あり

働きやすい職場環境

著者: 日下幸則 ,   土井道子 ,   中明賢二

ページ範囲:P.73 - P.75

ライフスタイルもワーキングスタイルも
 産業保健科学,労働医学の分野では,職業上の有害因子,交絡因子が何であるかを明らかにし,障害発生の機構を解明すると同時に一次予防の指針,介入のための方策を得ることが求められる.わが国にあっては,とりわけさまざまな職業病が噴出した高度経済成長の時代以来産業医学は勤労者の健康を守るために貢献してきた.
 一方,わが国を含む先進諸国では癌や心・脳血管疾患が増加し,これらの原因やリスクファクターが,喫煙や飲酒などの個人の生活習慣にあることが明らかにされている.したがって,個人が産業人であるか否かを問わず生活病にならないために生活習慣を改善すること,良いライフスタイルを守ることが第一であると考えられている.このように,癌や成人病,うつ病などの精神疾患をもたらすような個人の健康習慣のあり方,すなわちライフスタイルは,産業保健スタッフの努力が傾注される,一次予防の格好な対象となっている.トータルヘルスプランという,スポーツや心理相談で積極的に健康を増進しようという動きも進められている.

公衆衛生人国記

栃木県—栃木の歴史と衛生行政と

著者: 小倉裕

ページ範囲:P.128 - P.129

栃木県のイメージ
 栃木県は北関東3県の中央に位置し,人口190万人余りの急速に変貌を遂げつつある首都圏の県である.その栃木県といえば,年間2,000万人もの人の訪れる観光地として日光国立公園を挙げなければならない.東照宮,二荒山,中禅寺湖,華厳の滝をはじめ,鬼怒川,那須,塩原の温泉地を抱え,世界的に有名であり,その他,陶芸の町益子,小京都足利,蔵の街栃木など,著明な観光地に事欠かぬうえ,東京から100km,新幹線で50分という地の利を生かしての工業,商業,リゾート開発,ニュータウン建設など,急速な発展を見せている.しかし,さて本県の全国的に見た知名度となると,今一つ低く後進県のイメージが払拭されていない.そこで県では,各種イベントの開催をはじめ,PR活動に積極的に取り組んでおり,最近実現したJR宇部宮線の新呼称などを含め一応の成果は上がっている.ここで本県の歴史を振り返ってみると,奈良,平安の昔には東国文化の拠点として栄え,日本三戒壇の一つ,下野薬師寺をはじめ,国府の設置,国分寺,足利学校など,数多くの遺跡に昔の繁栄を今なお忍ばせている.けれども,それが戦国時代以降となると様相が一

保健行政スコープ

作業関連疾患研究の必要性

著者: 瀬上清貴

ページ範囲:P.143 - P.145

●はじめに
 作業関連疾患による労働災害の防止,労働者の健康管理の強化,中高年労働者の健康の維持向上等を積極的に進めることについての重要性に関する認識が高まってきていることから,業務と心疾患,脳血管疾患等との関連性,作業関連疾患発症メカニズムおよび適切な予防方法等を明らかにすることを目的として,総合的な調査・研究の推進を図るため,労働省では平成2年度から5カ年計画で「作業関連疾患総合対策研究事業」を多くの研究者の参画を得て開始した.
 将来的には,作業関連疾患の顕在化や重篤化を防止する予防マニュアルを開発し,産業医や産業保健婦等の産業衛生関係者による作業関連疾患の効果的な予防活動に資することが目されている.
 将来的には,作業関連疾患の顕在化や重篤化を防止する予防マニュアルを開発し,産業医や産業保健婦等の産業衛生関係者による作業関連疾患の効果的な予防活動に資することが目されている.
 作業関連疾患の概念は次に示すが,とりあえず初年度は高血圧および心疾患に関する研究を2年間の研究計画でスタートさせたが,順次,脳血管疾患,代謝性疾患等の研究に領域を広げていくことになろう.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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