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特集 国際化と産業保健
東南アジアの産業保健—タイを例として
著者: 川上剛1
所属機関: 1労働科学研究所教育・国際協力部
ページ範囲:P.304 - P.308
文献購入ページに移動タイでは現在急速な工業化が進み,職場の安全衛生の向上が焦眉の課題となっている.近年のタイにおける労働災害発生件数は1980年の26,385件から,1985年には44,429件,さらに,1988年55,966件,1989年67,912件,1990年には82,280件と,毎年1万件以上増加している1).この統計に含まれている内訳は労働災害が主であり,職業病発生については個々に症例が報告されているもののその全体像は明らかとなっていない.
表1は,現場の安全衛生問題について,労働局の監督官がバンコク周辺の70の小企業について視察調査を行った報告である2).各項目ごとにリスクが高い(5段階評価で5ないし4)と判断された企業の割合を示している.各職場に改善を要する様々なリスクが存在することがわかる.
タイの安全衛生の全体像についてはすでに日本語で書かれた文献があるので,参照していただきたい3〜5).安全衛生向上のための行政サービスの充実や関係法令の整備,安全衛生に関する情報の普及,被災者への補償,職業病診断能力の向上と統計の整備等,様々な課題が挙がっている.
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