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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生58巻9号

1994年09月発行

文献概要

特集 現在からみる公害

火山活動の健康影響

著者: 矢野栄二1

所属機関: 1帝京大学医学部衛生学公衆衛生学教室

ページ範囲:P.607 - P.611

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◆はじめに
 雲仙普賢岳の火砕流災害で37名の人命が一瞬のうちに奪われてから3年以上が経過したが,現地ではいまだに避難生活が続いている.また中央のマスコミではあまり大きく報道されていないが,阿蘇では火口近くで突然旅行者が倒れるなどの事故が発生している.雲仙の噴火開始と同じ頃,フィリピンのピナツボ火山の噴火も多くの人命を奪ったが,その際吹き上げられた微粒子が成層圏に上って全地球を覆い,世界的に日照が減少したという報告も記憶に新しい.
 一般に火山活動による環境汚染は,いわゆる公害の中に含めて考えられていない.しかし例えば桜島火山が放出する二酸化硫黄の量は1日110から3,500トン1),噴出する火山灰は1日平均約3万トン2)と,人為的な汚染源からの噴出量をはるかに上回っている.またその影響範囲もはるかに広く,時にピナツボ火山噴火の時のように全地球的レベルに及ぶ.このほか,火山活動と関連した水系の水銀汚染3),放射性物質の放出4)や火山活動に伴う悪性腫瘍の増加5)などの可能性も考えられ,公害や地球環境汚染問題に関わる現象の多くが火山によってもたらされ得る.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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