icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生58巻5号

1994年05月発行

保健行政スコープ

愛だけでは足りないが

著者: 橋爪章1

所属機関: 1厚生省保健医療局企画課

ページ範囲:P.374 - P.375

文献概要

 公衆衛生行政関係者の間では「地域保健法」(案)がトピックである.この新しい法体系による地域保健の行方はおおいに気になるところである.保健所の機能強化,マンパワーの確保・充実,保健・医療・福祉の連携,市町村の役割の重視が,サービス提供者側から見た本法案の目指す方向であるが,住民側からは,要するに,行政アクセスがより身近になるということである.それでは行政アクセスが身近になるとどんな良いことがあるのかといえば,一般的に,ニーズの多様化に対応したきめ細かな行政サービスが期待される,と唱えられている.
 さて,行政を長くやっていると,ふと,そもそも行政とは何であるかの根源的な疑問が頭をかすめることがある.行政は,特に,個人の生活に深くかかわる公衆衛生行政は,人間生活への干渉行為であり,知らず知らずのうちに,本来侵してはならない領域にまで足を踏み入れているのではないだろうか.ひょっとして,行政は,その存在が感じられないほど希薄であるほうが良いことなのではないだろうか.行政アクセスが身近になるということは,もろ手をあげて歓迎してよいことなのであろうか.行政に求められている責務は,住民間に法の下の平等を担保するための均質化努力ではなかったろうか.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら