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特集 提言—あすの公衆衛生
母子・小児保健を中心に
著者: 平尾敬男1
所属機関: 1兵庫県立塚口病院小児科部
ページ範囲:P.22 - P.24
文献購入ページに移動かつての母子・小児保健は,乳幼児や妊産婦の死亡の減少や病気の予防という,いわゆる肉体的に健康な子どもの育成を目指していたと思われる.しかし,その地域の保健衛生状態のレベルを反映するとされる乳児死亡率は,わが国では1947年(昭和22年)の出生1000に対し76.7から,以後急速に低下し,1990年(平成2年)には4.6となって,世界最低の乳児死亡率を維持している.一方,現在わが国の小児の死因の1位は損傷および中毒,すなわち不慮の事故および有害作用で,全死亡の約1/3を占めている.以下,先天異常,周産期に発生した主要病態,悪性新生物,循環器の疾患と続き,この5位までで全死亡の80%となっている.このことは,現在のわが国の小児保健および医療レベルでは,克服されるべき病気ではもうあまり死亡しないということを示している.したがって,これからのわが国の小児の医療・保健の方向は,単に病気から生命を守る,ということだけではなく,さらに病気の予防あるいは早期発見による疾患対策に加え,次代を担う心身ともに健全な小児を育成するという視点で考えられなければならない.
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