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講座 10代のこころを診る—思春期相談のために・4
ひきこもり,無気力,モラトリアム
著者: 上林靖子1
所属機関: 1国立精神・神経センター精神保健研究所児童・思春期精神保健部
ページ範囲:P.261 - P.264
文献購入ページに移動10代の臨床では,しばしば長い間自室に閉じ込もっている青年についての相談を家族や先生などから受けることがある.たいていは本人がみずから診察室や相談室に現れない.身体の病気でないことはもちろん,関係者からの情報を集めてみても精神分裂病やうつ病など狭義の精神病とも考えられず,われわれにとってもっとも難しいケースのひとつであるといえる.
これらの青年の問題は「ひきこもり」,「無気力」,「モラトリアム」などとしてこれまでに論じられてきたものである.「ひきこもり」という用語は,もともと精神分析の防衛機制の一つを表すもので,意識することによって不安・不快・苦痛・罪悪感・恥などを体験する情動や欲動を無意識化し,精神内界の主観的意識的安定を保つという心理機制に注目した表現である.一般には現象として外界,とくに対人関係から身を引いている,つまり遮断していることを表している.無気力という用語はアパシーの訳として一般に用いられ,意欲の減退を意味するものであるが,ものごとに無感動,無関心であり,無為であるという状態像を表している.
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