文献詳細
文献概要
発言あり
これからの保健所長
著者: 阿部巴1 田中久恵2 米山嶢3
所属機関: 1新潟県立がんセンター新潟病院 2国立公衆衛生院公衆衛生看護学部 3(社)長野県食品衛生協会
ページ範囲:P.221 - P.223
文献購入ページに移動筆者は,昭和30年代の末から4年ほど新潟県の保健所栄養士として働いた経験がある.当時の保健所は,感染症対策から慢性疾患対策へ重点を移す過渡期にあった頃であった.とはいっても結核,赤痢などの感染症対策が華やかなりし時代でもあった.
当時,ハイカラな言葉(?)として私が感じたのは,地区診断という文言だった.どこの保健所の書棚にも『地区診断の理論と実際』があり,公衆衛生院帰りの若い予防課長さんの座右の書であったようだ.その,予防課長さんから,昭和40年代の保健衛生行政は,まず,地区診断に基づきPlan,Do,Seeを,そして,地域に根ざした草の根のような仕事こそ,これからの公衆衛生に要求されると教えを受けた.従来の感染症対策の手法ではなく,住民の主体的参加に基づく事業へと,新しい発想が求められていた時代でもあったのだろうか.私が尊敬している保健所長さんは,「俺の仕事は市町村長とお茶を飲んで,保健衛生行政への投資は,住民の幸せにつながる基本であることを説くことだ」と言っておられた.このような親分肌の保健所長さんのもとでは当時,職員の志気もすこぶる高かったことを思い起こす.
掲載誌情報