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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生58巻1号

1994年01月発行

雑誌目次

特集 精神障害者の社会復帰

精神障害者の社会復帰

著者: 斎藤正彦 ,   松下正明

ページ範囲:P.3 - P.7

■はじめに
 1983年の厚生省精神衛生実態調査2)によれば,当時,わが国の精神病院に入院中であった患者の57%が,近い将来に退院可能であると判断されている.しかし,この調査を詳細に見てみれば,自立した社会生活が可能であると判断されるものは8.4%にすぎず,22.0%は「条件が整えば」退院可能,残る26.5%は「かなり困難を伴うが可能性はある」とされるものである.しかも,条件が整えば退院が可能とした例のうち,75.5%が家族の受入れを条件としていることを考えれば,先の退院可能な患者の割合を,独立して社会復帰が可能な患者の割合と受け取ることはできない.近年,しばしば耳にする「社会的入院」という言葉も,慎重に考えてみる必要がある.病院に長期入院するかわりに,精神障害者の家族にその保護を押し付けるような状況が,精神障害者やその家族にとって,よりよい状況であるかどうかは疑わしいし,そうした社会政策を採用するのであれば,社会は家族に対して十分な保証を考えるべきである.精神障害者の脱病院,脱施設,社会復帰問題が,1960年代から70年代の楽観主義の時代を遠くはなれて,厳しい現実に直面しながら新たな展開を模索する時代に入って久しい.

保健統計からみた精神障害者の社会復帰

著者: 藤田利治

ページ範囲:P.8 - P.12

■はじめに
 精神衛生法が22年ぶりに大幅に改正され,精神障害者の社会復帰の推進と人権擁護の促進を柱とした精神保健法が1988年7月から施行されている.病院中心主義から地域ケア中心への移行は,精神保健・医療サービスの趨勢といえる.精神疾患に関する保健統計を用いたこれまでの検討は公刊された統計資料に基づく分析1-3)であり,入院精神医療にまつわる在院患者率および平均在院日数の問題が指摘されてきた.しかしながら,精神疾患に関わる保健統計は,過去において指標の不適切な解釈や扱いがなされたこともあり,地域精神保健を推進するための十分な科学的活用が図られているとはいえない面がある.本稿では,世界的にも高い評価を得ている英国イングランドの精神保健との比較も交えて,社会復帰とは表裏の関係にある精神疾患での在院に関わる保健統計上の経年的動向について述べる.

社会復帰を促進するための条件—福井県入院患者調査から

著者: 吉田靖江 ,   林佳子 ,   白崎昭一郎

ページ範囲:P.13 - P.16

■はじめに
 昭和63年7月に精神衛生法が精神保健法となり,精神障害者の社会復帰の促進が法改正の重要な柱の1つとされた.福井保健所においても,昭和61年から地域精神保健活動を総合的かつ効果的に推進するために,保健・医療・福祉の職員で構成する「地域精神保健業務連絡会(以下,業務連)とする」を開催し,精神障害者の社会復帰をどう促進するか検討を重ねてきた.その結果,アンケート調査を実施し,社会復帰を促進するための条件についていくつかの示唆を得,その後の活動へと展開していった.それらの経過を報告し,今後のあり方を深めたいと考える.

地域における一人暮らしの精神障害者の実態について

著者: 佐藤敏子

ページ範囲:P.17 - P.20

■はじめに
 在宅の精神障害者が増加傾向にあるなかで,一人暮らしや高齢の家族と同居しながら生活している者も多くなってきている.今後は,家族の高齢化が進むことなどによって,一人暮らしを余儀なくされる障害者がさらに増えていくものと予想される.これらのことから,障害者が地域で自立した生活を送るためにはどうあればよいか.また,どのような支援が必要かを把握し,これらを基に,一人暮らしの精神障害者に対する支援対策等を検討したいと考え,盛岡保健所管内の障害者を対象に実態調査を行ったので,その結果について紹介する.

精神保健の地域ネットワークづくり—精神衛生都市をめざして

著者: 石神文子 ,   坂井芳夫 ,   山中克哉 ,   中尾恵子 ,   山下真澄 ,   香西孝純

ページ範囲:P.21 - P.24

■はじめに
 精神保健法(昭和63年)制定後,地域における社会復帰施設の一部が認可されたことは,地域精神保健業務に携ってきた私たちにとっては,まさに雪解けの感があった.すなわち,精神障害者は病者であると同時に,障害者であることが法的に認められたからである.たった一つ開かれた小さな突破口は,それまで精神障害者(以下,精障者)の在宅福祉に独自で取り組んできた者たちにとっては,一条の光と見え,その光に頼ってあえて大変な施設づくりにかかるなど,全国的に活気づいてきたといえる.
 昭和41年から,保健所の精神衛生相談員(現・精神保健相談員)として勤務してきた筆者にとっても,公的補助制度の無い中で作業所づくりに取り組んだ体験から,少なくとも公的助成が得られるものなら,当事者(家族を主として)が意欲的に取り組める目標として施設づくりを考えるようになった.
 今,地域精神保健の課題は,1つでも社会復帰に役立つ場を増やすことであると考える.その中で,枚方市内での地域精神保健の展開を述べ,本当の意味の精神衛生都市として,枚方がノーマライゼーションを実現していけるのかについて触れたい.

精神保健の地域ネットワークづくり—地域精神保健懇話会の活動を通して

著者: 鈴宮寛子 ,   佐々木タカ子 ,   竹中章 ,   南部由美子 ,   佐々木幹郎 ,   御幡芳子 ,   梶原美恵子 ,   元村公子 ,   小泉高子 ,   柴田スマ子

ページ範囲:P.25 - P.28

 入院中心の精神医療体制から地域におけるケア体制への変換を言われて久しいが,地域で精神障害者が生活していくには,医療の継続はもちろん,住居,就労,家族や地域社会の受け入れなど様々な問題があり,保健,医療,福祉の連携が不可欠である.しかし,現実には,連携の必要性を十分に感じながらも,関係者はそれらの問題解決の糸口を探ろうと,個々に努力を続けている状態であった.そこで,精神障害者の社会参加を援助し,ひいては,障害者にとって住みよい地域づくりをめざして,みんなで集まって勉強会をしようと,福岡市南区地域精神保健懇話会(以下懇話会)が昭和63年4月に発足した.発足から現在までの経過と活動内容を紹介し,また,懇話会の今後について述べたい.

精神保健の地域ネットワークづくり—精神保健推進員の活動を通して

著者: 今里典子 ,   今西芳子 ,   山根彦二

ページ範囲:P.29 - P.31

■はじめに
 精神障害者が「地域で普通に生きる」ためには,当事者とその家族の積極的な生き方が大切であるが,さらに住民の理解とそれらを支えるための受け皿の存在が重要である.
 そこで宝塚保健所では,精神保健法が施行された翌年の平成元年から,「精神保健地域ネットワーク事業」に取り組み,4年余りを経過して,精神障害者自身と精神障害者を取りまく状況が少しずつ変化してきている.
 本事業の実践者である精神保健推進員の活動が家族を勇気づけ,精神保健に関する窓口を持たなかった宝塚市を動かして,長い間の念願であった小規模作業所を設立することが出来た.さらに,作業所運営が軌道に乗る中で,通院患者リハビリテーション事業協力事業所を得て訓練生を送り,またアルバイトに行けるようになった者もあるなど,社会復帰への気運が高まりつつある.そこで「精神障害者の社会復帰,社会参加をめざした精神保健推進員活動」を目的として実施している“精神保健地域ネットワーク事業”を紹介する.

精神保健の地域ネットワークづくり—保健所デイケア活動の実践から

著者: 渡辺タエ子

ページ範囲:P.32 - P.35

■はじめに
 地域精神保健の一層の充実が求められている今日,保健所は,精神障害者の地域リハビリテーションの中核センターとして,いかにその機能を果たしていくかが問われているといえる.まず,精神障害者の社会参加,社会復帰を考えるとき,“障害”をどうとらえるかが重要なことであると思う.障害の概念を「疾患によって起こった生活上の困難・不自由・不利益」ととらえ,精神障害者は,病者であるというだけでなく,社会生活遂行上の困難,不自由,不利益を被っている「障害者」であり,疾患と障害と,そして「健全」な機能や能力を併せ持つ人(住民)であるという理解を欠くことはできない.精神障害者の被る障害は,社会環境との関係に属するという認識が重要である.こうしたことから,保健所は,保健福祉的視点をもち,地域サポートシステムづくりも視野に入れた活動を期待されているのである.
 筆者は,埼玉県朝霞保健所新座支所において(昭和63年4月〜平成5年3月朝霞保健所新座支所に勤務),「保健所デイケア事業」(以下,デイケアと略す)を軸として上記のような観点に立った取り組みを展開してきた経験から,その実際を紹介し,デイケアを通しての精神保健の環境づくりのあり方について述べたい.

保健所社会複帰活動,受療相談と「生活の場」—自主研究会(「4木C・C」)からの問題提起

著者: 諸沢洋子 ,   石橋禮子 ,   林邦子 ,   島袋洋子 ,   伊藤弘人 ,   寺西秀美 ,   山岸浪子 ,   佐藤陽子 ,   塩家智津子 ,   結城佳子 ,   二戸セツ ,   宮本寿子 ,   山城久典 ,   吉永真理 ,   山村礎

ページ範囲:P.36 - P.38

■はじめに
 本小論では,保健所における社会復帰活動の動向を概観するとともに,私たちの事例検討会での保健婦事例の吟味を通じ,この分野に関する若干の問題提起を試みたい.
 わが国の保健所精神保健活動は,昭和40年の精神衛生法・保健所法一部改正によってスタートし,また「保健所における精神衛生業務運営要領」(昭和41年2月11日公衆衛生局長通知)により保健所は精神衛生活動の第一線機関として位置づけられた.その後,この活動は,ゆるやかではあるが着実に増加し,全国保健所保健婦の全訪問件数に占める精神障害者への訪問の割合は,昭和42年に2%であったが,平成元年には遂に20%を越えた1〜3)
 保健所における社会復帰活動は,このような訪問や相談業務などの一部として始まった.さらに「保健所における精神衛生業務中の社会復帰相談指導実施要領」(昭和50年7月8日公衆衛生局長通知)により,社会復帰活動が予算化され1),平成5年度には実施保健所は,806カ所(94.6%)に達したという4).また,週3回以上のグループ活動が「保健所における精神保健業務中のデイ・ケア事業実施要領」(昭和62年9月24日健・医・発)として位置づけられた3)

デイトリートメントとしての精神障害者共同作業所—精神障害者共同作業所聞き取り調査から

著者: 岡田清

ページ範囲:P.39 - P.42

 通院しながら地域社会で生活する,こころの病とその障害を持つ人たちが増えてきている1).そしてそれに伴って,この人たちを対象にした「居住」,「生活」,「リハビリテーション」,「医療」のニーズが高まってきた.精神科病院・精神科クリニック(以下,病院と表現)や保健所精神保健事業で提供している地域援助プログラムの数は増え,内容も多様化し,複合的なあるいは統合的なサービスが提供される状況になってきた.その地域援助プログラムの要素を大まかに分けると,メディケーション,デイトリートメント,トレーニング,セルフヘルプを挙げることができる.この中のデイトリートメントを中心に展開している地域援助プログラムは,病院のデイケア,保健所のデイケア,保健所のグループワーク,精神保健センターのデイケア,通所授産施設,精神障害者共同作業所(以下,作業所と表現),サロン,ソーシアルクラブなどの名称で呼ばれ,地域社会で生活するこころの病とその障害を持つ人たちがそれぞれのニーズに併せて利用することができるようになってきた.

ある共同作業所の7年—棕櫚亭の歩み

著者: 石川義博 ,   天野聖子 ,   藤間陽子 ,   満窪順子 ,   寺田悦子 ,   天野寛 ,   添田雅宏 ,   山地圭子

ページ範囲:P.43 - P.48

■明るく元気に美しく
 棕櫚亭が国立市で産声をあげたのは1986年,東京都の精神障害者共同作業所通所訓練事業運営費など補助金交付制度ができてから5年後のことであり,都内には50数カ所の共同作業所があった.多摩地区では八王子,町田,小平,国分寺などに存在するだけで,117もの精神病院が偏在している地域にしては,社会復帰の足がかりは非常に少ない状況であった.
 私たち共同作業所のスタッフおよび運営委員は長年精神医療に関わってきて,民間主導型で閉鎖的な精神病院を変革しようと,それぞれの現場で努力していた.しかし,組織の壁の厚さに突き当たり,その動かしがたさに疲弊し,無力感を味わっていた.他方では精神病院退院者に対して地域の受け皿の必要性を切実に感じてもいた.閉鎖的な病院をようやくの思いで退院した患者でも,地域に支えがないために,たやすく再発し,再入院してしまう例が極めて多かったのである.

視点

世界の保健・医療を取り巻く情勢と今後のWHOのポリシー

著者: 中嶋宏

ページ範囲:P.1 - P.2

【保健医療の現状】
 1978年に「西暦2000年までに世界の全ての人々に健康を」というアルマ・アタ宣言が採択されて以来,15年が過ぎ,西暦2000年まであと残すところ,6年となりました.WHOの提唱し続けてきた「Health for All」という言葉はすでに世界各国に定着し,その実現のために,多くの国々,人々は地道な努力を続けてきています.その具体的な成果として,世界の保健指標に改善がみられています.例えば,乳児死亡率は1970年には出生1,000対97であったものが,1990年には65に低下し,同期間における平均寿命は57歳から64歳へと伸びています.一方,発展途上国における住民のプライマリ・ヘルス・ケアや清潔な水へのアクセスの向上といった,社会的な面での改善も認められています.
 WHOの事業についても,この間に多くのことが成し遂げられています.予防接種拡大計画(EPI)の推進により,現在では全世界の80%もの子供たちが6種のワクチン接種を受けられるようになり,このうちポリオについては西暦2000年までにはその根絶が期待できるようになっています.

インタビュー

西太平洋地域の公衆衛生活動とWHO

著者: 韓相泰 ,   紀伊國献三

ページ範囲:P.49 - P.53

 紀伊國 本日はWHO(世界保健機関)の西太平洋地域事務局の韓相泰事務局長をお迎えし,西太平洋地域事務局のお仕事についておうかがいしたいと思います.先生は西太平洋地域事務局長の何代目になりますか.
 韓 4代目ですね.

連載 地域精神保健の展開—精神保健センターの活動から・1【新連載】

地域精神保健の展開—連載にあたって—センターの虚像と実体

著者: 渡嘉敷暁 ,   瀧誠

ページ範囲:P.54 - P.60

 精神保健センターが各都道府県に1カ所あることは,かなり知られるようになった.しかし,その活動内容となると,残念ながらあまり知られていない.その理由としては,様々なことが挙げられる.治療機関でもなく社会復帰施設でもない.しかし,多くのセンターでは,その一部は行っている.そればかりでなく,相談と称する直接サービスも行っている.さらに,保健所等への技術協力,様々な職種を対象としての研修や精神保健の広報普及としての講演会や小冊子の発行,家族会や断酒会等の育成も仕事となっている.要するに一言では言い切れない業務を課せられていて,医療機関とか社会復帰施設とか保健所に類似したものとか,既成の概念に合わないのである.蝙蝠(こうもり)を鳥か獣かと議論するに等しい.類似の業務をしている機関が日本には他にないことも推測を妨げている.
 さらに,センターが精神保健の技術的中核機関というのも,分かり難くしている大きな理由であろう.

これからの保健婦活動 これからの保健婦活動をめぐって・1

これからの保健婦の役割を考える

著者: 佃篤彦 ,   坂田清美 ,   久保訓子 ,   柳川洋

ページ範囲:P.61 - P.64

◆はじめに
 社会の急速な高齢化,情報化に伴い,保健医療をとりまく環境が急激に変化している.主に保健所,市町村に配置されている保健婦の活動も時代に即した活動に変化することを求められている.しかしながら,保健婦活動の将来展望は必ずしも明確になっていないのが現状である.このレポートは,全国の保健所,市町村の保健婦の意見をまとめたものである.また,全国から無作為に選んだ国勢調査区の住民1,460人が,保健婦に期待する事項を合わせて示した.

進展する地域医師会の公衆衛生活動

地域におけるMRSAの実態調査—新発田市豊栄市北蒲原郡医師会(2)調査結果とその分析

著者: 川井和夫 ,   渡辺悌三

ページ範囲:P.66 - P.67

 検体は373名の患者,425検体が,47名の会員から提出された.その検査成績は次のように医師会のレポートとしてまとめられているのでそれから引用,紹介しよう.

報告

事業所が産業医に望む産業保健上の課題

著者: 井奈波良一 ,   岩田弘敏 ,   樫木直子 ,   吉田英世 ,   SM ミルボード ,   河村容子 ,   永田知里 ,   藤田節也 ,   佐々木千早 ,   黒谷一郎

ページ範囲:P.68 - P.71

●はじめに
 昭和47年,労働安全衛生法第13条において産業医制度が制定されて以来,50人以上の従業員を持つ事業所では産業医を選任して,その産業医に事業所の従業員の健康管理を委ねることになっている.しかし産業医といっても別に自らの主たる医療業務を持っていることが多いので,選任されてはいても事業所の期待どおり経済的,時間的にうまくやっていけるとはかぎらない.いずれにしても産業医が事業所で活動するには,その事業所の産業保健上の問題を認識し,その問題の大きさを把握し,それに応じて適切に対応していく必要がある.
 そこで筆者らは岐阜県の50人以上の従業員を持つ事業所に対して,産業医に特に心を配って欲しい産業保健上の課題についてアンケート調査したので,ここに報告する.

保健活動—心に残るこの1例

精神分裂病のKさんとのかかわりの中から

著者: 藤原美代

ページ範囲:P.72 - P.72

 精神分裂病のKさんは,35歳の女性で,23歳の時に発病し,短期間(3〜6カ月)の入院を6回繰り返している.30歳時の6カ月間の入院を最後に現在まで,外来治療で何とか家庭生活を送っている.星占いや少女マンガが大好きで,少女時代の気持ちをそのまま持っている感じがする.症状としては幻覚,妄想,思考伝播,興奮,拒絶,感情鈍麻などがあり,とても感情の起伏が激しい患者さんである.
 前任者から引き次ぎ,初めてKさん宅を訪問した時のこと.Kさんは自分の部屋に閉じこもり出てこない.ボリュームを一杯に上げた音楽,激しくドアを開閉する音が聞こえていた.そのうち急にドタバタと大きな足音をたて,私とKさんの父親が話をしている部屋に入ってきた.鋭い目つきで私をにらみつけ,「どうして保健所は私につきまとうのか,人を狂犬病と一緒にして,おせっかいは迷惑だ,おまえはどうして平和な生活を乱しに来るのか」と興奮し,激しい口調で訴えてきた.私は,担当が変わったので挨拶に来たことを伝えたが,より一層興奮し叫びながら家の中を歩き回り,落ちつかない様子だった.

保健行政スコープ

「痴呆性老人の日常生活自立度判定基準」について

著者: 滝川陽一

ページ範囲:P.73 - P.75

1.背景
 平成3年5月22日に公衆衛生審議会から「老人保健事業第3次計画に関する意見」が出された.この中で寝たきり老人については,基本的な日常生活活動に着目した判定基準を作成するべきであるとの提言がなされた.この提言に基づき厚生省では「寝たきりの判定基準」を作成すべく検討を重ねてきたが,検討の過程で,将来の保健福祉ニーズまで広く把握する必要性がある等の理由から,いわば寝たきり予備軍とも言うべき障害老人についても対象とすべく,平成3年10月に「障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準」として取りまとめた.また,検討の過程で,身体面のみでなく精神面についても着目したものであることが必要との意見もあったが,両者を同時に考慮したものを作成することが時間的な制約等から困難であり,この時点では身体面に着目した自立度判定基準を作成することとし,精神面に着目したものを作成することが将来の課題として残された.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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