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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生55巻5号

1991年05月発行

雑誌目次

特集 学齢期の子供と現代社会

現代の子供のからだ—小児成人病を中心に

著者: 玉沢昭

ページ範囲:P.296 - P.300

■はじめに
 近年疾病構造の変化に伴い,学童においても結核を中心とした伝染性疾患は著減し,代わって心臓障害,腎疾患,貧血や小児成人病といわれる疾患群の早期発見が行われるようになった.現代社会で大きな問題となっている成人病のうち癌等の腫瘍性疾患を除く疾患は,実は子供の時からの食生活の欧米化,富栄養化と運動不足等の生活習慣に基因して,すでに小児期から少しずつ進行していることが明らかとなって来た.厚生省でも小児成人病研究班を組織してその対策に乗り出し,全国の予防医学協会を通じて小児成人病予防検診を試みている.小児成人病という言葉になじみの少ない読者も多いと思われるので,日本学校保健会脂質等代謝委員会(委員長:大国真彦教授)による小児成人病の定義について説明をしておく.

登校拒否—子供のライフストレスと学校教育を中心に

著者: 上林靖子 ,   斎藤万比古 ,   森岡由起子 ,   中田洋二郎 ,   藤井和子 ,   北道子 ,   佐藤至子 ,   梶原有二 ,   生地新

ページ範囲:P.301 - P.306

■登校拒否とは
 学校を休むということが,明らかな病気ではないことは自明のことである.通常子供が学校を欠席する第1の理由は病気である.教育がそれほど重要視されていない社会では,子供は登校することより,家事や労働の一翼を担い役立つことが尊重されるので,時にはそれが第1の理由になることがある.学校教育に伴う経済的負担をまかなえない場合もあるであろう.これらのために長期にわたり欠席する子供たちがいることは,義務教育が制度化されたのち重要な問題となってきた.ところが,このような登校の障壁となる条件がないにもかかわらず,長期に欠席する子供たちが少なからず存在している.これらのうち,親に無断あるいは同意・承認を得ないままに欠席するものがいわゆる「怠学」であり,教育上は生徒指導の重要な課題となっている.
 登校拒否は,Broadwin2)が怠学の特殊型として記載したことに始まる概念である.彼は怠学とは異なり母親が十分に承知している欠席の2例を報告し,その機制として母親との間の未解決の葛藤の存在を指摘した.その後,1940年代には欧米で臨床研究が重ねられ,学校恐怖症としてその特徴が次のように記載された.

現代社会と子供のアレルギー疾患

著者: 早川浩

ページ範囲:P.307 - P.311

■はじめに
 特集「学齢期の子供と現代社会」に寄せて,子供のアレルギー疾患の問題について考えてみよう.
 アレルギー疾患は,悪性腫瘍や重症の内臓疾患あるいは結核などの慢性感染症と比べると一般に軽症の場合が多く,直接の被害を受けるのは患者本人に限られるので,公衆衛生の立場からもあまり重きをおかれていなかった.しかし,近年は他の重症疾患への対策が次第に充実し,かつ感染症が克服されてくると,残された大きな問題の一つとしてアレルギー疾患が注目されつつあると考えられる.また,後述するようにわが国では社会の都市化,工業化にともなって子供のアレルギー疾患が増加しており,しばしばマスコミにも取り上げられてその対応が社会問題化してきているといえよう.
 本稿では,わが国の現在における子供のアレルギー疾患の実態とその問題点について,ことに学齢期を中心に簡単に述べる.

高層住宅と子供

著者: 織田正昭 ,   日暮眞

ページ範囲:P.312 - P.316

■はじめに
 大都市の高層のオフィスビルに押されるように近年,大都市周辺地域で高層集合住宅が急速に増えている.狭い国土に加えて,都市機能の集中化,人口の都市圏への集中とそれに伴う地価の高騰,家族形態の変化などわが国の諸事情からすれば,住居の高層化は流れとしてはある程度自然なのかもしれない.最近の新聞や雑誌などの住宅の宣伝広告を見ていると,20階,30階といった高層住宅の宣伝も目に入る.先頃,東京都内には40階,高さ120メートルの超高層マンションも出現した.わが国の建築技術からすれば,超々高層住宅も可能であろう.実現の可能性は別にしても,いくつかの建設会社から高さ1,000メートル,2,000メートル,4,000メートル(何と富士山よりも高い!)といった驚くべき超々高層の人工居住空間のアイデアも出されている(表1).しかし現在建てられている高層住宅は,高さからみればせいぜい100メートル,200メートルであるから,高層という物理的条件が直接的に人体に影響を及ぼすなどとは,少なくとも現段階では考えにくい.

児童相談所からみた現代の子供

著者: 上出弘之

ページ範囲:P.317 - P.320

■はじめに
 児童相談所は,改めて述べるまでもないと思うが児童福祉法に基づいて,各都道府県と政令指定都市に設置されている,公立の相談・措置機関であり,現在全国で170カ所を数えている.これらの児童相談所には,児童に関するもろもろの相談が寄せられるが,ここでの児童とは,学童ではなく,18歳未満のすべての子供を指すことを注意しておきたい.またもろもろの相談とはいうものの,医療保健関係,身体障害関係についての相談は,医療機関や保健所に寄せられる場合が多いであろうし,非行についての相談も,少年法との関係で児童相談所には比較的年少の(中学生ぐらいまで)ケースが主体となっている.しかし,子供の相談機関としては,医療・保健関係,教育関係そして司法関係など他の相談機関に比べ,児童相談所は最も間口が広い上,受ける件数も大変に多いということができよう.
 間口の広いことから,児童相談所での相談内容は,その時代時代の子供の姿や問題をかなり的確に反映している.本稿では,児童相談所での相談統計を通しつつ,現代の子供の姿や問題について,感じているところを述べることとする.

活動レポート

高校生に対する「禁煙講話」の効果について

著者: 二里幸夫 ,   菅生修 ,   重藤和弘 ,   竹本泰一郎 ,   水久保真弓 ,   沼冨美子 ,   内田由佳里 ,   松園朱實 ,   坂下照代 ,   平山郁香 ,   松本文子

ページ範囲:P.321 - P.324

●はじめに
 肺癌による死亡率は年々増加しており,近い将来には胃癌を抜いて部位別の癌死亡率の第1位となることが予測されている1).特に長崎県は,昭和62年・63年ともに肺癌による死亡率は全国で第2位であり2),肺癌対策が急務であると考えられる.
 肺癌対策としては,胃癌対策と同様,早期発見・早期治療をめざした検診がこれまで各地域で実施されてきている.その有効性については,いまだ多くの議論がある3〜5).したがって,肺癌の予防としては禁煙教育による一次予防の重要性が叫ばれ6,7),全国各地でさまざまな禁煙教室が開催されている.しかし,それらの報告によると,すでに喫煙習慣を持っている喫煙者に対して禁煙教育を実施しても,それにより行動変容を起こさせることは容易でないことがうかがわれる.
 成立した行動様式を変容させることが,かなりの困難を伴うことを考慮すると,すでに喫煙習慣を有しているものを対象にするよりも,まだ喫煙習慣を獲得していない若年層を対象に禁煙教育を実施することがより有効であることが考えられる.

研究ノート

長崎における初潮年齢の時代推移

著者: 早田みどり ,   守山正樹

ページ範囲:P.325 - P.328

●はじめに
 初潮は,女性の性成熟過程に起こる変化の中で最もはっきりと自覚されるドラマチックな現象であり,女性の二次性徴を考える上で重要である.初潮年齢に関する調査は世界各地で行われており,人種・地域による差が少なからず見うけられる.
 西欧では過去1世紀にわたり初潮年齢の若年化が見られ,Tanner1)はその速度を0.4ヵ月/年と計算している.日本では,第二次世界大戦後急激な初潮年齢の若年化が起こったとされており2),守山ら3)は仙台における調査でその速度を0.11年/年と報告している.一方,それ以前にも穏やかな若年化が存在し,急激な若年化の起こる直前に一時的な初潮の遅れが見られたとする報告もある4).しかしながら,初潮年齢の変動が大きかったと推測される1930年代から1940年代にかけての情報は十分でなく,若年化の開始時期およびその前後の推移については不明な点が残されている.本調査の対象者は1870年から1971年の間に出生しており,1世紀にわたる初潮年齢の推移を観察することができた.

調査報告

高齢者の入退院の動向および退院患者の在宅ケアのあり方について

著者: 阿曽洋子 ,   萩原しづ子 ,   前野さゆみ ,   朝倉新太郎 ,   多田羅浩三 ,   石川克己 ,   和島剛 ,   川口敦子 ,   小森輝子

ページ範囲:P.348 - P.353

●はじめに
 1989年の年齢階級別人口構成によると,65歳以上の高齢者は総人口の11.6%を占め,年次が進むにつれ構成割合は漸次増加している.また,1986年の国民生活基礎調査によると,65歳以上の者の有病者率は人口千対644.4であり,高齢者の大半は何らかの疾病を有しながら生活をしている現状である.さらに,通院治療を受けている者は人口千対524.6と有病者の約81%にあたる.疾病を有しながら在宅で生活を送る場合,何らかの家族の介護を必要とすることが多い.しかし,家族による介護力には限界があり,その限界は介護内容や介護能力,介護意識,介護を要する期間,介護者の健康状態と疲労などが関与すると考えられる.
 今回調査を行ったS市では,65歳以上の人口が総人口に占める割合は,1989年1月末で6.6%であり,全国よりもやや低い.しかし,S市の平均年齢が1984年には31.1歳であったものが,1988年には33.1歳になっており,人口の老齢化は漸次進行している.
 また,S市では1988年の65歳以上の者のうち,独居者は16.0%,家族との同居者は84.0%であった.

乳幼児および学童・生徒のBCG接種技術評価—昭和52年から62年のツベルクリン反応結果の推移

著者: 石井英子 ,   笹野英子 ,   沢井嘉子

ページ範囲:P.354 - P.357

●はじめに
 結核予防対策は,保健所・学校・医療機関相互の連携の中で,結核健康診断,予防接種が行われてきている.乳幼児の予防接種は,結核予防法に基づき保健所において,学童・生徒は学校保健法に基づき学校において,それぞれ行われている.このような中で,BCG接種の技術評価を的確に行うことは,結核を予防する上で重要である.今回は,昭和52年から昭和62年までに名古屋市・千種区で実施された乳幼児,学童・生徒のツベルクリン反応結果からBCG接種技術についての評価を行ったので報告する.

大阪府M町における肝がん,肝硬変死亡患者遺族訪問調査—症例対照研究の手法を用いて

著者: 森永謙二 ,   津熊秀明 ,   藤原律子 ,   坂戸純也 ,   勇谷利枝 ,   荒木睦美 ,   仲尾美穂 ,   高橋シズエ

ページ範囲:P.358 - P.361

 大阪府尾崎保健所管内のM町の肝がん,肝硬変死亡率は同じ保健所管内の市町と比較して著しく高い.その要因を明らかにするため,死亡患者遺族の訪問調査を行い,症例対照研究の手法を用いて解析した.
 1984年1月から86年12月までのM町の死亡者のうち,死亡時年齢が74歳以下で,原死因が肝がん,肝硬変の44例を症例群とし,その他の死亡者80例を対照群とした,
 解析の結果,飲酒が独立した危険因子であることが示唆された.しかし,喫煙によるリスクの高まりはみられなかった.輸血によるリスクの高まりは有意ではなく,食習慣,職業歴には差がなかった.

現代の環境問題・14

廃棄物汚染—産業廃棄物とその対策

著者: 田中勝

ページ範囲:P.329 - P.331

 現在,わが国においては,都市においても地方においても廃棄物の処理が問題になってきている.廃棄物処理は,本来生活環境の保全,公衆衛生の高いレベルを保持するために重要な役割を担っているが,処理処分に伴う環境汚染が懸念されてきている.ここでは廃棄物,特に産業廃棄物への対策について環境保全の観点から述べてみたい.

地域リハビリテーションと機能訓練事業

東大阪市東保健所における機能訓練事業

著者: 吉川卓司

ページ範囲:P.332 - P.334

●はじめに
 東大阪市は大阪府の東部に位置し,生駒山地を介して奈良県と接している人口約52万人の政令指定都市である.もともと三つの市が合併してできた市であり,各種行政機関が今も3地区に分かれて活動していることが多い.保健所も東,中,西と三つあり,そのうち東保健所管内は面積23.73km2,人口125,963人,人口密度5,308(人/km2)であり,3地区の中では最も人口密度の低い地域である.そして,地区の東側は生駒山麓となっているため,傾斜地・坂道が多いという特徴をもっている.
 この東大阪市東保健所における老健法に基づく機能訓練事業に,スタッフとして参加して4年が経過した.これまでの実践をふまえて,政令指定都市の一地域における機能訓練事業の成果と問題点について述べる.

保健所機能の新たな展開—飛躍する保健所

活動評価・企画・実施を通しての人材育成

著者: 宇田英典

ページ範囲:P.335 - P.337

◆はじめに
 保健所がいま社会環境の変革に適応していないという一面から,新たなシステム構築が模索されようとしている.確かにこれからの時代,外的環境に即した新規事業や新しい枠組みが必要であろう.しかし,それぞれをそつなくこなそうとすると,各々の事業に重みづけがないことに加え,旧来の業務と重なり,保健所の機能が浅く広くという方向に進むこともいなめない.
 できることならスパッと昔の女と別れて,新しい彼女との生活が始められればそれにこしたことはない.しかしそれがかなわないとすれば,いささかなりと工夫しながら,時代に適応していくように彼女と自己を変革していく他なかろう.その骨子は言うまでもなく,評価・企画・実施の実践である.保健所機能の重要なパーツとして,今後育てていこうとしている当保健所での試みを紹介しながら,本稿をまとめてみた.

進展する地域医師会の公衆衛生活動 在宅ケアモデル事業を進める熊谷市医師会・2

対象者の選定と主治医の役割

著者: 山崎寛一郎 ,   山崎望人 ,   冠木徹彦

ページ範囲:P.338 - P.340

 〈モデル事業の対象者〉 サービス供給者は,在宅の要介護老人および在宅支援体制が整ったことにより退院した老人等とする(厚生省「訪問看護等在宅ケア総合推進モデル事業実施要綱より).
 山崎会長「この事業の目的は寝たきりをなくすということにあるわけですが,厚生省は訪問看護の対象者として,現在,在宅で寝たきりになっている人,そして訪問看護が実施されれば入院しなくてもよい人を挙げていますので,その意図ははっきりしているわけです.」

保健婦活動—こころに残るこの1例

「もう少し,続けてみようか」

著者: 堀恵美

ページ範囲:P.341 - P.341

 この何年間かを,私は保健婦と言えるのだろうか,と思いながら過ごして来た.年間稼動時間のうち,20〜30%を占める事務量に訪問時間はほとんどなく,増えて来た事業をこなしていくのがやっとで,雑誌を読んだり,他の町村の保健婦の情報を得たりすると,事業の内容に悩むのではなく,その手前の状態に悩んでいる自分が取り残されていくようで,焦り,このまま続けていていいのかと思い続けて来た.
 私の思い出すことと言えば,補助金のヒヤリング,種々の事務担当者会議,狂犬病の予防注射の登録事務,等々.“なぜこんなことを”と,悔しさで課長に食って掛かったこともあった.保健衛生の事務担当者がいないので,保健婦2名に栄養士が加わった現在も事務量に変化はなく,思うように事業を進めていけないこともある.そんな中で,保健婦としての意欲もなくなり,日々を過ごして来た.

目でみる保健衛生データ

食中毒

著者: 甲斐明美

ページ範囲:P.342 - P.343

 近年,赤痢,腸チフスをはじめとする法定伝染病が,抗生物質の普及や衛生環境の改善などによって激減したのに比べ,食中毒は一向に減少せず,むしろ増加傾向にさえある.これは,学校や事業所などにおける給食の普及・大型化,外食産業の増加,調理・半調理食品や輸入食品の普及など,我々をとりまく食生活の変化とも密接に関連しているものと思われる.

エスキュレピウスの杖

(14)第87回執行理事会

著者: 麦谷眞里

ページ範囲:P.344 - P.345

1.第87回執行理事会
 毎年1月は,WHOの執行理事会がある月である.日本は現在,執行理事を出していないので,議長にあらかじめ関心事項について登録しておかなければ発言できない.もちろん,投票の権利もない.執行理事の任期は3年で,連続して再選されることが禁じられているから,どのような国も最低1年は休まなければならない仕組みになっている.日本が所属している西太平洋地域の理事定数は,今のところ3人であり,日本は,1987年5月から1990年5月まで理事を務めたので,今は議席がなく,中国,パプア・ニューギーニア,トンガが,この地域からの理事を務めている.細かい任期の話は省くが,1993年1月には,再び事務総長の選挙があるので,日本としては,遅くとも1992年5月までには,執行理事国になっておかなければならない.
 さて,今回の執行理事会では,1992年〜1993年予算(WHOの予算は2年単位)の審議をはじめとして,様々な議論がなされ,合計26本の決議が採択された.これら決議のうちいくつかは,本年5月に開催される世界保健総会において,さらに個別に審議されたあと,採択される予定である.

発言あり

子供の人権

著者: 金澤正将 ,   小林美智子 ,   吉村英子

ページ範囲:P.293 - P.295

「求められる養育援助システムの確立」
 来るべき21世紀は,65歳以上の高齢者人口が総人口の20%以上を占め,大変な高齢化社会になることが予想されている.
 国や自治体においては,こういった事態に対処するため,さまざまな施策を計画しているところである.医療の発達や栄養状態の改善等により,多くの人々が長寿をまっとう出来ることは大変結構なことである.

公衆衛生人国記

山形県

著者: 新井宏朋

ページ範囲:P.346 - P.347

はじめに
 山形大学医学部では,昭和51年の第1期生の公衆衛生学実習から今日まで,“山形県の保健医療を考える”という統一テーマで実習をしている.我々の公衆衛生学実習の特徴は,疫学実習よりも政策科学実習に重点をおいていることである.各年度の実習にはサブテーマが設定されている.山形県のヘルスマンパワー(第4・8集),健康にかかわる地区組織活動の総合的研究(第5集),老人保健法にかかわる保健事業(第9集)等である.平成2年度(第14期生)の実習テーマは“山形県の公衆衛生に尽くした人々”とした.県内の代表的な公衆衛生活動を,それにかかわりあった人の面からとらえたものである.公衆衛生活動の現場における人々の問題意識,仕事の進め方,人と人との協力関係,その背景となる人々の“生きざま”を学習することが将来,医師となる学生にとって重要と考えたからである.本誌で連載中の公衆衛生人国記にヒントを得たものであるが,実習の最中に,公衆衛生人国記(山形県)の執筆を依頼されることまでは予定していなかった.この人国記は山形大学医学部の第14期生の全員参加により出来あがったものである.

保健行政スコープ

循環器疾患対策の新たな視点

著者: 土居弘幸

ページ範囲:P.362 - P.363

●はじめに
 循環器疾患は発症の予防および疾患の進展防止が可能な疾患であり,リスクファクターのコントロールがその鍵である.したがって,予防に焦点を当てた対策が重要となる.また平均寿命の延びと共に,循環器疾患を持つ高齢者が増加し“疾患を抱えつつも質の高いQOL”を保障する医療が望まれている.これら高齢者をめぐる施策の充実については,単に福祉政策だけでは十分ではなく,成人病対策の充実が必要不可欠である.すでに寝たきりとなった老人に対してリハビリテーションを行うことのみならず,寝たきりの原因疾患,すなわち脳卒中等の循環器疾患を予防することで寝たきりとなる人そのものを減らすことによって,より効率的な刻策が実施されよう.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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