icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生55巻8号

1991年08月発行

文献概要

保健婦活動—こころに残るこの1例

家族に問題をもつ精神発達遅滞児M君

著者: 土井千穂1

所属機関: 1熊本県宇土保健所

ページ範囲:P.571 - P.571

文献購入ページに移動
 宇土保健所では,昭和61年4月から幼児の育て方の学習の場として,「すこやか幼児サークル」(親子遊び教室)を実施しています.M君は,このサークルに参加した1人でした.母親から,「3歳なのに1人で何も出来ないし,言葉も遅い」という訴えがありました.名前を聞いても見覚えがなく,なぜ今まで把握できていなかったのか疑問に思っていた頃,他県のH保健所からケース連絡が来ました.M君は精神発達遅滞があり,家族の機能がないケースとして事例検討にあがっていた幼児でした.私は,ケース連絡票に目をはしらせ母親の名前を見た時思わず「あっ」と声が出ました.M君とは,3年前に出会っていたのでした.当時M君は,妹の出生で母の実家であるこの土地に帰ってきていました.「M君が伝い歩きをしない」と母親から相談があり,訪問したのでした.1週間後,「伝い歩きするようになりました」という母親と,M君には明るい笑顔がみられました.
 しかし,サークルに参加したM君と母親は,あの頃のイメージとは全くかけ離れた人として,私の目の前に現れました.M君は,保健所の玄関に入る前から,ワァーと泣き叫び手足をバタつかせ,なだめてもどうにもならないのです.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら