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特集 産業保健への免疫学の応用
有害物質暴露者の免疫学的特性—ベリリウム
著者: 工藤吉郎1 坂口武洋1
所属機関: 1聖マリアンナ医科大学衛生学教室
ページ範囲:P.171 - P.173
文献購入ページに移動ベリリウム(beryllium:Be)は原子番号4,原子量9.01のアルカリ土類金属元素で,1798年Vauquelin(フランス)によって緑柱石(比重:2.6〜2.8,硬度:7.5〜8.0)から発見された.Beおよびその化合物は,軽量で電気や熱の伝導性に優れているため,近代産業の発展に寄与してきた.例えば,原子量が小さいので,核分裂中性子の減速材や反射材として原子力産業,軽く耐熱性であるので宇宙航空関係産業,また銅などとのBe母合金は,非磁性・絶縁性・低融点・強硬度の点から電子産業で利用されている.さらに釣竿,歯科用プレート,セラミック製品などの日常生活用品としても浸透してきている1).
一方優れた有用性とは反対に,Beおよびその化合物の人や動物に対する健康障害は,中毒性・感作性・発癌性・催奇性・線維原性の様々な報告がなされている2).Beによる初期の健康障害は,工業的に利用され始めた1930年代から散発的にみられており,Be精錬作業者に急性肺炎,蛍光灯製造作業者に慢性ベリリウム症が多発し問題となった.以後,アメリカではBe使用の規制が強化され,作業環境濃度は2μg/m3以下とされた.
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