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文献概要
保健活動—心に残るこの1例
ワゴン車で暮らすSさん
著者: 高椋真弓1
所属機関: 1福岡県山門保健所
ページ範囲:P.144 - P.144
文献購入ページに移動精神分裂病のSさんは,55歳の男性である.23歳からの6年間と37歳からの16年間の計22年間の入院経験がある.Sさんは精神病院を離院し,生まれ故郷の廃船で生活しているところを発見された.兄と共に訪問し,Sさんと面接した.廃船の中には畳が1枚と,蚊取り線香が置いてあるだけだった.真っ黒く日焼けしたSさんは,かしこまって「今の生活に不自由はないが,早く家を探して移るつもりです」と話し,保健婦や兄の訪問は迷惑な様子だった.病気のことを話題にすると緊張した硬い表情に変わり,「兄と病院がぐるになり,私を陥れようとしている」など被害的な言動が出た.廃船での不自由な生活では健康が守れないと思うので,身体のことを心配していると伝えた.元主治医に連絡すると「病名は精神分裂病.病識はなく,関係妄想,被害妄想があり,入院中の療養態度は悪く,再入院は受け入れられない」とのことだった.
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