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特集 公衆衛生/予防医学と分子生物学
環境/産業保健と分子生物学—職業癌および環境癌へのアプローチ
著者: 北村文彦1 荒記俊一1 谷川武2
所属機関: 1東京大学医学部公衆衛生学教室 2筑波大学医学部社会医学系
ページ範囲:P.851 - P.854
文献購入ページに移動職業癌および環境癌(以下,職業/環境癌と省略)への分子生物学的アプローチは,分子生物学的な解析を前提とした腫瘍組織の保存が一般的でなかったために研究が遅れている1,2).最近は,DNA抽出法の工夫,PCR(polymerase chain reaction)法3)およびSSCP(single strand conformation polymorphism)法4)の開発などにより,腫瘍組織の保存上の問題点が少しずつ解決されている.また,膵液,尿および大便中からDNAを抽出し,そのp53癌抑制遺伝子(以下,p53と省略),ras癌遺伝子(以下,rasと省略)などの変異検索を行うことにより膵臓癌,膀胱癌および大腸癌を早期に発見することが可能になってきた5〜7).さらに,手術中に切除したリンパ節のp53変異を検索することにより癌の転移を分子生物学的に診断することが可能になっている8).
本稿では,職業/環境癌の原因物質であるアスベスト,アゾ染料(ベンチジン,β-ナフチラミンなど),塩化ビニル,ラドン,アフラトキシンB1およびタバコに暴露した人々の癌組織の遺伝子変化を,筆者らの知見とともに紹介する.
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