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特集 地域開発と公衆衛生—地域活性化の論点と戦略
地域人口学からみた公衆衛生
著者: 大友篤1
所属機関: 1日本女子大学人間社会学部
ページ範囲:P.161 - P.164
文献購入ページに移動「地域人口学からみた公衆衛生」というテーマの執筆を何気なく引き受けた後,いざ,執筆の段階になって,引き受けたことを後悔している.というのは,日本における公衆衛生は多分世界で最も進んでいると思うので,ここで,公衆衛生に関していろいろ述べる必要もないということに気がついたからである.筆者は,外国に出かけると,その国の人口学者から,よく,日本人の平均寿命が世界で最も長い理由を質問されるが,いつも,あまりよくわからないと答えることにしている.その理由は,平均寿命と裏腹の関係にある死亡力(Mortality)は,筆者自身の直接の研究領域ではないからであるが,しかし,人口学者のはしくれとして,わからないという答えだけでは済まされないので,結局,日本人の食生活ばかりでなく公衆衛生の発展や医療水準の上昇が平均寿命の延伸に大きく貢献していると思うと答えている.残念ながら,公衆衛生の発展がどのようなプロセスを経て死亡率の低下に関わってきたかという研究は,日本の場合には,筆者の知る限りでは,ほとんど行われていないのが実状であるからである.
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