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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生57巻12号

1993年12月発行

雑誌目次

特集 健康スポーツ科学の展開

健康スポーツ科学の課題と役割

著者: 浅見俊雄

ページ範囲:P.828 - P.831

 健康スポーツ科学とはどんな学問分野なのだろうか.最近よく聞かれるようになった用語であるが,これを専門の学問分野として扱っている学会はないし,明確な定義はまだされていないといってよい.使う人,受取る人によって,この用語のニュアンスは微妙に,あるいはかなりはっきりと違っているように思われる.この特集の他の筆者の諸先生方の論調にも,こうした違いが表れていることが予想される.編集者から期待されているこの特集での筆者の役割は,総論的に健康スポーツ科学についてのまとめをやれということである.しかし,これを書いている時点では諸先生方がどんな議論を展開されるのかは見当もつかず,その上,筆者自身にこのことについての明確なビジョンがないのが現実だから,どう議論を展開していくか迷いに迷いつつ筆を進めている.いろいろ文献に当たって,これまでの論調を調べた上で執筆すべきなのだろうが,それを怠っているうちにタイムリミットとなってしまった.筆者の頭の中にもやもやとしている健康スポーツ科学についてのイメージを何とかまとある以外に道はないようである.

健康スポーツ実施指針の私案

著者: 石井喜八 ,   日比端洋

ページ範囲:P.832 - P.836

◆はじめに
 われわれは,この世に生をうけてから死ぬまで,呼吸を繰り返し,心臓が動き続け,血液を循環させている.この働きは主に空気中からの酸素の取り込みである.また,口経的に得た栄養物の異化作用によって得たエネルギーは,身体の各筋組織器官に運搬され,筋組織ではそれを機械的エネルギーに変換して,日常生活行動の力を発揮している.この日常的活動は,生命維持の最後の一時まで食餌を口に運び,排泄物の処理を行う能力の維持を,自分自身によって行えることを望んでいる.これは,人間における生活運動の最低限の維持レベルであると考えられる.
 動くからだが正常な状態にあるとし,その性能検査が行われてきたが,これまでの体力測定は,人間の最大運動能力を発揮するレベルを対象にしてきたと思われる.これが運動生理学の領域の中の一つの課題であった.そして,いくつかの見解が得られた.例えば,加齢に伴う最大酸素摂取量や筋力は,およそ20〜25歳を頂点としてそれ以後,年齢とともに減少することが明らかとなった.これは,高齢化社会への移行によって,生存期間が延長したことによって拡大したたあに確かめられた現象といえる.

スポーツの臨床医学

著者: 高澤晴夫

ページ範囲:P.837 - P.840

◆はじめに
 スポーツは激しい身体活動を必要としているので,その健康面に及ぼす影響は大きいものがあろう.スポーツ活動そのものが健康維持に対して果たしている役割は決して否定出来ない.
 しかし,整形外科の立場からはスポーツ障害の治療,予防が重要な問題となる.それには,スポーツの行い方が問題であり,適切に行えばその効用ははかり知れないものがある.
 スポーツを行ううえには,スポーツ障害について正しい知識を持つことがなにより望まれる.
 スポーツは子どもから中高年まで,あらゆる年齢層にわたって盛んである.そのレベルもいろいろである.トップレベルからレクリエーションまで多くの段階がある.当然のことながら,年齢,性,レベルによってスポーツの行い方には違いがなければならない.どのようにスポーツを行うかである.

エアロビックダンスと健康スポーツの推進

著者: 星永

ページ範囲:P.841 - P.845

◆はじめに
 近年,健康に対する国民の認識はかつてないほどの高まりをみせている.この健康ブームに伴って健康科学に対する理解も深まってきた.その中で従来,身体を通しての美の表現であり,他のスポーツとは異なる性質をもつとみなされていたダンスも,トレーニングとしてのダンスという新しい領域を確立し,健康・体力づくりのための運動プログラムに取り入れられるようになってきた.それはK.H.Cooperのエアロビクス理論に基づき,1969年にJ.Sorensenが考案したエアロビックダンスである1).日本には1981年に紹介され,運動種目としての歴史は浅いが,その普及はめざましく,実施者は400万〜500万人にも及ぶといわれている.この理由には,ダンスの豊富な動作を利用して,かなりの努力を要するトレーニングも音楽に合わせて,飽きずに楽しく運動が行えるという他のスポーツにはない特徴を持つためであろう.
 ところで,健康的な生活を送るためには生涯にわたって運動を行い,体力の維持増進に努めることが必要である.しかし,本学の女子学生を対象に健康に関する調査を行ったところ,体育の授業以外に運動を行っていない者が8割以上おり,学生の運動不足が目立った.

日本健康スポーツ連盟の活動

著者: 玉利齊

ページ範囲:P.846 - P.849

◆はじめに
 日本健康スポーツ連盟の活動を説明する前に,世界と日本ではいつ頃から健康スポーツという概念が生じて来たのか考えてみたい.
 話は飛躍するが7〜8年前,イタリアのポンペイの遺跡を訪れたことがある.周知のようにポンペイは,紀元80年頃ベスビオス火山の噴火によって熱風に襲われ,瞬時に多数の人々が死亡し,生前の生活の状態のまま埋もれた古代都市である.約2000年前の古代の人々の生活が,ありのままに残されている姿に感銘を与えられるのは筆者だけではあるまい.中でも筆者が非常に驚いたのは公衆浴場の形態である.ローマ人が風呂を好んだことは有名で,ローマ風呂という名が現在も残されていることで承知していたが,その作りが湯船のあるスペースとスティームバスのスペースとに分かれ,しかも入浴後にくつろぐサロンと飲食をするスペースがあることだった.
 さらに刮目したのは,なんと浴場と隣接して運動場のスペースが設けられていることだった.このことは現在のヘルスクラブやヘルススパと基本的な形態は全く変わらず,2000年前にローマ人たちは今日の健康産業の原型をすでに所有していたわけである.

スパ・フィットネス研究所の活動—スポーツ指導現場への科学的サポート

著者: 江橋博

ページ範囲:P.850 - P.853

◆はじめに
 改めて申すまでもなく,現代のわが国においては,従来の「どうしたら長生きができるか」という時代から,「この高齢化社会をどのように生きぬくか」ということが重要なテーマとして掲げられる時代である.したがって中高年齢者の占める割合は急速に増加し,いろいろな局面でこの年齢層が注目されている.とくに健康・体力づくりに関しては,いわゆる運動不足病ともいわれる心臓病,高血圧,糖尿病,腰痛などの発生数が多く,この年代ではこうした健康障害に陥ることを予防するための運動や食生活の重要性など,健康・体力づくりの意義が強調されている.
 こうした社会的背景もあって,民間のスポーツクラブや公的機関の健康増進施設が雨後のタケノコのように建設されたのは,今から7〜8年前である.しかしバブルがはじけた現在は以前のような勢いはなく,流行に乗って安易にオープンしたスポーツクラブなどは閉鎖に追い込まれているのが現実である.このような施設は,しっかりした設立の理念を持たず,ただ流行に走って収益ばかりに視点をおいた例が多く,真の健康・体力づくりを指向した施設とは考えにくいところがあった.

スポーツ医学からの貧血予防対策—短期大学女子バレーボール選手の調査から

著者: 多田幸信 ,   千葉正

ページ範囲:P.854 - P.857

◆はじめに
 近年,わが国のスポーツ人口の増加はめざましいものがあり,その要因はスポーツ少年団の増加,女性の積極的なスポーツへの参加,中・高年齢層のジョギング,ゲートボール人口の増加などであると思われる.
 スポーツの実践は健康を維持・増進する目的であれ,世界で金メダル獲得を目標とするトップアスリートであれ,精神面の充実や心肺機能の向上など健康阻害因子を除去,防止するが,一方ではスポーツ外傷・障害をもたらすことも多い.国体空手道競技出場選手(延べ376名)の3年間にわたるアンケート調査でも,毎年約半数の選手が過去1年間に,なんらかの外傷・障害の経験があると答えている.外科系の外傷・障害が主であるが内科系の障害もみられ,なかでも貧血が高頻度にみられることは諸家の報告と一致している1,2)
 1990年から岩手県一関市にあるA短期大学女子バレーボール部のメディカルチェック,栄養摂取状況の調査などスポーツ医学の面からサポートをしている.今回はスポーツ選手のなかでも比較的貧血が多いとされる女子バレーボール選手の貧血予防という視点から,栄養摂取状況からみた血液性状の変化についてわれわれの成績の一端を述べ,サポートの実践を紹介する.

健康スポーツ科学の教育システムと展望

著者: 丹羽昇

ページ範囲:P.858 - P.862

 近年,余暇時間の増大や生活の利便化,所得水準の向上,高齢化の進展,生活意識の変化,生涯学習への期待など社会環境の変化につれて,人々が豊かで潤いのある生活を求めるようになってきた.これに伴い,スポーツに対する国民の関心が高まり,スポーツを行う人々が増加している.
 このような状況の変化を受けて,文部省では平成4年度の『教育白書』の第1編で,わが国の文教施策として「スポーツと健康—豊かな未来に向けて」を特集として取り上げている.

講座 10代のこころを診る—思春期相談のために・12

ティーンの危機を支える

著者: 上林靖子

ページ範囲:P.863 - P.865

 もう10年以上の昔のことである1977年10月,高校生の一人息子を父親が絞殺するという事件があった.息子の家庭内暴力が手に負えなくなった父親が,思いあまっての凶行であった.有名高校の生徒,肉親による殺害というこの事件は,世の注目を浴びた.これについては本多勝一著『子どもたちの復讐』に詳しい.この青年はいくつかの精神科で治療を受けていた.にもかかわらず,こうした結末に至ったということは,思春期の子どもの問題に関わる私たちにとって衝撃的であった.最近では浦和市で起きた高校教師による長男殺害は記憶に新しい.このような事件が繰り返されるにつけ,わが国の思春期精神保健の未熟さを改めて感じさせられる.
 “10代のこころを診る”というこのシリーズでは,今日わが国で問題となっている青年期に特徴的な問題を中心に取り上げてきた.反社会的行動(暴走族,家出等),恋愛・進路・学業をめぐる挫折と悩み,あるいは家族の崩壊に直面しての苦悩などについて,紙数の制限もありふれられなかったが,重要な問題である.ティーンのこころにかかわる問題は実に多様である.最後にこの稿では,こうした危機にあるティーンへの援助についてふれることにしたい.

トピックス

東京都の「エイズ電話相談」とエイズ対策

著者: 稲垣智一

ページ範囲:P.866 - P.870

●東京都のエイズ患者・感染者の  現状
 東京都で最初のエイズ患者の報告は1985年である.1993年6月末現在,凝固因子製剤による者を除く都内の患者・感染者報告数は422人(全国の34%),エイズ患者報告数は98人(全国の45%)であり,都のエイズ対策は急務となっている.

研究ノート

脂肪酸構成からみた栄養摂取と循環器疾患の関連に関する研究—虚血性心疾患の集団内症例対照研究(都市)

著者: 佐藤眞一 ,   飯田稔 ,   吉田善彦 ,   小町喜男 ,   北村明彦 ,   木山昌彦 ,   内藤義彦 ,   小西正光 ,   小澤秀樹

ページ範囲:P.871 - P.875

●はじめに
 虚血性心疾患はその発生機序に血栓形成の関与が認められている.そして,血中の脂肪酸構成が血栓形成と深い関わりを持つことが,デンマーク白人とグリーンランド原住民を比較した疫学研究で示唆された1).わが国においても,農村および漁村で,血中の脂肪酸構成についての検討がなされつつある2〜4)
 我々は,先に,従来から疫学調査を実施している漁家,農村,都市の計6集団で,摂取食品中の脂肪酸の摂取量および摂取割合と,単一の実験室で単一の方法で測定した血清中の脂肪酸構成を比較したecologic studyを実施した5).この結果,摂取食品中,血清中ともn-3系脂肪酸の割合の高い漁家で,高血圧,喫煙,高脂血症等の危険因子の保有割合が高いにもかかわらず,心筋梗塞の発生が比較的低率であることを認めた.このことは,n-3系脂肪酸が梗塞の発生を抑制するという仮説を支持する可能性のある成績と考えられた.そこで今回,我々は,ecologic studyの成績から最も虚血性心疾患の発生率が高い都市集団を選び,n-3系脂肪酸が心筋梗塞の発生を抑制するという仮説を検討するためのfollow up studyを行った.

進展する地域医師会の公衆衛生活動

地域におけるMRSAの実態調査—新発田市豊栄市北蒲原郡医師会(1)調査に至る背景とその実施

著者: 川井和夫 ,   渡辺悌三

ページ範囲:P.876 - P.877

 MRSA(methicilline-resistant staphylococcus aureus,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)感染が医療機関において増加し,院内感染の大きな問題となっている.さらに最近では,この感染は地域の在宅患者にも波及し,地域の在宅患者のケアに携わる医療保健福祉関係者にも不安感が生じている.また,福祉施設などへの入所をめぐってトラブルもあるともいう.
 このような状況を背景に,新発田市豊栄市北蒲原郡医師会(富樫益郎会長)では,昨年,MRSA感染に対する不安が,在宅ケアや在宅医療の発展を阻害することのないように,医師会としても何らかの対策を立てる必要性を痛感,在宅医療におけるMRSA感染の実態について調査を実施し,その対策について検討した.

調査報告

高尿酸血症への生活行動習慣の関与

著者: 小野桂子 ,   井奈波良一 ,   吉田英世 ,   岩田弘敏

ページ範囲:P.880 - P.884

●はじめに
 痛風は,典型的な関節の激痛症状を呈するのみならず,腎障害,高血圧,高脂血症,虚血性心疾患,糖尿病などを高率に合併しやすい全身性の代謝異常で,その発症の背景にはプリン体の終末産物である尿酸が血液,組織中に蓄積する高尿酸血症がある1).血中尿酸はさまざまな要因によって上昇するが,近年,Laneseら2)とRaheら3)がヒトの血中尿酸値が日常的な種々の情動ストレスによっても一過性に上昇すると報告したことから,ストレスと高尿酸血症の関連が注目されてきている4)
 わが国でも,中高年男性における高尿酸血症者の増加1)が報告され,その原因として,企業体における合理化,OA機器等の導入によるストレスの増加や日常生活習慣の変化が考えられている.しかし,このストレスによる血中尿酸上昇の要因については,まだ十分に解明されていない.そこで今回筆者らは,ストレスに起因するヒトの直接的,間接的な血中尿酸上昇の要因を解明するための研究の一環として,高山保健所での事後指導来談者を対象に,血清尿酸値に対するストレス要因である食習慣を含む生活行動習慣の関与について検討したので,ここに報告する.

在宅ケアにおける都市部の医師および保健婦の連携状況

著者: 島正之 ,   仁田善雄 ,   田中良明 ,   安達元明

ページ範囲:P.885 - P.889

●はじめに
 人口の高齢化に伴って要介護老人の数も増加傾向にあり,特に病院や特別養護老人ホームに入院または入所している老人数が著しく増加している1,2).一方,在宅で介護を受けている老人数は横ばいで,高齢者人口に占める割合はむしろ低下しつつあることが報告されている2)
 こうした状況に対し,老人の多くは住み慣れた地域や家庭での生活を希望しており,在宅ケアを支援するシステムの整備が求められている3,4).そのためには,在宅要介護老人とその家族の多様なニーズに対応して,保健・医療・福祉が一体となった総合的なサービスを提供することが必要とされている1)
 しかし,往診や訪問看護は医療機関,訪問指導や機能訓練は市町村というように,現在はそれぞれのサービスの供給主体が異なっているため,連続性や総合性に欠けるなど,利用者にとって必ずしも有効なサービスとはなっていない1).特に大都市部においては,医師と保健婦をはじあとする関係職種間の連携が必ずしも十分に行われているとは思われない.
 そこで,都市部における在宅要介護老人に対する往診や訪問指導の実態を明らかにするため,医師および保健婦を対象とした調査を行ったので,その結果を報告する.

報告

1,5-アンヒドログルシトールを用いた糖尿病スクリーニング法の予備的検討

著者: 友岡裕治 ,   筒井博之 ,   今村英夫 ,   中村はま子 ,   鳥巣要道 ,   森山善信

ページ範囲:P.890 - P.892

●はじめに
 平成4年度から始まった保健事業第3次計画で新たに糖尿病への予防対策が強化されたが,現在用いられている糖尿病の検査法としては尿糖・血糖のみである.われわれは,フルクトサミンと随時血糖の組み合わせがある程度糖尿病および境界型のスクリーニングに有用な感触を得,すでに発表した1)
 今回は,糖尿病の治療前にその血清濃度が低下し,糖尿病治療後に血清濃度が増加するという極めてユニークな特徴を持ち,糖尿病の診療に有用と考えられている1,5-アンヒドログルシトール(1,5-anhydroglucitol以下AGと略す)について,糖尿病をスクリーニングするための検査法として用いることができるかどうかの予備的な検討を行ったので報告する.

保健活動—心に残るこの1例

在宅酸素療法のSさんとの出会いから

著者: 下田宏子

ページ範囲:P.878 - P.878

 私にとってSさん夫婦との出会いは,「よりよい在宅ケアを目指すためには」,また「人としての生き方とは」,「今,保健婦に何が求められているか」等を考えるにあたって,今までの活動を反省するとともに大きな学びとなったケースである.
 Sさん(62歳)とは,結核患者としてのかかわりから始まった.Sさんは19歳から53歳まで近くの砥石山で採石業につき,44歳で肺結核と診断され結核通院治療が始まった.56歳でじん肺と労災認定を受け,身体障害者手帳2級となり仕事をやめた.風邪をこじらせ入院した.主治医から在宅酸素療法(以下HOT)を紹介され,61歳から在宅ケアが始まる.妻が内服薬と酸素流量の指示を受けていた.

精神障害者の社会復帰にはたす家族の役割

著者: 松並順子

ページ範囲:P.879 - P.879

 そろそろ午後5時という時間に電話が鳴った.兄のことで今から相談に来たいという.声に真剣さを感じ,勤務時間外になることを承知で面接に応じた.弟は32歳,東京在住,明後日には東京に戻るとのこと.相談内容は「兄(M氏)が家にこもりがち,話をしても辻つまが合わない,緊張感があり口ごもる,そわそわして落ちつかない.6年前にも独語があっておかしいと思い精神科受診を勧めたが,本人が拒否した」とのことで,翌日の訪問を約束する.
 訪問するとM氏は不在で父と弟夫婦が在宅していた.M氏は保健婦の訪問を拒否し,朝いつもより早く起きて出かけてしまったとのこと.父がM氏の状況を話す.地元大学卒業後教員となったが2年で退職,その後自閉的生活を送る.M氏は緊張感強く音に敏感.食事も高級料理店で食べている雰囲気で息詰まるため,別々にしている.外では道の隅を下を向いて歩き,人と視線を合わせない.2人暮らしのため何かとM氏のことが目につくため,生活時間帯をずらしている.M氏はプライドが高く扱い方に苦慮している様子.次回訪問日を約束する.2回目の訪問ではM氏が在宅しており,拒否感はなかった.

発言あり

自動販売機

著者: 斉藤麗子 ,   坂井芳夫 ,   中村弘

ページ範囲:P.825 - P.827

「子供たちに売っているたばこ自販機」
 旅行で外国の街を歩いていると,道路の側に自動販売機がめったに見られないことに気付く.一方日本の街では,無秩序に多種類の自販機が立ち並び,街の景観を乱している.道路わきの無人の機械がライトアップされ,中の物を冷やしたり温めたりするために常に電力を消費している.外国に自販機が見あたらないことのひとつに,店の外に出しておくと機械が壊され中の金品が取られる危険があるからと聞いたことがあり,日本は治安が良いからかと納得してしまう.
 最近は自販機の種類も増えている.清涼飲料,酒,たばこ,コーヒー,スナック菓子,カップ麺,さらにコンドーム,ポルノ雑誌やアダルトビデオまである.お金さえ持っていれば,いつでも,どこでも,誰でも黙って買うことが出来る便利な機械であり,設置者にとっては人手をかけずに収入を得る方法でもある.しかし,はたしてこれで良いのか,問題もあると思う.

わが町の保健・福祉施設

浦河町保健センター

著者: 三島康子

ページ範囲:P.894 - P.895

 浦河町は昭和57年に震度6を経験した地震の多い町として知られる人口17,000人の,主に漁業と競走馬生産を産業とする町である.
 昭和60年に現在の役場庁舎新築の際,併設の形で保健センターが設置された.町民の自主的な健康づくりを促進するために,健康に対する正しい知識の普及啓発と,身近な健康チェックの場として保健センターが機能できるよう,保健婦(6人)・栄養士・歯科衛生士の8人のスタッフで,総合的サービスの向上をめざしている.

保健行政スコープ

保健行政上の優先課題の選択

著者: 橋爪章

ページ範囲:P.896 - P.897

 政権交代を機に,行政上の多くの課題について見直しの機運が高まってきている.もちろん,すべての行政施策にはその成立の背景があり,そうやすやすと見直しできるものではないが,この頁では,この機運を大胆に楽しんで論を展開してゆきたい.原点に帰って物事を考える習慣が消えがちな世の中にあって,しがらみの呪縛から一時抜け出し,一種の思考ゲームとして,この頁を楽しんでいただければ幸いである.

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ページ範囲:P. - P.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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