icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生58巻8号

1994年08月発行

雑誌目次

特集 公衆衛生活動の国際的な展開

国際協力と公衆衛生

著者: 蟻田功

ページ範囲:P.531 - P.535

◆はじめに
 最近,公衆衛生(public health)という言葉が使われなくなって来た.厚生省のかつての公衆衛生局は保健医療局という.アメリカは,現在保健省を“Health and Human Services”とよぶ.しかし,世界銀行1993年報“健康への投資”は,公衆衛生(public health)という言葉を大きな柱として保っており,アメリカのジョンズ・ホプキンス大学や,ハーバード大学等の大学院は“School of Public Health”である.
 公衆衛生の基本は予防医学である.予防は治療よりその費用効果が高く,国際協力,特に第3世界の保健問題は,予防を主眼とすべきである.1000床規模の病院建設を2つ行う費用で,ポリオは全世界から根絶されるであろう.
 日本は,この半世紀,飛躍的な保健指数の改善を示した(表1).
 この改善は,日本のライフ・スタイルーたとえば食生活,母親の保育教育などが,欧米諸国に比して健康的であり,すなわち予防医学的な要素によりこのような差ができたことを示している.アメリカの臓器移殖は,年間1万5千件を越し,日本とは問題にならぬが,アメリカ人の寿命は短い.

世界の結核問題と日本の公衆衛生

著者: 石川信克

ページ範囲:P.536 - P.539

◆世界的に増加している結核問題
 結核は忘れかけられた病気であるが,実は世界的にみても未だ17億人(地球人口の約3分の1)の感染者,年間800万人の新患者や300万人の死亡者がおり,単一病原体による最大の疾患である1).5歳以上の感染症死亡でみると結核死亡の大きさが浮き彫りにされる(表1).この傾向は過去数十年変わっておらず,今後は数でも率でも増加の予測さえなされている(表2).数的には,新患者の95%,死亡者の99%は開発途上国で起こっているが,工業先進諸国でも減少の鈍化から増加の傾向さえうかがえる国が出てきており,世界のどの地域でも公衆衛生上の問題といえよう.
 その原因としては,結核の慢性疾患としての生物学的な特色に加え,様々な社会・経済的な要因が存在している.すなわち,世界的な富の不平等や経済的停滞による人間の基本的必要(BHN)への対応不足,不十分な保健基盤,不十分な結核対策,新たなエイズの流行などが影響している.また過去数十年間,世界的に結核対策の重要性が無視されてきたことも事実で,このことが各国の結核対策への関心低下,国際支援・協力の不足を生み出してきたといえよう.

ポリオ根絶計画のアジアにおける進捗

著者: 千葉靖男 ,   黒岩宙司 ,   帖佐徹 ,   遠田耕平

ページ範囲:P.540 - P.543

◆はじめに
 EPI(拡大予防接種計画)の発展により,世界的に小児麻痺(以下ポリオと略す)の発生は著しく減少したが,開発途上国を中心として未だ年1万人前後の報告がある.
 ポリオはワクチンにより完全に防御できる疾患であり,WHOおよび世界の各国は西暦2000年までにポリオを地球上から根絶する活動を進めている.また,すでにPAHO(汎アメリカ保健機構)は,1991年のペルーの症例を最後として,土着の野性株ポリオウイルス伝播の遮断に成功した1,2)
 アジアのうち,わが国に最も関係の深い西太平洋地域(WPR)の主なポリオ流行国は中国,ベトナム,ラオス,カンボジア,フィリピンの5カ国であり,日本はこれらの国のポリオ根絶活動に対して直接的に,あるいはWHOなど国際機関を介して,いろいろな面で支援を行ってきた.また,筆者らはこれらの一環として行われている中国ポリオ対策プ口ジェクト(JICA)や,ベトナムメコンデルタおよびラオスでのポリオサーベイランスに従事してきた.以下にこれらで得られた知見に基づきWPR地域におけるポリオ流行の状況を概説し,加えてポリオ根絶活動の進捗と課題,特にサーベイランスに関係した事柄について述べる.

ザンビアにおけるウイルス性肝炎対策

著者: 鈴木宏 ,   押谷仁 ,   沼崎義夫 ,   水田克巳 ,  

ページ範囲:P.544 - P.546

◆はじめに
 JICA(国際協力事業団)によるザンビア感染症対策プロジェクト(国内委員長,石田名香雄,元東北大学長)の一部としてA,B,C型肝炎ウイルスの疫学調査と対策計画に参加した.これらは今までの国立仙台病院ウイルスセンター(沼崎義夫)の海外医療協力の経験と筆者がWHOの西太平洋事務局(本部,マニラ)で感染症対策課長として勤務した経験を生かしたものである.
 ちなみに,ザンビアは南部アフリカ内陸に位置し,タンザニア,マラウイ,モザンビーク,ジンバブエ,ナミビア,アンゴラ,ザイールと接し,国土の大部分は高地である.人口は780万人(1989年)であり,首都はルサカである.

タイにおける保健情報システム

著者: 丸井英二

ページ範囲:P.547 - P.550

◆はじめに:保健情報システムの意義
 本稿ではタイの保健医療システムについて紹介をするが,少しだけ前置きをしておきたい.
 今回の特集のように,最近は途上国の健康問題を取り上げて論議される機会が多い.そうしたときに,時おり見かけられる反応のひとつに,途上国というのは,われわれがすでに克服した感染症などが依然として残っている未開発な国なのだという考え方がある.日本などの「先進国」の高齢化した社会の健康問題とは全く異質な問題を抱えている世界のことだと決めつけてしまう,そうした見方では実は本当のところはわからない.むしろ,健康に関しては共通の問題を見出していくことが,他の国の状況を理解する道となっていくことが多い.
 したがって,国際保健において他の国の健康を考えることは,実はわが国の健康問題そのもの,あるいはわが国の保健医療の制度やシステムを見直すことに他ならない.いわば自分たちの社会の鏡としての国際保健の意味を重要視したい.

パキスタン・カラチ地区における麻疹対策調査

著者: 磯村思无

ページ範囲:P.551 - P.554

◆はじめに
 WHOを中心とした各機関により予防接種拡大計画(Expanding Programme of Immunization,EPI)が世界各地で展開された結果,麻疹の発生数は確実に減少し,1990年における全世界の小児の麻疹ワクチン接種率は80%以上,年間200万例の麻疹死亡が予防出来るようになったが,いまだに世界全体では開発途上国を中心に年間麻疹罹患例数は約4,500万,死亡数は100万例と推定され,実際には数倍の例が発生していると思われる1,2).熱帯地域の発展途上国における麻疹の臨床的特徴として,下記事項が注目される.
(1)罹患年齢が低く1歳前後の乳幼児が主な犠牲者になっている.
(2)合併症(特に下痢と栄養障害)が多く,途上国の小児死亡の大きな原因疾患である.
(3)ワクチン接種後の抗体獲得率は,特定の野外試験の結果では欧米や本邦と同様であるが,一般接種の有効性は必ずしも良くない.
 一方,麻疹対策の基本である麻疹ワクチンのEPI作戦上,次の問題点が指摘される.
(1)接種現場まで:ワクチン供給網の整備,特に末端までの温度管理の問題.

福岡市における国際保健協力の推進

著者: 西岡和男

ページ範囲:P.555 - P.558

◆長期派遣専門家を引き受ける
 昭和63年の初夏の頃だったか,東京在住の公衆衛生のある大先輩から電話をいただいた.タイ王国で行われているプライマリ・ヘルスケアのプロジェクトに長期専門家として行ってみないかとのお誘いである.当時筆者は45歳,福岡市衛生局の保健部長の職にあった.仕事は充実し,何ら不満があったわけではなかった.福岡市はアジア太平洋博覧会を翌年に控えていた.とても行ける状態ではなかったが,永年,タイ国の国家家族計画にかかわっていたこともあり,今回なんとか自分もその気になり,周囲の許しも得た.
 8月から翌平成元年10月まで,国際協力事業団からの専門家としてタイ王国で務めを果たすことができた.福岡市では派遣条例が昭和63年度から施行されており,筆者はその第2号の適用となった.派遣期間中は人事課付となり,保健部長は他の医師が就かれた.帰国後,保健部長が兼務しておられたある保健所の所長に,すぐ筆者はポストを得ることができた.国際医療協力は国民の務あとはいいながら,職場での周囲の暖かい思いやりに,筆者自身,多少身勝手だったかという思いも多々ある.

韓国における労働衛生活動と日本の協力

著者: 久永直見

ページ範囲:P.559 - P.563

◆はじめに
 韓国では1962年の第一次経済開発5カ年計画の開始以来,急速な工業化が進行したが,他方で労働災害や職業病の発生が大きな問題となった.それへの対応の一環として,韓国政府は,外国の進んだ技術や経験をも活用することとし,ドイツの協力による労働災害予防のための組織体制・法令・技術基準の整備,安全専門家に対する教育訓練,作業環境改善に重点をおいたプロジェクト(1987-94),日本の協力による炭鉱坑内作業環境改善プロジェクト(1989-93)などを進めてきた.その上で韓国政府は,1990年に,日本政府に対し職業病予防のためのプロジェクト方式技術協力を要請した.これを受けて国際協力事業団は韓国側と内容の具体化を検討し,1992年から5カ年計画で勤労者職業病予防事業を実施することを決定した.この事業は,韓国産業安全公団産業保健研究院,大韓産業保健協会,順天郷大学を対象として,労働衛生技術,最新の知見・技術情報の紹介などを日本からの専門家の派遣,機材の供与,韓国からの研修員の受け入れを通じて行うものである.筆者は,1993年8月より1年の予定で国際協力事業団から韓国に派遣され,労働衛生一般を担当して技術協力に携わってきた.

視点

新しいがん戦略構想

著者: 杉村隆

ページ範囲:P.529 - P.530

 新しい対がん戦略構想を考えるにあたって,最近の10年の進歩を十分に理解して策をたてることが大切と思う.がんの科学がこの10年ほど進歩し,がん細胞の微妙な異常機構がこれほど明らかになったことはない.ここに筆者が述べようとすることは私見であり,委員会等で決定されたものでは全くない.
 がん細胞は,正常の体細胞の持っている遺伝子(1個の細胞あたり約10万種類あると言われている)の中の10個位の変化により引き起こされる遺伝子の病気である.がんになるものは,特別に意味を持った遺伝子である.総種類数は百を越えると思われる.もちろんその遺伝子生産物は,正常細胞や正常個体にとっては重要な機能を果たしていたものである.すでに,前世紀から,がん細胞の特徴は,個体(患者)の都合を考えない細胞の自律的増殖と,がん細胞が発生した場所から,増殖しつつ,周辺の正常組織を壊し広がってゆく浸潤と,発生した場所から離れて,他の離れた場所で増殖する転移とであると認識されていた.

公衆衛生医師—その現状と課題 座談会

エイズ予防対策と公衆衛生医師(1)

著者: 北村邦夫 ,   桑野哲実 ,   桜井賢樹 ,   中村好一

ページ範囲:P.564 - P.568

 中村 エイズが世界で最初に報告されたのが1981年で,日本で最初に報告されてから10年近くが経過しております.その間,HIV抗体陽性者あるいはエイズ患者がどんどん増加してきていることはご承知のとおりです.非常に画期的だったことは1989年にエイズ予防法が成立し,施行されたことです.これは行政としては,これまでの歴史からみると早く手を打ったほうではないかと私は思います.しかし,問題はHIV感染者およびエイズ患者がまだ増えつつあることです.そこで,このエイズ予防対策を推進するに当たり公衆衛生医師はどのような役割を果たし得るのかを考えていきたいと思います.
 まずご出席の3人の先生方に,自己紹介を兼ねて現在どのような立場でエイズの問題に取り組んでいるかをお話いただきたいと思います.

連載 地域精神保健の展開—精神保健センターの活動から・8

精神障害者の社会復帰から社会参加へ—長野県精神保健センター

著者: 宮尾美代子 ,   上島求

ページ範囲:P.569 - P.572

【はじめに】
 長野県精神保健センター(以下,センター)は,1972年10月に開設された.職員数は現在15人であるが,開設当初は8人であった.
 センターの特徴を挙げると以下のとおりである.
(1)開設当初から診療所機能を有し,相談のみではなく狭義の治療も行ってきた.
(2)成人精神保健だけではなく児童精神保健にも力を入れ,開設当初より乳幼児から老人まで幅広く,ライフサイクルに応じた精神保健に取り組んできた.
(3)県の要請で,1985年から自閉症様児者の相談・療育を実施してきた.この実施に当たり職員が増えたことで,全体の活動に,柔軟性と幅を持たせることができた.
(4)開設当初から,保健・医療・福祉・教育・労働・当事者団体等,精神保健に関係する広範な機関の人たちを対象に技術協力・研修を行ってきた.研修等を共にすることで,各機関相互の様子が理解でき,このことが現在各地で進あられているネットワークづくりを容易にしている.

シンポジウム リハビリテーションと保健活動—障害の受容をめぐって

精神障害者の支援—治療者の立場から

著者: 中沢正夫

ページ範囲:P.573 - P.575

●はじめに
 自験例の分析をもって治療者の立場から参加する.対象は基本的に外来で扱ってきた100名(男42,女58)で,平均年齢41歳9カ月(28〜68歳,1993年4月現在,以下同じ),平均罹病期間14年4カ月(5〜28年),平均自験期間10年5カ月(5〜13年8カ月).能動型44名,受動型51名,不詳5名(生活臨床では能動型:受動型は7:3とされている)で,社会生活は「自立」と「半自立」で66%(江熊のスケールによる)である.対象が外来例なので群馬大学の予後(20年)調査1)の約50%よりもちろんよい(自立35,半自立31,家庭内:作業所:デイケア31,悪化3).

精神障害者の支援—保健所の立場から

著者: 田中英樹

ページ範囲:P.576 - P.577

●はじめに
 日頃私たちと接している精神障害者,保健所に相談に来る事例は,精神疾患を患い,自覚しているしていないに関わらず,生活のしずらさで悩んでいる人々である.
 相談に来る精神障害者と家族のそれぞれの動機,ニード,態度には個人差はあるものの,自己の置かれている状況とそのハンディを気分的には何らかの形で認識している.しかし,問題はその認識のしかたである.
 テーマである「障害の受容」に即して言えば,一時的形式的には,援助を求めているようで,多くの場合,「障害があるから何も出来ない」とか,「我慢する」とか,「頼る」といった,自信の欠乏,自己に対するマイナスの価値づけ,態度が多く,その逆は病気や障害を認めようとしないことであり,ケアの提供や援助を拒否し,再発・生活破綻の悪循環から抜け出せないことである.
 「障害の受容」を心理的障害の克服とその過程,プロセスと第一に定義づけるならば,私たちの援助,ケアを効果的に有用づけるために,実際場面でどのようになされるべきかを報告したい.

シンポジウムの総括

著者: 緒方甫

ページ範囲:P.578 - P.579

 第52回を迎えた歴史ある日本公衆衛生学会総会において,初めてリハビリテーションに関するシンポジウムが取り上げられ,21世紀に向けて世界でも類をみない高齢化社会にいかに対応すべきかを討議する場を与えられたことは,リハビリテーション医学を専門としている一人として喜びにたえない.学会長を務められた重松峻夫教授ならびに関係者の方々に厚くお礼をまず申し上げる.
 しかし,与えられたサブタイトルは,リハビリテーション医療を推進する上においても,きわめて難解である障害の受容である.一般に,多くの成書には動機付けを行い,続いて,障害を受容させないと,真の意味におけるリハビリテーションは困難と記載されている.

疾病対策の構造 生活環境を支えるシステム—水道・3

水道の役割は変わるか

著者: 小林康彦

ページ範囲:P.580 - P.584

 わが国の近代水道は,コレラ等の水系伝染病と消火を大きな動機としてスタートした.衛生対策が主眼であった.その後,生活や都市・産業を支える水の供給システムという性格になり,現在では,水道は他に供給手段のない用途を受け持つ生活基盤施設となっている.

進展する地域医師会の公衆衛生活動 在宅ケアの取り組み—大村市医師会・3

老人訪問看護ステーションの開設

著者: 福田律三 ,   南野毅 ,   朝長昭光 ,   中澤和嘉

ページ範囲:P.585 - P.587

 平成5年2月18日,「大村市医師会老人訪問看護ステーション」の開所式が大村市医師会の講堂で開催された.この開所式には長崎県保健環境部長や大村市助役をはじめ国立長崎中央病院長や大村市立病院長,保健所長,社会福祉協議会などの保健・福祉関係者,および警察署長,消防署長など多数が参加した.
 朝長 「NHKの長崎局や長崎新聞,西日本新聞など地元の放送局,新聞などで『県内で初めて老人訪問看護ステーションが開設された』と詳しく報道されました.」

調査報告

在宅患者におけるMRSA検出の1例

著者: 高森行宏 ,   多田羅浩三

ページ範囲:P.588 - P.591

●はじめに
 現在,MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌,以下MRSAと略す)による病院内感染が大きな話題となっている.在宅療養患者においても経静脈中心栄養や留置尿道カテーテル等の高度医療が導入されている現状では,単なる病院だけでの問題でなく在宅医療や看護,介護上の大きな問題でも有り得る.
 今回,私たちは在宅で療養中の患者でMRSAの発生を認め,地域での高齢者サービス調整チーム会議で検討した症例を経験したので報告する.

新規採用者の結核予防検診とツベルクリン反応パターンの経年変化—最近7年間の成績から

著者: 小倉千恵子 ,   木村みつる ,   小川京子 ,   玉腰暁子 ,   山田琢之

ページ範囲:P.592 - P.595

●はじめに
 戦後,結核の予防,治療のめざましい発展によりわが国の結核発病率,死亡率は大幅に低下した.しかし,1980年前後から罹患率の改善速度は鈍化している1).この鈍化の原因としてあげられるのは,(1)高齢者の排菌結核患者が少なくないこと,(2)結核未感染の若年者の増加,(3)ハイリスク集団(免疫不全を含めた)の多様化と時にみられる集中的な発生の他,(4)近年の国際化による結核蔓延地区からの人々の流入の影響も考えなくてはならない2).特に若年者の大部分が未感染でありBCG接種率も低下した現在では,排菌者に接触すれば十分感染発病の機会があるわけである.さらに中高年者は大半が既感染であり,また結核の治療者も多い.彼らが他の疾病をきっかけに結核が再燃,発病する率も決して低率ではなく,また発病しても無自覚でいることが多いため,未感染者が感染したときには集団発生につながることもある.したがって特に結核患者を診断,治療する職場や乳幼児を介護,教育する職場では,集団感染の危険を常に考えておく必要がある.

新しい保健・福祉施設

四日市市保健センター

著者: 佐々木敬二

ページ範囲:P.596 - P.597

 四日市市は三重県北部に位置し,人口28万人余をかぞえる.昭和30年代から全国有数の石油化学工業都市として発展してきたが,一方では大気汚染による公害を発生し,“いわゆる四日市ぜんそく”は深刻な社会問題となった.しかし関係者の努力により,昭和62年,公害地域の指定解除にいたるほどきれいな空気となり,公害の街のイメージは払拭された.
 「健康で心の通う福祉の街づくり」構想の一環として,福祉センター,保健センター,教育センターを統合した総合会館(延べ床面積12,179.2m2鉄筋8階建,総工費約43億円)が平成2年8月開設された.保健センターはこの中で4階,5階を占めている(延べ床面積3,091.0m2).

保健行政スコープ

医療政策の展望(2)

著者: 谷口隆

ページ範囲:P.598 - P.599

3.医療経営の健全化
 国民に良質な医療を安定的かつ継続的に提供してゆくためには,医療機関の経営の健全化を図ることが必要である.近年の医療をめぐる諸環境の変化の中で民間医療機関経営の厳しさが指摘されているが,厚生省では平成5年6月に病院経営緊急状況調査を実施した.さらに医療機関経営健全化対策検討委員会を設置して,調査結果をもとに現状分析を行うとともに健全化対策の検討を行った.
 調査の結果からは,医業収支で赤字を計上した病院が平成4年度には30%を超えていること,「経営悪化病院」が「経営改善病院」を上回っていることなど,全体として民間病院の経営は悪化傾向にあることが指摘されているが,その原因としては病床利用率の低下があげられる.また建て替え時期にきている病院において新たな資本投下が困難となり,計画が延期されている様子がうかがえる.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら