icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生57巻2号

1993年02月発行

文献概要

保健活動—心に残るこの1例

ワゴン車で暮らすSさん

著者: 高椋真弓1

所属機関: 1福岡県山門保健所

ページ範囲:P.144 - P.144

文献購入ページに移動
 「猛暑」,「台風」,「寒波」と聞くとSさんは大丈夫かと気になり訪問する.ワゴン車で暮らすSさんは「私は,神から選ばれて教祖になったのです.万物はすべて私の味方です」と笑いとばし,私の訪問を迎えてくれる.私は生活しているSさんの姿を見て,ほっと胸をなでおろす.
 精神分裂病のSさんは,55歳の男性である.23歳からの6年間と37歳からの16年間の計22年間の入院経験がある.Sさんは精神病院を離院し,生まれ故郷の廃船で生活しているところを発見された.兄と共に訪問し,Sさんと面接した.廃船の中には畳が1枚と,蚊取り線香が置いてあるだけだった.真っ黒く日焼けしたSさんは,かしこまって「今の生活に不自由はないが,早く家を探して移るつもりです」と話し,保健婦や兄の訪問は迷惑な様子だった.病気のことを話題にすると緊張した硬い表情に変わり,「兄と病院がぐるになり,私を陥れようとしている」など被害的な言動が出た.廃船での不自由な生活では健康が守れないと思うので,身体のことを心配していると伝えた.元主治医に連絡すると「病名は精神分裂病.病識はなく,関係妄想,被害妄想があり,入院中の療養態度は悪く,再入院は受け入れられない」とのことだった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら