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特集 老人保健福祉計画の推進
計画推進の経済環境
著者: 武田宏1
所属機関: 1日本福祉大学社会福祉学部
ページ範囲:P.106 - P.110
文献購入ページに移動老人保健福祉行政の「分権化」
1992年4月より,市町村に老人保健福祉計画策定が義務づけられたが,おおむねこの3月までには全国の約3,300市町村すべてが計画策定を終了する.他方で,町村への老人福祉・障害者福祉入所施設の措置権移譲も同時に行われたが,これらは在宅福祉サービスの法定化とあわせ,1990年6月の老人福祉法等改正(以下,「90年改革」と略称)により定められたものである.また公衆衛生審議会での意見具申に基づき,従来都道府県が設置してきた保健所機能の一部の市町村への権限移譲も検討・実施段階にさしかかっている.そしてこれが実現すれば,市町村が在宅・施設の保健福祉についての権限を一元的に持ち,計画的に実施する体制が実現するといわれる.
しかし筆者は,①市町村が地域福祉を自主的に構築できるように中央政府たる厚生省の省令・通知等を通じた統制の緩和,②市町村への福祉財源保障の2つの条件がなければ,老人保健福祉行政における真の市町村分権は実現しないと考える.この意味では「90年改革」は「不完全な改革」と評価している.
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